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心マトリクスで読み解く「ゆるアツ」の真髄

割引あり

◇     心マトリクスで「ゆるアツ」を読み解く

今日は「ゆるアツ」を心マトリクスで解釈してみましょう。心マトリクスについては、どこかの放送で話したと思います。確か第2回か第3回で、「よさとは、良さの根拠とは何か」という放送をしました。その時に心マトリクスのことを言及しましたので、詳しくはそちらを聞いていただきたいのですが、良さをバラバラに語っても、子供たちの中に良いものは作られません。まずは構造を作る必要があります。

そこで、良さを分解して再構成したのが心マトリクスです。(0002『心マトリクス‐良さの分解と再構築』葛原書房)古典的な内容や哲学、宗教などを見ていただければ、そこそこ外していないことが分かると思います。小学生に伝えるためには、これがいいのではないかと思って作っています。

心マトリクスには、月軸と太陽軸という2つの軸があります。月軸は「考える・動く」と「考えない・動かされる」を表し、太陽軸は「信じる・思いやる」と「疑う・自己中心的」を表しています。月軸は自分の力を高め、自分としてどう生きるかという話で、道徳でいうところのA領域、主として自分自身に関わることに当たります。努力するとか自立するといったことが月軸です。一方、太陽軸は信じる、思いやるといったことを表し、道徳でいうところのB領域、他者に関わることに当たります。思いやりや信頼、優しさといったことが太陽軸です。

◇     「ゆる」の世界から見る心マトリクス

まずは「ゆる」の世界から見ていきましょう。心マトリクスの中心には地球が描かれています。この地球は自分自身を表しており、ここがしっかりしていることが大前提です。「あなたはあなたでいい」というメッセージは、この地球、つまり自分を信じることから始まります。

◇     家庭でできる最大のプレゼント

私のスタンスとしては、家庭教育に口出ししたくはないと、というか口出しはすべきでない、できない、と思っています。。家庭には家庭の教育方針があり、学校は学校の教育をする。手を取り合って同じ方向を見つめましょうという感じです。ですので、家庭教育にとやかく言うつもりは全くありません。

ただ、「家でできることはないですか」と聞かれた時は、「ただ愛してください。存在自体を認めてあげてください。あなたはあなたであることが本当に素晴らしいと認めてあげてください。それが愛です。愛で浸してあげてください」と話します。これは家庭ですごくできることだと思っています。

私の友人は、親から「お前はこの家の人間だから大丈夫」とずっと言われ続けたそうです。これは何の根拠もない言葉ですが、窮地に立った時や自分がしんどい時に、非常に助けになったと言っていました。 

また、プロゲーマーの梅原大吾さんも、幼少期に父親から「お前は俺の息子だから絶対大丈夫」と言われ続けたそうです。梅原さんの父親は、特に有名人というわけでもない普通の人でしたが、この言葉が幼少期の梅原さんにとって非常に嬉しく、自分は自分で大丈夫だと思えたそうです。当時、プロゲーマーという職業はなく、大人になってゲームをすることは白い目で見られていましたが、父親の言葉があったからこそ、自分の心を信じて突き通すことができたのだと思います。

このように、ある種根拠のない「あなたはあなたでいい」というメッセージを与え続けることは、人生の背景にある安心感や安定感として、とても大切なことだと思います。それは家族でなくても、兄弟やおじいちゃんおばあちゃん、近所の人でもいい。そういう安心感を与えてあげることが、親としてはやってあげたいことですし、家庭ができる最大の役割だと思います。

この地球、つまり自分が揺らいでいる子は、まずは学級でしっかりと安心させてあげる必要があります。本当はこれは安心できるお家、ホームでやって保証してあげたいところですが、環境的に難しい子もいます。そういう子は、自分という地球がぐらぐらした状態で学校に来ているのです。そういう子に「他人を思いやれ」とか「自分を見つめて努力しろ」と言っても、ほぼ不可能でしょう。 

まずは「あなたがあなたでいいんだよ」と伝えることです。「あなたの今の人生のバランス、生活のバランスはこうなっているよね。ここが足りていないから、今あなたはこういうことがしたいと思っているんだよね。それは全く間違いじゃない」と。それはあなたが一生懸命生きようとしている印だと伝えるのです。 

教室から出たり、タブレットでゲームをしたりしても、その行為のみをみて叱らない。しっかりとその子の内側にある深い願いをちゃんとみとろうとする。ただし、なんでもありではない。友達の迷惑になったり嫌な思いをさせたりすることだけは止めましょう。それはあなたの範囲外のことなので、あなたの人生のバランスを保つために、他人を不幸にしてはいけません。それだけは分かるでしょう。そこだけは最低ラインとして線を引きますが、それ以外に関しては、あなたはあなたのバランスを今取ろうとしているんだから、全く間違っていない。今それを思いっきりやらないと、あなたはあなたとして両足で立つことができなさそうだよね、と伝えるのです。

もちろん、その子の背景や深い願い、状況などを徹底的に見て、観察し、お父さんお母さんとも話をして、繰り返し理解していく必要があります。ちゃんと理解した結果、その行動を肯定してあげるということです。

