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"脱"F④

前回までのあらすじ
 ギターから一切離れてゲーム三昧の日々、もうギターに夢中になっていたあの日は帰って来ないと思っていた…
そんな時、ある言葉が頭に浮かんだそれは

「取り柄」


「あのさ、ちょっと欲しいものがあるっちゃけど…」

母親は少し顔をしかめた。

母親からしたらまた新しいゲームでも欲しいんだろうと思っていたのだろう。
そりゃそうだろう。
あれだけずっっっっとゲームばっかりしていたんだ。

ただ僕は違った。

もう一度、もう一度だけやってみようと…

うまくいく方法なんて全く分からない。

でもこのままじゃ嫌だ。

こんな何も得意な物や誰かに誇れる物が無い自分が嫌だ。

ちょっとずつでも良いから何か、何かを成し遂げて、こんな僕でも

「取り柄」が欲しい!!!

と心底思った。

この思いが実れば、自信がつき、今の自分よりも更に大きく、大きく成長できるはずだ!!


…ただ、何をしたらいい…?


最大の問題はこれだ…

(どうしたらいい?何をしたらいい?他の人達は何をしたんだ?やる気はあるのに…分からない、分からない、

分からない〜〜〜!!!!!)

僕は必死で考えた。

教則本はある…けどうまくいかなかった…

歌謡大全集や音楽の教科書の楽譜はある…

でも、分からない曲が多すぎて全くイメージがつかない…



「………あっ?!そうや?!?!」

僕は部屋に置いてあるCDコンポの前に来てCDを漁った。

(え〜っと、これじゃない、これ…でもない、ん〜〜〜…あっ、あった?!)

そう、それはだいぶ前に中古で購入した

ゆずの「からっぽ」

のCDだった。

一先ず、コンポにCDを入れて聴いてみる…

(…これいいなぁ…)

(よしっ、で、この曲の楽譜が載ってる本を見に行ってみよう!)

やっぱり実際に曲を聴きながら、楽譜見ながらの方がいい練習になるだろう。



…………F…………



(…大丈夫……なはずだ…もう…ゲームばっかの生活はしない…)




…僕は、母親にこう続けた

「ゆずって言う二人組の人の楽譜なんやけど…」

「へ〜〜〜、あっ、そうね」

とても意外だったらしい…

「で、いくらなん?」

「…………1500円…………」

「ふ〜〜ん……まあ、父さんに聞いてみるわ」

「あっ…うん…分かった…」


………だいたいこの流れだとうまくいかない………


とりあえず、ギターを半年ぶりに抱えた。

…持ち辛い…けど、なんかとても落ち着く…

サウンドホールからギターの木の香りがほんのり香る…

C……G……D……Am……Em……F……………無理……………

(…だけど、諦めん!!)

やっぱり大変…でもそれ以上に楽しい!!!

今日はずっとフルで弾いていた。

指先がめちゃくちゃ痛い(笑)

指先がだんだんと固くなっていくみたいだが、僕にはまだまだまだまだ先の話。

そろそろ時間も遅くなってきた…

「ねみぃ…」

……今日は久しぶりにとても楽しかった……


〜次の日〜


「はい、これ」

「へ?何これ?」

母親がいきなり1000円札を2枚渡してきた。

「何ってあんたが欲しい物があるって言ったっちゃない」

「マジで?!?!?!良いと?!?!?!?!」

大きな声が出た

「いらんならいいけど」

「いやいやいやいや、いるいるいるいる」

もう、最高の気分だった。

絶対お金貰えないと思っていた。

「あんたがまたギターしたいらしいんよってのを父さんに言ったら喜んでたよ『好きなようにやらせてやれ』だって、帰ってきたらお礼言っとくんよ」

「…………ありがと」

親にお礼を言うだなんて久々。

僕はその足ですぐさま本屋に向かった。

ゆずの「からっぽ」とあまり知らない曲が載ってる楽譜集を購入。


やっと、やっと小さいながらも

「一歩」

を踏み出した。

ただ、この「一歩」が今後大きな歩みとなる。



次回…ははっきり書かないことにしました。
自分が思い描いてる内容と実際に書く内容に若干差異が生まれちゃってます。
ただ、この「一歩」は本当に大きな物になりました。
ここからは、どんどんその勢いに乗っていく様を描けたらいいなと思っております。

ここまで読んで頂き本当にありがとうございました。

それでは次回で!!!








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