獄王(3/16)
・コロコロがすごいことをしてるので「ウソツキ!ゴクオーくん(吉もと誠)」を読んでいる。懐かしい〜! 今読んでも超面白い。面白くない回がないじゃないか。これの始まりをリアルタイムで見られた俺は果報者だわ。
1話完結のミステリーを10年続けただけでも異常なのに、続き物としての完成度も高い。こういう漫画を褒めるときに「本当にコロコロの漫画か!?」みたいな表現を使ってしまいがちだけど、コロコロは元々すごいんだ。ジャンプ以上に厳しいアンケート至上主義だし。
・基本的に「事件発生→ウソ暴き→舌を抜く→真実を吐露→なんやかんやあってめでたしめでたし」の流れで毎回構成されてて、ゴクオーが思ってもいなかった真意が隠されてたりするから面白い。毎回よくこんなにウソのパターンが思いつくもんだ。
ウソ吐きを成敗して終わりじゃなく、反省してやり直すところまで描いてくれるから気持ちいいよな。実に教育的! コロコロの看板を張るにふさわしい。登場人物はみんな小学生だから、ウソを吐くのはしょうがないんや。ゴクオーのウソ暴きも、暴いたあと「反省の色なし」と判断するまで舌を抜かない描写が徹底している。ウソを吐いても反省すれば人間はまたやり直せるが、吐き続ければ一生ウソに苦しむというメッセージが作品全体に一本通っている。
↑特に唸った回。ウソがホントになっちゃったときにどうする? という話
俺は人間の悪性を根絶できる・すべきものではなく、あって当然であり生涯付き合い続けるものとして描くお話が好きです! 要は人間讃歌。だからペルソナにもハマったんだ。たまに出てくるマジの犯罪者は連行されてってフェードアウトするし、ページ内で扱いきれない部分については「描かない」判断がなされているところも巧みだ。
・ウソを裁く閻魔大王でありながら、当人はウソが大好物、というゴクオーのキャラを打ち出せた時点でもう大成功している。他者に害なすウソは悪として裁かれるべきだが、それはそれとして人間はいいウソも悪いウソも吐くし、だから人間は面白いのだと高らかに笑う上位存在。人間なんて彼らの時間に比べればあまりに一瞬で消える命なのに、なんでそこまで人間に興味を持つの? という問いに、「だから一瞬たりとも見逃したくねーんだよ!」と迷いなく答えるゴクオーよ……。
・ヒロインの小野天子ちゃんね。この子がね〜、10歳にして非常に高潔な魂をお持ちなのよ。でも聖人サマなわけじゃなくって、下手なウソを吐くし、ちゃんと人を嫌う心も持ってる、煩悩に塗れた一人の人間なのよ。
天子ちゃんは人間の「善」の面を体現したキャラで、この子の輝きにゴクオーも、敵だったウリエルもサタンも脳を焼かれちまってんのよね。こいつら仲良くなったわけじゃなくて「天子いいよね……いい……」の感情で同じ方向向いてるだけだからね、天子ちゃんマジ天使。
・ゴク天いいよね〜!
隣の人の好きなところを書きましょうみたいな課題(なんだそれ)ではっきり「ウソツキでやさしいところ」って書いてんの何? ひとコマで流していい描写じゃないだろ。こういうゴク天の愛の深さを知らしめる描写が予想を超えて飛び出してくるので油断ならねえ。
他作品だけどネウロ×弥子も好き。人外ドS主人公×不屈の人間ヒロインのコンビは俺に刺さる。正直、天子ちゃんと弥子のせいでサディズムに目覚めた節がある。どうしてくれるんですか?
高潔な精神の人間に出会って人外の人間観が変わっていくのってなんでこんな美しいんだ。千空とか獏みたいな偽悪系主人公も大好きだから、徹頭徹尾俺に刺さる要素しかないんですよね。いや、順序が逆で、幼少期にゴクオーくんに触れたから今の嗜好が育ったのかも。
まだ無料公開してるから! 読んで!