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19961005
8/20(木)「日直魔法陣」
住んでいるアパートの週変わりの日直に選ばれた。
選ばれたからには、その日一日心して過ごさなければならない。
日直の仕事はただ一つ。
それは屋上に、チョコレートソースで魔方陣を描くこと。
こうすることでマンション内のネズミと生乾きの臭いが消える。
屋上の貯水タンクにたっぷり入ったチョコレートソースをバケツで汲み、屋上に掘られた魔方陣の下書きに沿って書いていく。
炎天下放置されているチョコレートソースはひどい臭いを放つ。
それに耐えながら六芒星を一本ずつ書いていく。
最後のすべてをつなげる一角を書こうとした瞬間、携帯が振動した。
無視するも、まったく鳴り止まない。
よっぽどの連絡かと思い尻ポケットから携帯を出そうとした時、手を滑らせ携帯を落としてしまった。
携帯は音もなくチョコレートソースに着地した。
ぼくはもう結成を拾う気力も失くし、一度部屋に戻って氷を浮かべたアイスティーを一息に飲んでから、寝てしまった。
けたたましい物音で起きた。
目の前には目出し帽を被った黒ずくめの男たちが部屋を物色している。
一度廊下に出ると、その階の住人が皆いた。
住人はぼくを一斉ににらんだ。
後で大家さんにこっぴどく叱られた。
曰く、魔方陣を完成させず途中で止めると、都内の空き巣犯が全ての部屋に大挙して押し寄せてくるというペナルティがあるのだという。
空き巣が帰った後のすかすかの部屋はいつもより広く感じた。
なんだか新生活だな、とアイスティーを飲もうと思い冷蔵庫を開けるとピッチャーが無く、びちょびちょにしぼんだティーバッグが流しに残されていた。