ゾンビランドナナ #012
それからしばらく経つが、来訪者はいない。
時々アパートの床に塗料を塗り直し、時々工場の派遣に行き、それなりの頻度でコンビニの派遣に行く。そんな生活だ。
「行ってきまーす」
返事は無い。柊ナナは部屋の鍵をかける。一見普通の鍵に見えるが、管理会社に無断で取り付けた米軍採用の鍵だ。
たとえ銃でも簡単には壊せない。柊ナナが仕事に出ている時は概ねミチルは寝ているので、うっかり内側から鍵を開けてしまうこともないだろう。
靴を履く。なるべく塗り直したばかりの塗料を踏まないよう歩き、階段を下りた。
欠伸をしながら目元を擦る。
そこまで疲れが溜まっているという訳でもない。が、昨晩の事があった後、どうにも動悸がひどくなかなか寝付けなかった。
以前なら。たとえ一晩のうちに何人殺そうが、眠れないということは無かった筈だ。
ゴミ収集のトラックが前からやって来る。路肩に避けた先に、少し古い自動販売機があった。今ではあまり見なくなった、当たり付き自販機だ。
柊ナナは百円玉を投入し、缶コーヒーのボタンを押す。ゴトンと音を立てて赤いラベルの缶コーヒーが出る。と同時に、軽快な音楽を鳴らしながらルーレットが回る。
(7・7・7・6)
『残念! また挑戦してネ』
「ははは」
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