7/9(木)

コンビニに行こうと歩いていると、ホームランボールが飛んできて、みぞおちに直撃した。

とても痛く、片膝をついた。
ちょうどそこが水たまりで、ひんやりとした。

なぜ飛んできたのがホームランボールだとわかったかというと、周囲がすんごく盛り上がっているからだ。
カンカンバットの音や、ラッパの音に合わせて男たちの揃った歌声が聞こえてくる。

あぁ、夏だからこんなこともあるのか。
冬になったらカーリングストーンなんかがすねに当たったりするのかな、とか考えていると、帽子を被った高校生みたいなのが走ってきた。

介抱してくれるのかなと思って顔を上げると、
「ボールの返却にご協力ください」
と冷たく言われた。

なんだよ。普通にへこむ。
とりあえず、転がってるボールを拾って立ち上がり、その少年に手渡すと、
がしっと、ボールを鷲掴みにすると、一呼吸してから、
「フンッ!」と言うと、ボールに力を入れ始めた。

ボールはまだぼくの手に載ったまま。
困惑していると、パンッ、と言って、ボールが破裂して、中から大量の水が出てきた。

ぼくと少年でその水を全て被った。
少年は一切水を拭こうともせず、真顔でじっとこっちを見つめている。
腹立って、「何か言えよ」と少年に言うと、
少年は空を見上げて、
「レギュラーになりたいなぁ…」
と呟いた。

いつのまにか周りの歓声は消えていて、右膝以外どこも濡れていない。
少年はポケットから何か棒を取り出して、組み立て始めた。
組み立て終わるとそれはバットになっていて、少年はバットの端と端を両手で持つと、ぼくに背を向けると、SASUKEのサーモンラダーみたいに、バットを溝に引っ掛けるように一段一段上がっていって見えなくなった。

少年の背番号は枠いっぱいに「4」が書いてあった。



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