毎日ナナしゃん ~After Story~ (149)
※この記事は重大なネタバレを含みません
私を呼ぶ声――ナナしゃんの声が聞こえた。
鶴岡さんと二人で話をさせて欲しい、というナナしゃんを置いて、私達は部屋を出た。あまり遠くへは行かず、すぐに駆けつけられる距離。
キョウヤくんが、近くにあった自動販売機で全員分のお茶を買ってくれた。私はそれを受け取り、封を切ろうとする。その時のことだった。
「おい犬飼、どうした」
引き留められるより早く、私は駆け出した。
キョウヤくん達には聞こえていない。だが、私にははっきりと聞こえた。
助けを求める声が。
「行かなきゃ……!」
エレベーターを待つ時間が惜しい。私は階段を駆け上がる。丁度その時、エレベーターに乗る鶴岡さんと目が合った。鶴岡さんはこちらに気付いたが何も言わず、帽子を深く被った。
私は間違っていたのだろうか? ナナしゃんが私のことを想ってくれていたことは知っていた。それでも、私は信じることができなかった。そして今、私は信じた。ナナしゃんなら、きっとなんとかしてくれると。そして、私は――
扉を開ける。そこには、血を流して蹲る、一人の少女。
そっと、指先に触れる。
つづく
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