(創作物語)『明日への貴方へ』 その7

前回までのあらすじ。
電脳空間で魔女ドリナの家にまじないの薬を取りに行く、ナディアとルシード。そこには、感じの良い魔女ドリナがいた。3人はアムルが捕らえられているバラの針の所まで戻り、薬でバラの針を解く。その時、魔女ドリナの表情は一変し、悪い魔女に変化する。サイクロプスと狼を召喚し、逃げるナディア達を追いかける。が、アムルが魔法でこれを撃退する。近くの小屋にアムルを隠れさせ、現実世界に戻ったナディア達はアムルの本体を探し始めるが・・・・・・
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 アレン博士が仕事に戻るのを見計らって、施設内の様々な部分を見て回るナディアとルシード。目的は、アムルの本体を見つける事だ。巨大な研究施設と、製造工場、そして生活空間が一体化したあまりにも広すぎる空間。ナディアはここでの生活は長いが、まだ見ていない部分も数多い。
 
 ナディア「とりあえず、向こうにいってみるわね」

 たくさんの機械が捨てられている『スクラップ置き場』に向かう2人。
 
 重機が役目を終えた廃材をつぶしている。中を見てもアムルの本体らしいものはない。

 ルシード「ここには、無い・・・ね」

 次に、2人は製造部門に向かう。最新のAIやロボットを加工製作する部門だ。製造ラインには様々なAIロボットが並び、製作ロボが忙しく動き回っている。ナディア達は歩きながらこの光景を見る。

 ナディア「私の身体も、ここで作られたのかな・・・・」

 ルシード「僕・・・・・見覚えがある・・・・・・」

 ナディア「え?」

 ルシード「かすかな記憶・・・・・・でも、ハッキリしないよ・・・・」

 
 ナディア達を遠くから見る謎の人物。すると、っ目の前から一人の男がナディア達の目の前に現れる。

 ザカロン「やあ、君たちはアレン博士から聞いているよ。確か、ナディアとルシードだったね?」

 男は、体格のいい製造部門長を務める男だと言う。

 ザカロン「この製造部門で、何か探し物かね?私はザカロン。この製造部門をまとめる責任者だ。よろしくね」

 正直に言えるはずもなく、ナディアは適当に言葉を濁す。

 ナディア「いえ、素晴らしい製造施設だなぁって、あと、自分たちもここで作られたのか気になったので見学しに来ました」

 ルシードが本当の目的を言ってしまいそうになるのを慌てて口を押さえ、ナディアが弁明する。

 ザカロン「そうだ。私が君たちを案内しよう」

 ザカロンは製造部門内を案内し始める。後についていくナディアとルシード。一通り、製造部門を見回った2人。そして、ザカロンと別れた二人は、いつもの生活棟に戻ろうとする。しかし、製造部門を見回っている時に、謎の人物の存在に気付いていた2人。ザカロンがいなくなり、ナディアが口を開く。

 ナディア「こっそり観察なんて、性根が腐っているわね。出てきなさいよ。気づかないと思ったの?」

 サーナ「あーら、バレちゃったの。しょうがないわね降参」

 ナディアの目の前に現れたのは、見た目20歳前後のサーナという女性。この製造部門で働く社員らしい。

 サーナ「あなた達に有益な情報をいくつか提供してあげようと思って。ここでは話しにくい内容だから、今夜あなた達の所へ行くわ」

 サーナに生活棟での自分たちの住所を教えるナディア達。そして夜になり、サーナがナディア達の部屋に来る。

 サーナ「あ、自己紹介がまだだったわね。私はサーナ。この施設の製造部門で働く社員よ。よろしくね」

 ナディアとルシードも自己紹介を終える。

 サーナ「へぇ、あなた達アンドロイドなの・・・・・。で、そのアムルという少年を電脳空間から助けたいわけね・・・・。私の彼氏が、生体部門にいるの。実はその彼から先日妙な連絡が来て。いい物を見せてやるから、来いだの何だのって」

 翌日は、施設全体は休みで一部が稼働している状態である。サーナ、ナディア、ルシードは生体部門に足を踏み入れる。公にはできないので、慎重に事を進めることに。

 サーナ「ウォルトン、ここよ」

 ウォルトンという男がいる。小声で自己紹介を終え、早速生体部門に入る4人。

 ウォルトン「これを見てくれ。これは、生まれて初めて見たよ」

 ウォルトンが指さす方向に、一対の男女が生命装置に繋がれている。まだ生きているように見える。分厚いガラス張りの何重にも重なった部屋に厳重に保管されているようだ。

 ウォルトン「普通、アンドロイドを製作する時は、生身の人間の身体を取っておくことは非常に稀なんだ。脳を取り出したら、後は肉体は破棄される。でも、あの2体は全身を冷凍保存してまで保管している。おかしいと思わないか?」

