毎日ナナしゃん ~After Story~ (109)
※この記事は重大なネタバレを含みません
鶴岡もミチルも、戻ってくることはなかった。
ミチルを救った気になっていた。だが、それは違った。ミチルは私を見限り、全ては鶴岡の手のひらの上で踊らされていたのだ。
確かに、私を殺人鬼に仕立て上げたのは鶴岡だ。だが、何も考えず人殺しになった私もまた、確かに罪人であった。
部屋の中で、私は一人、時をやり過ごした。
ジンやモエのいるアジトに戻る気にもなれなかった。ほのかに甘い香りのするこの部屋から足を踏み出すには、私はあまりにも臆病すぎた。
そうして三日ほどが経つ。自分でも分かるほどに憔悴しているというのに、腹は減るものである。
台所で蛇口を捻ると、水が出た。私は直接口をつけて水を飲む。甘くも苦くもなかった。そして、甘くも苦くもないのが当然であるということに気付くのに、私は少しの時間を要した。
更に翌日。
冷蔵庫の電源が入っていることにやっと気がついた。
中に、冷えたスープを見つけた。
見覚えがあった。
島にいた頃、私が衰弱したミチルに作ったものと、そっくりだった。
私はそれをスプーンも使わず、恐る恐る口に運ぶ。
美味かった。
きっと、私が作ったものより、ずっと。
私はずっと迷っていた。
ミチルに殺人を告白した時から。私は、生きていても許されるのかと。
食事を取るのは、生きるためだ。私は吐き気を堪えながら、スープを口に運び続けた。
そうして全てを食べ終わった、ちょうどその時。
誰かが部屋の扉を叩いた。
つづく
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