大喜利に競技性は必要か【長田悠幸・町田一八「キッド アイ ラック!」】
本来月額980×2=1,960円のところ初めの2ヶ月は499円で利用できるとのことだったのでKindle Unlimitedに入ってみた。読みたい本がたくさんあるので。iPadでもMacbookでも読めるのが良い。
とりあえず、ずっと読みたかった「キッド アイ ラック!」を読んでいる。ヤンキーが大喜利に挑戦するマンガ。Unlimitedの対象は1巻までなのがもどかしい。続き買おうかな。
マンガのストーリーは基本的に「バトル」だ。強敵をどう倒すのか? という「課題の提示→解決」というプロセスに肉付けして作られている。これは恋愛マンガなどにも応用できる。そこに来ると、大喜利をマンガにするのはとても難しい。大喜利には「正解」がない、つまり明確な「問題の解決」がないからだ。スポーツマンガなら相手より多く得点を入れれば勝ちだし、バトルマンガなら相手を叩きのめせば勝ち。単純明快だ。しかし、大喜利は会場の空気によってウケる回答が異なるため、その場の空気感を読者に共有できないと作中の勝敗に納得させることができない。読者が「面白いな」「勝ったな」と思える回答を考えなきゃいけないのだから作者には相当な技量が要求される。
こういった地味な題材を扱うとき、バトルマンガ的な演出で面白く読めるものにするという手法もある。「ヒカルの碁」「アクタージュ」「黒子のバスケ」などは好例だろう。例えば大喜利なら会場の空気の奪い合いを領域展開のようなハッタリを効かせた演出にするという手もあるよな。ジャンプルーキーとかにありそうだなそういうマンガ。
今作はそういったハッタリは利かせず、ストレートに大喜利を描いている。笑われるのが嫌いな矢追が引きこもった友達を笑わせるために大喜利を学んでいく、というのがこの作品の主軸で、ヤンキーが主人公なので当然いけすかないメガネのライバルも出てくる。「君は笑わせてるんじゃなくて笑われてるだけだよ(笑)」みたいなことを言ってくる。矢追は主人公なので「俺は相手が笑えばそれでいい!(ドンッ!)」みたいな、それを超える結論を出す。これは大喜利の本質を突いているな〜と思った。
大喜利って極論を言えば全ての回答がバカウケしてる状態が理想であって、点数とかの競技性を担う部分は形骸化してるくらいが良いと思う。そういう意味で手札大喜利は優れた手法だよな。制限があることによって、噛み合わない回答を出してもウケうる「フリ」がルールの時点で用意されている。いわゆるパーティゲーム的な面白さが最低限確保されているから、文化祭とかで素人にやらせるなら手札大喜利がいいよ。下手にIPPONグランプリごっこをやると地獄みたいな空気になるから。
以下俺が考えた新ルール大喜利
①50メートル大喜利
25m地点にペン、50m地点にホワイトボードがあるのでお題が出たら50mダッシュして回答しなければならない。手札大喜利と同じく、状況がフリになっているので笑いが起きやすいと思う。水泳でも可。
②創立大喜利
「こんな学校は嫌だ」というお題に対し、実際に学校を設立して回答する。制限時間15年。
③水没大喜利
下から水面がせり上がってくるので座布団をもらわないと死ぬ
誰かやってくれ。