 ナディアは自分の身体に手を当てる。自分の身体も破棄されたのだと思い、物思いにふける。

 ウォルトン「ごめん、傷つけるつもりはなかったんだ。ただ、事実を伝えたくて」

 ナディア「私は平気です。それより、あの冷凍保存されている男の子の方が私たちの言う電脳空間のアムルという保証が無いですよね?」

 サーナ「それもそうね。ウォルトン、まだまだリサーチが足りないんじゃない?でも、この人間冷凍保存は、上層部が何かを隠している証拠になるわね」

 ナディア、ルシード、サーナ、ウォルトンの4人は生活棟に戻り、再び話し合う。

 サーナ「そうだ、せっかく出会ったのだから、皆でテニスしてみない?」

 生活棟には、エンタメからスポーツまであらゆる娯楽施設も完備されている。テニスをしながら、語り合う4人。

 ウォルトン「さすが、アンドロイドだね。球の速さが違う!」

 剛速球でスマッシュを打ち込むナディア、ルシードはまだテニスという競技を理解していない模様。数十分後、汗だくになったサーナとウォルトン。ナディアのプレイを観ながら、学習したルシードもナディアとテニスを楽しむことに。一通り、テニスを楽しんだ4人。その後、ディナーに誘われたナディアとルシード。

 アンドロイドも楽しめる様に、機械体が吸収できる素材で出来たディナーを楽しむナディア。

 ルシード「僕は・・・・・」

 ナディア「この子、全く食べれないんです。私のタイプとは違う気がするの。その辺も含めてアレン博士に調べてもらっている所なの」

 ウォルトン「そう言えば過去に、移植手術時にこの施設内で事故があって、その時の男児が行方不明だって聞いたことはあるよ。その男児は今どこにいるのか誰もわからない」

 サーナ「その話題は、もう今日は止めよう?」

 ウォルトン「そうだな。そうしよう」

 サーナ「ねぇナディア。あなた達明日もアレン博士の所で電脳空間に入るわよね?その電脳空間での映像はアレン博士には見えているの?」

 ナディア「うん、多分見えていると思うわ」

 ウォルトン「やりにくいな。俺が思うに、アレン博士が怪しい気がするんだ」

 サーナ「私も、それ思っていたの。どうにかして、アレン博士に悟られないように電脳世界でのやり取りをすることはできないかしら」

 ナディア「アレン博士に限ってそんなことはないと思うわ」

 少々、怒った顔をするナディア。ルシードも不安なようだ。

 サーナ「ウォルトンは、明日からの勤務で何かわかったら、情報を上げること。私も勤務中に何か気になる事あったら、ナディアとルシードに伝えるようにするわ」

 4人は、ディナーを終え、自宅へ戻り深い眠りに付く。ルシードは、眠らない中、1人考えを御張り巡らしていた。

 ルシード「(あの冷凍保存された女の人・・・・・・・。今日のテニス、楽しかったなぁ・・・・・。僕は何故食べなくても生きていられるのだろう・・・・・)」

  

 

 

 


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登場人物

 ナディア:体は機械、脳は人間のアンドロイド。
 特技:〇〇、高速移動

 ルシード:正体不明の少年
 特技:似顔絵書き、高速移動

 アレン博士:脳科学者で、偏屈者。自身で、超巨大な設備を持つ。

 アムル:アレン博士の所で電脳世界に入った時、ルシードが出会った少年。200年前、脳移植時に事故が起こり、電脳空間に閉じ込められた少年。母は、魔女ドリナ。
 特技:電脳空間時に魔法使用可能

 ザカロン:アレン博士の研究所の製造部門長。

 サーナ:製造部門で働く女性社員。情報通。彼氏はウォルトン。

 ウォルトン:生体部門で働く男性社員。彼女はサーナ。

 

アレン博士の研究所

 研究棟:電極につなぎ、電脳空間へと飛べる装置がある。電脳空間の出来事はモニターで閲覧可能。また、日々進化する技術の推移を集めた頭脳集団がいる部門

 製造部門:最新のAIやロボットを製作する部門。

 生体部門:人間の生体と機械を繋ぐことを目的とする部門。

 スクラップ置き場:廃材を重機で押しつぶし、再利用する場所。

 生活棟:研究者や製造スタッフが寝泊まりできるくらいの施設。一つの町と言ってもいいほどの広さがある。

 

アレン博士の研究所での謎

 生体部門:ウォルトンが発見した、分厚いガラスで何重にも守られた部屋に冷凍保存された男女一対の人間。


アムルが捕らわれている電脳世界

 魔女ドリナ:アムルを電脳空間に閉じ込めた魔女。普段いつも自分の家で、まじないの薬を調合しているが、3日に1回、近くの森、廃墟へ出かける。息子は、アムル。

 森:魔女ドリアが3日に1回訪れる森

 廃墟:魔女ドリアが3日に1回訪れる廃墟

 魔女ドリナ(悪性):魔女ドリナのもう片方の一面。何故悪性に変わるかは不明。
 特技:召喚魔法


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