【長編小説】底辺JK vs 新米教師 #1
#1 修羅の道
=主な登場人物=========
〇田中 拓海:新米教師。初の赴任先が地元で有名の底辺女子高となり、ハードな教師生活のスタートとなる。生徒に翻弄されながらも、理想の教師を目指し奮闘する。
〇林 かれん:高校3年生。低学力と素行の悪さで底辺女子高に入学するも、優れた容姿と強気な性格、ずる賢さにより悪い意味で”高校の顔”とも呼ばれる存在になる。新しく担任となる新米教師田中を振り回すことに楽しみを見出す。
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1-1 初日
田中拓海は、教師としての第一歩を踏み出すべく、ある地方都市の高校に赴任することになった。しかし、その学校は地元で「底辺女子高」と呼ばれる場所だった。学力、校風、生徒のモチベーション、すべてが低迷していると言われる学校。けれども、田中はその事実に気後れするどころか、むしろ燃えていた。
「俺がここで、何かを変えてみせる」
教師としての理想に燃えながら、彼は満員電車に揺られ、学校の門をくぐった。しかし、彼の自信は初日から大きく揺らぐことになる。
朝のホームルームで初めて顔を合わせた生徒たちは、バラバラに机を並べ、スマホをいじったり、寝ていたり、新しい担任が来たというのに全くの無関心な様子。
そんな中、ひときわ目立つ存在がいた。
明るい髪色に派手なメイク、制服のスカートをこれでもかと短くしたその女子生徒は、教室の中心で足を組んで座っていた。
「アンタが新しい先生?」
その声の主は、林かれん。学校内でも知らない者はいない問題児で、このクラスの事実上の支配者だ。田中が名前を名乗る間もなく、かれんは小さく鼻で笑った。
「ふーん、見た目は普通っぽいけど、どうせ長く持たないんじゃない? このクラスに来た先生、いつの間にか辞めてるし」
教室中からクスクスと笑い声が漏れる。田中は眉をひそめるが、表情を崩さずに視線をかれんに向けた。
「それは面白い話だな。でも悪いけど、俺は簡単に逃げるようなタイプじゃないから」
田中の言葉に、かれんの眉がピクリと動く。その視線が「本当にそうかな?」と言わんばかりに挑発的に光った。
「へぇ…w…そりゃ楽しみw♡」
こうして、田中拓海と林かれんの戦いが始まった。田中はこのクラスを立て直すことができるのだろうか。
1-2 赴任二日目
田中が学校に到着すると、早々に教頭室に呼ばれた。2日目にして何か重大な問題でも起きたのかと身構えながらドアを開けると、厳格そうな中年男性――教頭の黒崎が腕を組んで待ち構えていた。
「田中先生、早速だが、君に一つ任務を与えたい。」
「任務…ですか?」
黒崎は重々しい口調で頷き、デスクの上に分厚い資料をドンと置いた。それは「校則規定書」と書かれたファイルだった。
「1日もあれば十分に理解して貰えたと思うが、この学校は規律が乱れきっている。特に3年C組、君の担任するクラスだ。もはや“無法地帯”と言っても過言ではないな。」
「は、はあ……」
「君には、生徒たちに改めて校則というものをきちんと理解させ、守らせることを目標にしてもらう。成果を出すのは難しいだろうが、これは君の教育者としての初試験だと思ってくれ。」
田中は教頭の言葉を受け、静かに気を引き締めた。とはいえ、心の中では不安が膨らんでいく。校則を守らせる?2年間も学校にいながら、あの状態の彼女たちを今さらどうにか出来るのか?
「は、はい…頑張ってみます…」
そうして、3年C組の教室に入った田中は、昨日と変わらない荒れ果てた生徒たちを見て、自信が少し削られる。
「おはようございます。今日は授業を始める前に皆さんに先生からお願いがあります。」
かれんが机に頬杖をついたまま冷めた口調で言った。
「ふーん。で、先生、うちらに何させたいワケ?」
「えーっと…まぁその…校則について少し話を――」
田中が話し出すと、かれんは笑いを堪えるようにしながら言い放った。
「あー、それかーw。悪いけど、あたしたちの生活にそんなのいらないんだわw。」
教室中がどっと笑いに包まれる。だが、田中はその視線を逸らさずにかれんを見つめ返した。
「林かれん。」
「……なに?」
「君には、いや君たち全員には校則をちゃんと守ってもらう。私が来たからには、今まで通り自由にさせるつもりは無い!」
一瞬、教室が静まり返った。だがすぐに、かれんは挑発的な笑みを浮かべて言った。
「へぇw。やれるもんならやってみなよ…せんせ?」
こうして、田中の戦いが本格的に始まった。生徒たちと向き合う日々が、彼を待ち受けていた。
(この物語はフィクションです。実在する名前及び団体とは一切関係ありません。)