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5dmsoup
10/5(月)「PS」
人と話がしたくて、ペットショップに行った。
店員はぼくの来店に気づかず、ハタキと猫じゃらしが一緒になったようなもので掃除をしている。
適当にショーケースを見てると、手を合わせてぶつぶつ言っている学生がいた。
息継ぎの瞬間を狙って話しかけた。
受験生らしく、毎日ペットショップに合格祈願をしているという。
「羊がいればもっといいんですが…」
と曇りの無い目で言った。
ぼくは、実際違うけれど、
「ぼく、未年生まれだよ 握手するかい?」
と手を差し出した。
学生は「じゃあ、はい」と言ってポケットから手を出した。
その手にはハサミ。
ぎょっ、として手を引っ込める。
すると学生は慌てた様子で、
「ち、違うんです! あぁ! 本当に違うんです!」
と言って走って店を出て行ってしまった。
ぼくは、もしかしたらはさみで切られていたであろう右手の薄皮を撫でた。
ついでにポメラニアンとアメショーの子供も撫でた。