かにじゃないお
ぶりっこテクノシリーズをずーっと見てる。
今? って思うかもしれんけど、今です。
俺が特に好きなのは「フライデープラネット」「先生、質問があります」「たそがれハヴマンド」あたりですかね。
※ほぼ全作品グロ描写があるので苦手な人は注意!※
内田温の作品は露悪的じゃないのがいいなーと思う。自分の世界で完結してると言うか、世間に波風を起こしてやろうといった気概が感じられない。シビアな世界観とグロ描写が取り沙汰されて「検索してはいけない言葉」扱いされがちだけど、内田の作品はむしろ優しさに満ちている。
そこで懸命に生きている登場人物たちを神の視点から憐れむような描き方は決してしないし、鑑賞者も他人事ではいさせて貰えない。人間が誰しも持っている素朴な情動で動くキャラは、我々を当事者にさせる。
ホームページで各作品の意図について大っぴらに語ってしまうのも内田の特徴で、読んでいくと内田の思想の芯みたいなものが見えてくる。
内田の作品は恋愛要素が多い。特に「『あなた』とはつまり何なのか」というテーマは内田の中で重要なもののようで、「キセカエッコ!」、「輪切りのハニー」、「いいおとこ☆イイオトコ」などで度々題材にされている。
それぞれ「お互いの外見が羨ましくなって神経系統以外を交換した子」、「好きな人の何を好きになったのか知りたくて相手をバラバラにした子」、「好きな人達の好きな部位を合成して完璧な恋人を作ろうとした子」が登場する。
分解しても私が好きになった「あなた」はそこにあるのか? これが「自己」とかだとよく見るやつになるが、本質的には同じ問いでも、二人称にすることで哲学的問いから恋愛の悩みに降ろす。ここが内田の作家性だと思う。
内田にとって愛は人を盲目にさせるもののようで、内田の作品で最も有名であろう「友情リリー」は親友が自分以外の人間と関係を持つことが耐えられず殺人を繰り返す子の話だし、「少年めぐる」「もものち晴れ」「先生、質問があります」では愛が生む幻想に現実を突きつける。
結局、現実は非情なのだ。
好きな人も排泄するし、
自殺を諦めた途端殺されるかもしれないし、
生まれ変わってまた会える確率は天文学的な低さだし、
土曜日は永遠に来ないのだ。
でも彼らは笑顔で生きて、死んでいく。
現実は「そんなもん」なのだ。希望に満ちてはいないが、絶望するほどでもない。
「そんなもん」以上でも以下でもないとするドライさが内田作品の魅力であり優しさなのだ。
内田温が最近コックカワサキマイクロビキニ部の人になっちゃってるのが残念。お前ら、今こそぶりっこテクノを聴こうぜ。