鏡
懺悔しましょう。私があなたに向けた言刃を私に向けて。
向こうに居る貴方に送った言葉の先に居たのは紛れもない私でした。
それは私に言刃として刺さりました。
誰かの後ろ姿が見え、私は追いかけました。そこに居たのは鏡に映った私でした。私は鏡を割りました。その先には他者がいました。私はその人のもとへ向かいました。その先に居たのは鏡に映った私でした。何度も何度も誰かを追いかけ、鏡を割り、歩き続けました。身体を輝かせながら、歩きました。
ガラスがこすれて聞こえてくる音は、私が人へ渡した言刃でした。
「あなたのおかげで」「いつもありがとう」「頼りにしてるよ」「応援してるよ」「期待してるよ」
振りほどこうとすればするほど深く刺さるガラス。激しくなるガラスが擦れる音。
「ありがとう」
「ガラスを着てくれてありがとう」
「この気持ちを味わってくれてありがとう」
他者への善意は、私への悪意。
他者を捨象した他者への善意は、私への善意。
「大丈夫。ガラスを着たあなたは美しい。」