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11/2(月)「トンボの人生」

爪が伸びてきたのでアボカドで爪を叩く。
念入りに叩くこと5分。
爪が薄緑色になる。
ベランダに出て、爪を上向きに手を広げてじっとする。
そのうちトンボが止まってくる。(秋だとより止まりやすい)
止まったらまたじっとする。
トンボはそこを気に入る。
また来たいな、と思う。
その気持ちを汲んでやる。
次の日も同じようにアボカドで爪を叩いて緑色にし、ベランダでトンボを待つ。
今日もちょっくら休んでいきますかな~♪とトンボがやって来る。
じっと待つ。
ああ、小さい頃もこうやってトンボを指に止まらしていたな。
母ちゃん、元気かな。
廃船はげっそり浮いているかな。
秘密は誰にもバレてないかな。
思いを馳せていると、トンボにも伝染する。
トンボも思いを馳せる。
もちろん私に伝染する。
トンボが今日まで見てきたもの、食べてきたもの、感じたこと、思ったことなどが洪水のように頭に流れてくる。
どのトンボにも共通の思い出がある。
それは畑でキャベツを齧っている場面。
キャベツの外側のへなへなの部分をひとかじり。
美味すぎる。
トンボの人生で最も喜ばしい瞬間。
トンボの小さい小さい脳みそに快楽物質がちょろちょろ流れる。
すると、トンボを除き見ている私もキャベツが食べた府なってくる。
目の前には緑色に塗られた爪。
迷いなく齧りつく。
少し堅いが最高に美味い。
気付くとトンボは飛び去り、爪は短くなっており、日は暮れている。



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