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中小企業診断士試験2023 vol.4

9月5日(火)1次試験結果発表。自信を持って主催者のサイトをクリック。受験番号を探す。番号の若い順に左上から順に「縦」に下にスクロールしていく。あれ、ない。嘘?おかしいな。まさか。一瞬焦った。ところがよく見てみると、受験番号は小さい順に「横並び」で発表してあった。左から右に読み込んでいく形だった。改めて見直した。あった。見つけた。良かった。あった。ふーっと息を吐く。ホッとした。
SNSにあげた。親しい友人には診断士試験を受けることは伝えていた。結果を報告したかった。すると自分が考えている以上に、はるかにたくさんの方からお祝いのメッセージを頂いた。びっくりした。これだけ多くの人から祝福されたのは、今まで自分が生きてきた中で一番多いんでねべが。嬉しく泣きそうになった。本当に自分は幸せ者だ。自分の歩んできた道はそんなに間違っていなかったのかな。挑戦する人を祝福する「世界」がSNSばかりでなく、現実でも広がればみんなもっと生きやすくなるのにな、ふとそんなことを思ったりもした。

15年ぶりに関西入りした。研修のためだ。行先は大阪、奈良、三重。会社勤めしていた頃、31歳から37歳になる頃の6年半ほど過ごした場所。結婚も離婚もした場所。鬱になり会社に行けなくなったこともあった。漠然と自分の「在り方」を探し始めたのもこの頃だ。どちらが悪いというわけではないが、会社と自分の目指している方向性が違うのではないかと思い始めたのもこの頃。会社という「組織」がどこを目指し、何を大切にして、どう判断するかという「価値観」が、経営側と自分でどうも違っているのではないか。悩みに悩み答えを探し続けた。例えば「お客様のために」とはよくある「経営理念」だ。「経営理念」とはその企業の活動方針で判断基準となるものである。その「お客様のため」が具体的にどんなことを指しているのか明確になっておらず、また社内で周知徹底していることが少ないというのはよくあると聞く。当時は自分も経営理念がどれほど大切なものか理解していなかったので問うこともしなかった。また中途採用で入社したためか、研修等で説明を受けることもなかった。そのせいか、いざという時の方向性や価値観が組織と自分で違うことがたびたびあった。なんとなく違和感は感じていた。これを診断士の2次試験の解答風にいうと、「経営者は組織の目指すべき方向性を経営理念として明確にし、自ら率先して実践し、従業員に周知徹底することで一体感のある社風を醸成し士気を向上させ従業員満足度を上げ、雇用の定着に繋げる。(あるいは顧客満足度に繋げ売上拡大を図る。)」となる。「青森県出身」であることを強く意識し始めたのは間違いなくこの頃だ。異動後営業担当として、大阪、奈良、岡山、広島を回っていた。取引先等との名刺交換時のネタとして「青森から来ました」と挨拶すると「こっちの人?」と聞かれた。どっちだよ(笑)「実家はりんご作ってるの?」は青森県民あるあるだ。「青森県」の人と一緒に仕事するの初めてと幾度となく言われる。そっか、「彼ら」にとって、わぁ(自分)は「青森県民そのもの」なんだと勝手に思った。「めぐせぇこと(恥ずかしいこと、みっともないこと)できねな。」
関西では青森県のニュースはよほどのことが無い限り流れない。当時のニュースで思い出せるのは、台風が近づいている時のりんご畑とアニータくらいだ。「青森県民はダメだ、仕事できないと言われたくない」といつの間にかそう思うようになっていた。くそ真面目に仕事ばかりしていた。もったいないことをしたと思う。せっかく日本の歴史的な場所がたくさんある地域に住んでいるのだからもっと色々訪ねて旅行気分を味わっておけば良かった。
つらいことも嫌なこともたくさんあったけど、今となっては笑い話だ。良い経験をたくさんさせて頂いたと感謝している。

