ゾンビランドナナ #004
先に眠気が来たので、先に眠った。
翌朝。
ミチルは柊ナナの腕の中にすっぽりと収まるようにして眠っていた。
「おはようございます」
「……おはようございます」
普通の人間なら暑苦しくて仕方がないが、ミチルはゾンビなのでひんやりとして気持ちがいい。
まだ眠そうなミチルにタオルケットをかけ、エアコンをつけた。
午前六時。
朝食は軽く、食パン一枚。何も付けずに食べる。手早く身支度をする。
玄関に保管してある段ボールからブラックのコーヒー缶を手に取り、鞄に入れる。高級品ではないがそれなりに手入れのされた革靴をはき、チェーンを開ける。
「いってきます」
大き目の声でそう言うと、部屋の奥からミチルがとぼとぼと歩いてきた。
「ナナしゃ……今日は何時ごろ帰ってきます?」
「八時くらいですかね」
「じゃあ…………二時間後?」
まだ眠いようだ。
柊ナナは訂正する代わりにミチルを抱きかかえ、ベッドに運ぶ。もう一度タオルケットをかけてやると、すやすやと眠りだした。
ゾンビは代謝が低い。どのように身体機能を維持しているかは甚だ疑問だが、映画のように一日中歩き回って人間を襲っているよりは、こうして眠っている時間が多いほうがまだ納得できるというものである。
「いってきます」
返事はない。
部屋の鍵をかけ、アパートの階段を下りる。
そして、昨日と同じ一日が始まる。
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