こども先生と「人を動かす」
こんなに多くのことを長いことかけて、しかも無償で教えてくれる先生もいないだろう。
僕の子供たちのことだ。
先日6歳になった次男はこんなことを教えてくれた。
「お仕事のコツはね、ずーっと続けることだよ」
どこで覚えたのか、はたまた思い付いたのか、保育園で先生が言っていたのかわからないが、最近繰り返しこんなことを教えてくれるようになった。
保育園に送ってお別れするときに、「お仕事がんばってね」のセリフと合わせて金言を頂けるので、こちらも気が引き締まる。
継続は力なり。6歳の子供でも分かっているということらしい。
大人でも分かっていも継続できないものだ。こうして息子にたまに諭されるので、ありがたい限り。
今年は父親になって10年目だ。
長男は9歳で、初めての育児を通してとてもたくさんのことを教えてくれた。
人を育てる、ということの難しさは分かっていたつもりでも、実体験として経験するとその難しさは、想像を圧倒的に越えていた。
僕は、育児によって一切自由のない生活に苛立ち、その怒りを長男にもぶつけていたことがある。遊んでばかりで言うことを聞かない息子に腹をたて、嫌な言葉を使ったこともある。
だが、結局それで何も改善することはなく、自分自身、一層ネガティブになる。罪悪感や親として情けないと言う思いもあったろう。
いつしか子供を「下」としてみていたことに気づき、対等に付き合うようになってからはそういった苛立ちも少なくなった。頭ごなしに命令するのではなく、怒りで制御することなく、「どうしたら楽しいのか」と言うことを伝えるだけで、子供たちは自発的にアクションを起こしてくれる。
人は怒りや命令では動かず、他人をコントロールすることはできないということ。毎日楽しく過ごすことの意義や、言葉の選択がいかに重要であるか。
子供たちは、そんな大切なことを長い時間をかけて、ゆっくりと、経験という最も確実な方法で教えてくれた。
それまで、自分の考えが正しいに決まっているとどこか意固地になっていたが、人の数だけ正解があり、その人がそのとき、その年齢の、その時期の、そのタイミングによって、最適解は千差万別違うのだと言うことを身をもって理解した。
子供時代のことを思い出し、もし自分が子供だったら、など想像すると当たり前の行動を子供達はしているのだ。子供たち相手のみならず、社会においても相手の言動に際し「自分も同じ立場だったらそうだったろう」と言う配慮することの重要性にも、育児を通してようやく気づくことができたのだ。
そんな自分の中の価値観を大きく変えてくれた子供たちにはとても感謝している。
D・カーネギーの著書「人を動かす」を読んでいるのが、衝撃を受けたことがある。まさに、この9年間で子供達が教えてくれたことが、なぞるように記されている。
同じことを思ったお父さんお母さんもいらっしゃるのではないだろうか?
・相手のすることに関心を寄せ、悪いとは思わず我が身のこととして理解せよ。
・存在の重要性を伝え、礼儀と笑顔で接するべし。
・命令はせず、注意は遠回しにせよ。
・穏やかに接し、美しい心情に呼びかけるよう演出するべし。
これらは子供たちが、僕に経験を持って教えてくれたことであり、本書はその答え合わせにすぎないのだ。
世界的な名著を記した人物と同じことを、身近でこんなにも親身に教えてくれる先生たちがいることに、なんて幸せなのだろうと、今日もその手をとる。
創作意欲の支えになります!