ゾンビランドナナ #002
卵焼き(刻みネギ入り)とマルチビタミン・亜鉛のサプリメントを摂り、風呂を沸かす。
ミチルは食器を片付けた後、コントローラーを握りしめてテレビの前で身体を揺らしている。
「ミチルちゃん、一番? 二番?」
「二番でお願いします」
ミチルはゾンビだ。代謝がないので風呂に入る必要があるのかは疑問だが、生前の習慣からか湯船には浸かりたいらしい。
「じゃあ、先入ってきますね」
寝間着の準備をする。着ていた服を洗濯機に放り込み、風呂に入る。
給湯温度はぬるめの38度。夏はこれくらいで丁度良い。光熱費的にも。
窓を開け、換気扇を回す。湯気が上へ上へと吸い込まれてゆく。露天風呂風で良い。光熱費的には良くないが、この後入るミチルはゾンビなので、追い焚きの必要はない。人間の身体は自分の体温を元に熱い/冷たいを判定する。このあいだミチルが寝ている間にこっそり体温を測ると、エアコンの設定温度と同じ25度だった。
風呂から上がる。ドライヤーはこの間壊れてからまだ買い換えられていないので、乾いたタオルを髪に巻いた。
「ミチルちゃん」
「はーい」
といってもすぐに風呂に入るわけではない。十五分ほどしてから、コントローラーを置く。対戦ゲームなら仕方ない。
ミチルが風呂に入る。洗濯機を回し、冷蔵庫にしまってあった発泡酒と半額のざるそばを手に取る。生活費に余裕が無いので本来は避けるべきなので、ミチルには黙っている(たぶん気付いている)。
カシュッ
ゴッゴッゴッゴッ
「ぷはーーーーーーーーーー」
我ながら、島で暗殺などを企んでいた時からは想像できない姿である。
その時だった。
風呂からミチルの呼ぶ声が聞こえた。ざるそばをテーブルの端に寄せ、風呂へ向かう。
「どうしました?」
「あの......大変申し上げにくいんですけど......」
一人で晩酌しているのがバレたか? おそるおそる扉を開くと、ミチルもおそるおそる顔を覗かせた。
「追い焚きしても構いませんか? ちょっとお湯が冷たくて......」
「どうぞ」
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