離席することが悪いことではないのです。なぜその子が今それを従っているのかということを深く理解できれば、もしかしたら肯定してあげられることがあるかもしれません。私の経験上、そういうことをすると、ほぼ全ての行動を、他者に嫌なことをすることも含めて、ひとまず肯定してあげることができるような気がします。特に子供は、本当に悪に染まった子供はあまりいません。何かのっぴきならない理由がその子たちの中にはあるのです。

◇     「ゆる」は自分を信じることから始まる

「ゆるアツ」の「ゆる」は、「あなたはあなたでいい」というメッセージが根幹にあります。そのためには、まず自分を信じられることが大切です。自分を信じられるからこそ、他者も信じられるのです。逆に、自分を信じられない人は、他者にしか頼れなくなってしまいます。例えば、自分の判断が全く分からないから、占いに100%頼るような人がいます。これは、自分を疑い尽くした結果、他者しか信じるものがなくなった状態だと言えるでしょう。(心マトリクス的には、信じるにもポジティブな信じ方とネガティブな信じ方があり、裏表の世界があって面白いのですが、その辺りはまた別の機会に話せればと思います。)

◇     子供の内面に寄り添う

繰り返しますが、子供が問題行動を起こした時、表面的に叱るのではなく、なぜそのような行動をとったのかを理解しようとすることが大切です。子供は、誰かに迷惑をかけようと思ってそのような行動をとっているわけではありません。 

例えば、先日、シャーペンが禁止なのにシャーペンを持ってきた子に対して、教師が無理やり取り上げ、腕を引っ張ってルールブックのところまで連れて行こうとした結果、その子が倒れて怪我をしたという話がありました。このケースは、教師もまた、心マトリクスの左側、自分の正しさばかりに固執して、自己中心的な発想に陥ってしまったからこそ起こってしまったことではないでしょうか。

大切なのは、その子がなぜそのような行動をとろうとしたのかを考えることです。その子は、誰かに迷惑をかけようと思ってそのような行動をとっているわけではなく、一生懸命まっすぐに生きようとした結果とか、いろんな心理的な変化やバランスの中で、今そういう行動をとっている可能性が高いのです。

そこを理解してあげて、寄り添って「そうだよな、分かる」という立場に立つことは本当に大切です。これは薄っぺらいうわべだけのことではなく、本当にその子を理解しようとして、理解した範囲で言うことが大切だと思います。

子供たちも、子供たち同士で、そういうことができるようになればいいですよね。表面的な良い悪い、行動に流されずに、その子が本当に願っていること、真の深い願いをちゃんと信じてあげる。その子は本当に嫌な子なのか、悪い子なのか。厳しい言葉で正さなければならない子なのか。それよりも、その子を信じ、その子の本当の深い思いを思いやることで、太陽、つまり人も自分も笑顔になれる世界を作れないでしょうか。

そこには深いその子への信頼があり、その前提には教室にいる子どもたち一人ひとりが、自分は自分でいいと思えている心理状態がとても大切なのではないかと思います。

◇     人も自分も笑顔になれる世界を目指して

子供の深い思いを信じ、思いやることで、人も自分も笑顔になれる世界を作ることができるはずです。そこには、子供への深い信頼があり、その前提として自分を信じられることが必要不可欠です。子供たち同士でも、表面的な良い悪いや行動に流されるのではなく、その子が本当に願っていること、真の深い願いを信じてあげることが大切です。その子は本当に嫌な子なのか、悪い子なのか。あなたの厳しい言葉で正さなければならない子なのか。むしろ、その子を信じ、本当の深い思いを思いやることで、人も自分も笑顔になれる世界を作れるのではないでしょうか。

◇     まとめ

今日は「ゆる」の話が長くなってしまい、「アツ」の話までは行きませんでした。「ゆるアツ」ですから、「ゆる」の世界でみんなで繋がり合えた時に、そこに「アツ」い世界が訪れれば、学びが生まれるという話をしたかったのですが、また次の機会に話せればと思います。

「アツ」の世界は月軸、つまり熱い世界を表しています。「ゆる」の世界で緩く繋がり合えた時に、その先に「アツ」い学びの世界が訪れるのです。しかし、これは失敗することもあります。うまくいかない時もあるのが現実です。

「ゆるアツ」という言葉は「ゆる」と「アツ」を合わせた言葉ですが、「ゆる」があってこその「アツ」なのです。「ゆる」の土台がしっかりしていないと、「アツ」い世界は訪れません。だからこそ、まずは「ゆる」の世界をしっかり作ることが大切なのです。

そして、うまくいかない時にこそ、心マトリクスを活用して状況判断することが求められます。心マトリクスは、物事がネガティブに展開していく過程を明示してくれるので、子供たちにとっても判断しやすいのです。そろそろやばくなってきたなと思ったら、心マトリクスを使って軌道修正することができます。 

「ゆるアツ」の世界は、一瞬訪れることはあっても、安定して続けることは難しいのが現実です。だからこそ、常に努力し続けることが必要なのです。

その先には必ず、本当に豊かに繋がり合い、深く学び合う子どもたちの姿があると信じて。

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