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RSGT2025 「保育士チームが実践している連続的・多面的な観察を共有するためのふりかえり」から成熟したチームへの道を考える

はじめに

こんにちは。サーバサイドエンジニア兼スクラムマスターをやっている大谷です。
今回のブログのテーマは Regional Scrum Gathering Tokyo2025(RSGT2025) です。RSGTとは、日本最大級のスクラムおよびアジャイルに関するカンファレンスで、参加者は

  • スクラム導入を検討中または導入中の企業

  • 経営者

  • マネージャー

  • 開発実務者

  • スクラム導入支援者

と多岐にわたります。

今回は、2025年の1月7日 ~ 10日 にかけて開催された RSGT2025 に初めてオンラインで参加してきました。

Zoomでのオンライン参加の様子

その中でも印象に残った
「保育士チームが実践している連続的・多面的な観察を共有するためのふりかえり」
のセッションを通じて「成熟したチームへの道」ということを考えてみます。

「保育士チームが実践している連続的・多面的な観察を共有するためのふりかえり」

セッションの詳細はこちら
https://confengine.com/conferences/regional-scrum-gathering-tokyo-2025/proposal/20567 

登壇者は ピタゴラまなっち さんと Satoshi Harada さんで、保育士チームが子どもたちの成長を支えるために行っている「連続的な観察」「多面的な観察」「振り返り」のプロセスが紹介されました。

保育士は「観察」のプロであり、チームで「観察」というものを駆使しているという話から始まり、具体的な事例として「靴を履けない子ども」に対するアプローチが示されました。

連続的な観察

  • 子どもの行動をこれまでの経緯を踏まえて時間軸で捉える観察方法。

  • 物事をありのままに把握し、真理を見極め次の意思決定に繋げる。

多面的な観察

  • 複数の保育士がそれぞれの視点で子どもを観察し、主観的な偏りを防ぐ。

  • 保育者同士で協力して観察内容を共有することで、多角的な理解が深まり、意思決定に繋げる。

振り返り

  • 保育者同士の保育観を集めて共通のゴールをまず決めておく。

  • 観察結果を基に、日々の保育内容や子どもの成長に応じた改善策を検討。

  • 瞬間的・1日単位・週単位・月単位といったスパンで振り返りを行い、継続的な改善を図り、ゴールへ向かう。

スライドでも紹介されていましたが、「観察」に関してはスクラムガイドのスクラム理論でも

スクラムは「経験主義」と「リーン思考」に基づいている。経験主義では、知識は経験から⽣まれ、意思決定は観察に基づく。リーン思考では、ムダを省き、本質に集中する。

https://scrumguides.org/docs/scrumguide/v2020/2020-Scrum-Guide-Japanese.pdf

のように記述があり、その取り組みはスクラムマスターの仕事にも通ずるところがある、というお話をされていました。

その他にも観察の際の「物理的距離」や「振り返り」を楽しく行うことの話も紹介されていたのでスライドを見てみてください。

自分たちの開発の場ってどうなってる?

このセッションでは、一見すると結びつきそうにない「保育」と「スクラム」というテーマでとても興味深い内容でした。スクラムはソフトウェア開発から生まれた理論ですが、ソフトウェア開発だけに適用されるフレームワークではないことを実感しました。

改めて認識させられたのは「意思決定」やその前提となる「観察」が、すべて「チームで達成したいゴール」のために行われるという点。これはソフトウェア開発に限らず、どの職種にも当てはまる普遍的な原則ですね。

でもふと立ち返って思いました。

自分たちの開発の現場でチームのゴールから逆算した「観察」って出来てる?

自分たちの開発現場に照らし合わせてみる

まず、今回の保育の現場の話を自分たちの現場にそのまま適用させることは少し難しい話になります。

スクラムマスターとして

スクラムマスターという立場ではある程度俯瞰した観点でチーム全体を観察することは可能だと思います。
しかし「多面的な観察」という視点ではどうでしょう?
スクラムマスターが1人だけがやる観察だと主観的な偏りが出てしまっても不思議ではないはずです。

チームメンバー(開発者)として

日々直面する課題への対応に追われ、長期的な目線よりも短期的な意思決定をしがちです。
プロダクトゴールから逆算してメンバーやチーム全体を観察し、それに基づいて意思決定する視点を全員が持っているでしょうか?また、持てるようになるでしょうか?


チームメンバー全員が今回の保育士たちのように振る舞うことは難易度が高いようにも思います。
「多面的な観察」を実現するためには、常駐するスクラムマスター以外にも別視点からサポートできる仕組みが必要なのかもしれません。

成熟したチームへの足掛け

より価値のあるプロダクトをより早く提供するためには、

「成熟したチーム」

を作り上げることが重要な要素の一つです。
今回のセッションでも冒頭に、「守破離の離に相当する話であり、スクラムの基本的な話ではない」という前置きがなされました。
少し高度な内容になります。

でも、この「成熟」という言葉の話題を掘り下げようとすると具体的に説明するのが難しく感じることがあります。

「成熟したチームって自己組織化や心理的安全性の高いチームだよね?」
「うーん、具体的にはどんな事が出来るようになってるチームなんだろう?」


今回のセッションは、この問いへの一つの解を提示してくれるものでした。

そもそも、チームが存在する意義は、共通のゴールや目的を達成することです。そして、そのゴールを達成するためには、日々繰り返し意思決定を行う必要があります。
自分の経験からも短期的な視点での意思決定は出来るものの、長期的な視点での意思決定はしづらい点がありました。
では、その意思決定を改善していくために必要なものとは何か?

「連続的な観察」「多面的な観察」そして「振り返り」

これ、結構鍵になってくると思いました。

まとめ

今回はRSGT2025の「保育士チームが実践している連続的・多面的な観察を共有するためのふりかえり」にフォーカスした記事を書いてみました。

保育の現場とソフトウェア開発の現場は同じチーム活動であっても特性は異なります。
しかし、チームで共通の目標に向かって進むという本質的な部分はどんな業界や職種でも共通していることです。

決めたゴールに向かってチーム皆が納得して物事を進めていく。
どんな現場で、どんなチームであっても目指したいところです。

おしまい



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