この研修は春先から計画していたもので伊勢神宮にもお参りした。時折激しい雨が降る中でのご挨拶となったが、境内を歩く時は不思議と雨は止んでいた。1次試験合格という報告ができて本当に良かった。

当時から探し続けていた答えや答えとなるヒントは青森にUターンして見つかった。10年以上経っていた。

伊勢神宮正宮

さて、9月は「型」と財務会計の集中強化月間。ひたすら指定文字数を意識しながらマス目ノートに書き込み続けた。例えば、分社化のメリットとデメリットについて100文字以内で述べよ。「メリットは①~②~③~。デメリットは①~②~③~」イメージはこんな感じである。これが本当に難しい。1次試験の「点」の知識を2次試験用に「線」にすることが出来ない。頭の中の「知識」や「言葉」を文字として手を動かして書くのはこんなにも難しいことなのか。そして財務会計。相変わらず出来るようになっている感覚がない。問題を見ては答えを見る。こうでこうでこうだからこう、とぶつぶつ言いながら何度も何度も書き写した。

電卓と100点の解答を繰り返し叩き込む

外では相変わらず気温が下がらない日が続いていた。気温が下がって温度差が大きくならないとりんごの色づきがよくならない。コクのある味わいもでにくい。そして何より作業が大変だ。葉とりやツル回しに収穫作業にとハシゴを使うことが多くなり、体力が激しく消耗するようになる。日に日に慌ただしさが増してきた。

10月に入り残り1か月を切った。実力はまだまだ合格ラインには届いていない。もう2ランクは上げる必要がある。そんな風に感じていた。
よし、あとはひたすら過去問を解こう。試験までに確実に覚えておきたいことは「ファイナルシート」にまとめよう。「ファイナルシート」とは、試験前に見直す、自分用の要点や注意点をまとめたノートのことを指す。日頃の勉強で気づいた点などをメモに残してまとめたものを、受験生の間では「ファイナルシート」と呼んでいる。今まで訓練してきたことを実践方式でアウトプットする。時間も80分。とにかく80分で解ききる。悔いの残らないようにやることは全部やる。
過去問は過去10年あたった。答え合わせには、「ふぞろい」(テキスト)も加えた。「ふぞろい」とは、診断士受験生の間では有名な参考書である。合格した人の再現解答を比較して、加点ポイント等まとめた一冊である。例えば〇〇のキーワードを使って~~~と解答すると4点の加点になるだろうといった感じになっている。100点の解答をひたすら頭に叩き込んだ。
ところが、出来は一向に変わらない。勉強してきたのにおかしいな。成長しているはずなのにあんまり書けていない。うーん。試験のことを考えると不安ばかりになる。そんな時は、大丈夫だと言い聞かせ、目の前の出来ることだけに集中した。
ただただ過去問と向き合っていた。するとある時、設問に対して自分の解答の「型」がしっくりくるようになっているように感じた。「型にはめ込む」とはこういうことなのか。この「感覚」なのか。ようやく、わかってきた気がする。2次試験対策を始めて延べ350時間あまり。試験まで10日を切ろうとしていた。よし、いける。間に合う。
受験票も届きいよいよだ。満点の解答をイメージしながら最後の最後まで過去問と向き合った。わずかな隙間時間にはファイナルシートに目を通した。

りんご畑では相変わらず気温の下がらない天候が続いている。開花が早かったこともあり全体の作業も例年より1週間程早い。そして10月は収穫する品種が多い時期でもある。様々な品種の収穫作業と「ふじ」の葉とり、反射シート敷き、ツル回し作業が重なり、つがる一帯では一番の農繁期となる。通常であれば晩生種である王林の収穫は10月下旬、無袋のふじの収穫は11月に入ってからであるが、早くも市場では王林やふじの受付が行われていた。実りの秋。りんごの生産量の半分はふじ。王林は1割。いよいよ本格的な収穫シーズンに突入していた。

ふじと反射シート
当たり前の風景

(続)

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