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【長編小説】底辺JK vs 新米教師 #2

#2  試されるは教師

=主な登場人物=========
〇田中 拓海:
新米教師。初の赴任先が地元で有名の底辺女子高となり、ハードな教師生活のスタートとなる。生徒に翻弄されながらも、理想の教師を目指し奮闘する。
〇林 かれん:
高校3年生。低学力と素行の悪さで底辺女子高に入学するも、優れた容姿と強気な性格、ずる賢さにより悪い意味で”高校の顔”とも呼ばれる存在になる。新しく担任となる新米教師田中を振り回すことに楽しみを見出す。
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2-1  理屈が通じない世界

田中は教壇に立ち、生徒たちに向けて話し始めた。黒板には、彼が丁寧に書いた「校則の意義」の文字がある。まずは理論から説明し、校則を守る重要性を理解してもらう。彼はそう考えていた。

「みんな、校則というのはただのルールではなく、私たちが学校生活を快適に送るための指針なんだ――」

しかし、まもなくして教室の奥から声が飛んできた。

「先生、何言ってんの?誰か聞いてるように見えますw?」

声の主は、もちろん林かれんだ。冷たい目で田中を見ている。周りの生徒たちも彼女に同調して笑い始め、スマホの画面を眺めたり、他の生徒とおしゃべりを再開した。

「校則なんて守らなくても困らないし?」
「先生さ、そういう説教は他のガッコ―でやればw?」
「結局、どうにもできないくせに~ww」

田中は一瞬たじろいだが、深呼吸をして態勢を立て直す。

「いいか、みんな。校則があるのは、みんなを守るためだ。例えば――」

「じゃあさ!!」

かれんが遮るように声を上げる。

「このクラスに何人いるか知ってんの? みんな違う性格で、みんな違う考え方なわけ!それを1つのルールでって、そもそも意味わかんなくない?」

彼女の言葉に他の生徒たちが「そうそう!」と同調し始める。まるで教室全体が田中に反抗するための共犯関係で結ばれているようだった。

田中は内心焦りを覚えつつも、努めて冷静に問いかけた。

「確かに個性や自由は大事だ。でも、それが他の人の自由を奪ったり、秩序を壊したらどうなる?」

その言葉に、一瞬だけ教室が静かになった。だが、すぐにかれんが小さく鼻で笑った。

「ちつじょってなにw? あたしたちは楽しいし、それでいいじゃんw。」

田中は黙り込んでしまう。理屈で説得しようとすればするほど、生徒たちは壁を厚くしていく。
まだ赴任二日目。だが、このクラスに理屈や正論だけで挑むのは無謀だという現実を突きつけられた瞬間だった。

そして昼休みになり田中は逃げるように職員室に戻った。

彼は自席に深く腰を下ろしながら、小さく息を吐いた。すぐに成果を出すのは難しい。だが、それでも。

「諦めるのはまだ早い。やり方を変えれば、きっと――」

田中はもう一度、教室で見た生徒たちの顔を思い浮かべる。彼らの心に触れるには、まず何をすべきか。教頭のミッションがいかにハードであろうとも。

2-2  かれんの挑発

もうすぐ午後の授業が始まる。田中は「校則の意義」を半日かけて丁寧に説いたが、教室の空気が変わることは一切なく、誰1人として話を真剣に受け止めている様子はなかった。

「このままじゃ何も進展するわけないな……」

理屈では通じないと分かった以上、次は直接的に指導するしかない。彼は、生徒たちに直接制服の着こなしから指導することにした。

教室に入るなり、黒板に大きく「制服指導」と書き、生徒たちに告げた。

「午後からは、みんなの制服の着こなしについて話をします。校則を守る第一歩として、ここから始めるぞ。」

その瞬間、教室中にため息が広がり、机に突っ伏す生徒、スマホをいじり始める生徒が続出する。
既に夢の中という生徒もチラホラ…

「あームリムリ。あたしたち、こういう感じが好きなんでー。」
「てか、カワイイほうが大事っしょ?」

田中は生徒たちの態度を無視し、教室を回りながら具体的に指導を始めた。最初に目をつけたのは、いつもクラスの中心にいる林かれんだった。

「林、スカートが短すぎる。規定通りに戻せ。」

かれんは面倒くさそうに田中を見上げると、足を組み直して軽く鼻で笑った。

「えー、先生、なにw? 女子のスカートが気になんの? ちょっとキモくないww?」

彼女の挑発的な言葉に、周りの生徒たちが声を上げて笑い出した。

「ほんとだ!先生、スカートの丈測るとか変態じゃーん!」
「そんなんだから彼女できないんじゃないのーww?」

教室中が一気に田中を茶化すムードに変わる。田中は眉間にしわを寄せ、冷静さを保とうと努力したが、かれんがさらに煽るように言葉を続けた。

「てかさ、先生って、うちらのスカートとか見て何がしたいわけ? 男のロマンとかww?キモッww」

笑いが爆発する中、田中は一度深く息を吸い、ゆっくりと言い放った。

「林。人をバカにするのは簡単だ。でも、それで何かが変わるか?」

その言葉に、教室の笑い声が一瞬だけ止まった。田中は続けて言う。

「俺が言いたいのは、スカートの丈を変えることだけじゃない。ルールを守ることを通じて、君たち自身が変わることができるんだ。」

しかし、かれんはすぐにニヤリと笑いを浮かべた。

「はーい、先生の説教タイム終わり~。あたしらは戻さないし、文句あるならどうぞご自由に~ww。ほーらー?かれん自分で戻せないから先生の手で直してくださいよぉ~ww?」


田中の制服指導は完敗に終わった。
スカートの1ミリすら戻させることはできず、生徒たちの笑いのネタになるだけだった。


放課後、田中はまたも職員室で肩を落とし、机に突っ伏した。

「これが、教育ってやつなの…か……?」

しかし、諦めるわけにはいかない。教師として、自分ができることは何か。彼は次の策を考え始めた。これからも続く生徒たちとの戦いの中で、田中は教師として成長していくことを誓った。

#1(前回)
#3(次回)

(この物語はフィクションです。実在する名前及び団体とは一切関係ありません。)


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