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毎日ナナしゃん ~After Story~ (145)

※この記事は重大なネタバレを含みません




 鶴岡が私に銃口を向け、引き金を引く。

 抵抗すべきだ。
 まだ、成し遂げなければならないことがある。
 能力者を、みんなを、ミチルを救う。
 そのために、まだ、やらなければならないことがあったはずだ。
 
 なのに、どうして私の足は動かない?
 
 ああ、それは――
 
「愚かだな、柊」

 銃弾が、私の足を貫いているからだ。
 
「――――ッ!」

 右足の膝。皮膚が割け、肉が抉れる。
 たまらず私はうずくまり、右足を抱えるようにして倒れ込む。飛び散った血が、服に染みた。
 
「下らんな。このまま放置しても、貴様はいずれ死ぬだろう」
「……私を、どうするつもりですか」
「どうもしない。貴様は道端の小虫を踏みつけた後、丁寧に供養するのか?」

 出血が酷い。急いで止血しなければいけない。
 なのに、意識が朦朧とし、ここから一歩も動けない。
 
 思えば、こんなことは初めてではない。
 そうだ、島にいた頃も、こんなことがあった。
 
 鶴見川という能力者に、背を刺された。
 痛かった。だが、意識ははっきりとしていた。
 それは、目的があったからだ。
 
 それに引き換え、今の私はどうだろう。
 立ち去ってゆく鶴岡を、制止することもしない。
 ただ、その背中と、自分の足から流れる血を眺めている。
 
 ――部屋の扉が閉まる。



つづく

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紅葉
ちゃんとしたキーボードが欲しいのですがコロナで収入が吹っ飛びました