9/15(火)「港で見た紫色の龍」
屋台ラーメンの夜勤バイトが思ったより早く終わったので暇つぶしで港に行くことにした。
ケツに屋台をつなげたバイクで高速道路を颯爽と走る。
とても気持ちがいい。
港に着くと、同じ屋台ラーメンバイト仲間のコングJrにバッタリ会った。
コングJrは夜な夜な小中学校の校舎に忍びこんでプールにいるヤゴを全部捕獲して周った帰りだという。
これからそのヤゴを海に放つらしい。
そんなことをしてはいけないと思ったが、以前コングJrと同じシフトだった時、ぼくは仕事が嫌すぎてラーメンのスープを頭から被ったことがあった。
その時コングJrは何も言わずに一緒に片づけてくれた。
それを思い出してぼくはコングJrを注意できないでいた。
黒い海に放たれるヤゴ。
まったく気分が暗くなる。
それとは裏腹に空は明るみだす。
こんなはずではなかったのに。
もっと清々しく日の出を見るつもりだったのに。
すると突然、海の中からむくむくと巨大な紫色の泡が現れ出した。
驚いていると、後ろからコングJrが
「ほんとうは入浴剤入れたんだ」
と言った。
「ドラッグストアの倉庫ぶち壊してさ、全部かっぱらってきたんだ」
コングJrは笑っている。
ぼくもなんだかおかしくなってきて、一緒に笑った。
このまま紫色の泡が龍になってくれたらいいのに、と思った。
屋台もコングJrも一緒に背中に乗せてもらって、それで下界を眺めながらラーメンを食べられたらなんて素敵なんだろう。
ぼくは泡が立ち消えるまでコングJrと眺め、一緒に朝風呂に入り、コングJrが連行されるまでお互いの想い出と将来の夢を語り合った。