山崎元『経済評論家の父から息子への手紙』❶「株式性の報酬」がある仕事に就く
本書の概要
金融業界を渡り歩いてきた経済評論家の山崎氏が、末期がんで無くなる前に、「息子」にあてて書いたお金と生き方の話。
ダイジェスト
● 人事評価について
● サラリーマンの働き方
● 新しい働き方
● 株式性の報酬
ー株式性の報酬のアップサイド
① 面的な拡大(規模拡大による利益の掛け算)
② 時間方向の拡大(将来利益が今評価される時間方向の掛け算)
③ 成功報酬は評価が甘くなりがち
④ 株式の報酬はキャッシュの報酬よりも甘くなりがち
⑤ 株式のリターンは賃金上昇率よりも大きい
ー株式性の報酬のダウンサイド
せいぜいがクビになることだ。借金を負うようなリスクは取らなくて良い。
● 株式で稼ぐ働き方とは
(1)自分で起業する
自分で会社を興し、会社の株式を公開して、株式の価値によって大きなお金を得る。新しいビジネス(サービスあるいは商品販売)を思いついたら、会社を作って人を雇い、拡大することを目指す。これが基本だ。
起業の成功確率は古来から大きなものではないが、息子には「勧めていい」と言える。起業のコストが下がったことと、株式公開が容易になったので、ハードルが下がったからだ。また仮に起業に失敗しても、中途採用のコースに戻ることも容易である。
ただし、起業の主体になることが向いているかどうかは、本人の性格による。人を雇い給料を支払うことの経済的なリスクおよび対人的なプレッシャーに耐えうるか否かが問題だ。
(2)早い段階で起業に参加する
「ビジネスの種」を自分で思いつくとは限らないし、自分が起業家に向いたタイプであるとも限らない。そこで、起業段階、企業間もない段階でベンチャー企業に参加する可能性も検討してみたい。
ここで大事なのは、入社時点で自社株に対する権利を確定することだ。いつのタイミングで「自社株を何株付与する」「自社株を〇〇円で買うことができる権利(ストックオプション)を何株分付与する」といった約束を書面で取り交わしておく必要がある。
ベンチャー企業の社長はわがままで気まぐれなため、社長との個人的な相性は大いに考慮すべき材料だ。ベンチャーの仕事はきつい。創業期の創業者はワーカホリックといっても過言ではない仕事の虫である。
(3)報酬の大きな部分を自社株ないし自社株のストックオプションで支払ってくれる会社で働く
成長期にある企業では、給料ボーナスに加えて、自社株に絡む報酬を支払う場合がある。うまくいくと会社はキャッシュの流出を抑えて、従業員は株価の上昇から経済的に潤うような「給料はウォール街が払ってくれる」と言えるような好循環が生まれる。「1990年代のマイクロソフト」のような会社だ。
制度化されていたり、入社時の契約に含まれていたりするので好都合だ。条件をよく調べて、可能なら交渉して入社せよ。
(4)起業の初期段階で出資させてもらう
知り合いの起業の早い段階で株式を持たせてもらうという方法もある。友人関係や人脈の形成を通じて、チャンスに対するアンテナを張り続ける必要がある。
● 変化しないものが不要とは限らない
時代というものはゆっくりと、しかもまだら模様に変化する。正しいとされる思想もそうだし、現実の社会や組織は思想に大きく遅れて変化するのが普通だ。
特に公務員や学校(学者や先生)のような、企業よりも変化の遅い職場を選んだ場合、職場に働く常識や力学は「昭和のまま」であることが少ないはずだ。かつての働き方の常識やコツで、時代を超えて有効な共通の考え方や方法もある。使えるものは使って「いいとこ取り」的に利用するのがいい。