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7/17(金)
ぱりらりらりら、という音で目が覚めた。
今時珍しい暴走族かと思って、起きたままの格好(ヘルメットと靴下だけ)で外に出てみると、でかいカニが歩いているだけだった。
がっかりして部屋に戻ろうとすると、「待ってください!」と言われる。
カニがしゃべった!?
でかいカニははさみをかちかち動かしながら、
「実は私は、本当のカニではありません 機械のカニなのです」
あまりにリアルで気づかなかった。
そこで気づいた。
「君はまさか…」
「そうです かに道楽から逃げ出してきたのです」
やっぱりそうだったのか。
「何で逃げ出したりしたんだい?」
カニはしょげているのか、電源が切れたようにはさみや足を下げると、
「一度だけ、グレートバリアリーフが見たいのです…」
なんかちょっと欲しがってるな。
海が見たいならわかるけど、いい海見ようとしてるな。
ぼくはとりあえず「なるほど」と言っておいた。
「そこでお願いです 私を匿いつつグレートバリアリーフまで連れていってくれませんか」
「いや、ちょっと激ムズすぎますね」
「激ムズ? 承諾してくれるということですか?」
「全然違います そのお願いぼくには無理です」
「えー、あ本当ですか えーそうですかー そうなんですねー」
なんか意外だなみたいなリアクションしてる。
こんな激ムズミッション誰も引き受けないって。
すると、突然「いたぞー!」という声が聞こえて、甲冑を着た人たちが来た。
カニは「やべって」と言うと逃げ出したが、甲冑軍団が次々に網を投げて、カニをがんじがらめにした。
カニは「くそーっ」とじたばたしていたが、やがておとなしくなった。
甲冑の一人が「大丈夫でしたか?」と話しかけてきたので話を聞いてみると、このカニは本当はれっきとした巨大カニで、かに道楽創業60周年パーティーで披露するつもりだったという。
なんで自分を機械って名乗ったんですかね、と聞いてみると、「さあ」と言われた。
なんでしゃべるんですかね、とまた聞いてみると、「さあ」と言われた。
今度かに道楽のアンケートに「態度が悪い」って書いてやろうと思った。