『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』私のプレゼンレベルを底上げしてくれた本の話
どうも。一般企業で人事の仕事をしているサラリーマンのうみんちゅです。
現在、メインのタスクの傍ら、社内の「プレゼン講座」を担当しております。以前行ったプレゼン講義の紹介記事がございますので、そちらも併せてご覧いただけますと幸いです。
さて今回は、私のプレゼンのレベルを底上げしてくれた『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』という本の紹介記事です。
本書は、世界的なプレゼンの名手である、アップルの創業者スティーブ・ジョブズ のプレゼンを解説した本です。ジョブズのプレゼンと聞くと、ハードルが高いイメージを持たれる方が多くいらっしゃると思います。そして残念ながらそのイメージ通り、彼のプレゼンを真似しようと思っても、なかなか出来るものではありません。しかし、本書を読み、そのエッセンスを享受し、そこから学ぶことで自分のプレゼンレベルが格段に向上します。
ただし所感として、本書はある程度場数を踏んだ方向けのプレゼンHow To本的な位置付けです。よって、プレゼンの機会が多くない方には少しイメージが付きにくい部分があるように感じたので、今回はプレゼンが苦手な方や初心者スピーカーを想定して記事を書きました。
もちろん上記の方に加え、今まで何となくでプレゼンをしてきた方々にもお読みいただけますと、お力添えができるかと存じます。
シンプル・イズ・ベスト
ジョブズのプレゼンの最大の特徴は「シンプル」ということです。
iPhoneユーザーの方はご自身の端末をご覧ください。他のスマートフォンと比べていかがでしょうか。徹底的に無駄なものを削ぎ落したデザインからも分かるように、「シンプル」ということは、プロダクトにも宿るジョブズの哲学そのものなのです。そんな「シンプルという哲学」は、ジョブズの死後、現在まで脈々と受け継がれています。それが如実に理解できるのが、やはりプロダクトのヘッドラインです。ヘッドラインとは、そのたった一言で製品を的確に表現する短い文章です。それでは具体的なイメージを持っていただくために、アップルの公式サイトを見てみましょう。
それぞれのプロダクトに印象的なヘッドラインが用意されており、プレゼンの中でも、こういったヘッドラインが使用されています。最近ですと、iPhone11の「すべてがある。パーフェクトなバランスで。」というヘッドラインが印象的でした。まさしくiPhone11の特徴を一言で的確に表現しています。ジョブズ自身の残したヘッドラインとしては、iPodの「1000曲をポケットに。」や「今日、アップルが電話を再発明します。」という初代iPhone発表時のヘッドラインが有名です。
では、百聞は一見に如かずということで、初代iPhone発表時のプレゼンを見てみましょう。皆様にご注目いただきたいのは、先ほど述べたヘッドライン。そしてプレゼンに使用されているスライドと、そのスライドに対するジョブズのアウトプットの量です。
いかがだったでしょうか。
まずはヘッドラインについて。ジョブズはプレゼン中に「電話を再発明する」というメッセージを何度も繰り返すことで、聴衆に対して印象づけを行っています。
次にスライドについて。誰が見ても分かるように、ジョブズの使用するスライドは非常にシンプルです。基本的に1つのスライドに伝えたいメッセージは1つ。よくやりがちな箇条書きなど以ての外です。文字はほぼ無く、そのほとんどが画像イメージで占められています。それらのスライドはジョブズの話を補助するように使用されています。よく私たちはPowerPointのビジュアルやらアニメーションやらにこだわり過ぎ、パワポありきのプレゼンになりがちです。このiPhone発表のプレゼンをみると、パワポ(厳密にはジョブズが使用しているのはkeynoteというツール)は、あくまで聴衆にプロダクトの良さを伝えるための「話の補助ツール」だということが分かります。
本書にも記載されている通り、まず重要なのは、プロダクトそのものに対する情熱(当たり前ですが、プロダクトの持つ機能を全て押さえておくことは必須で、自分もそのファンでなければなりません)です。それをどう伝えたら効果的なのかを白紙の紙に書き、プレゼンの流れを設計していきます。ですから間違っても、いきなりパワポの上に話す内容を入力し始めてはいけません。自分のプレゼンの中で、どのタイミングで、どんな画像イメージやヘッドラインを使用すれば、聴衆に内容を理解してもらえるかを考え、あくまで「伝え方」にこだわりましょう。そして、聴衆の立場で理解しやすいのは「シンプルなこと」ですから、そこを意識すると、話もパワポも自然とシンプルになるはずです。
練習こそ全て
記事の冒頭で、ジョブズのプレゼンを真似しようと思っても難しい、という話をしました。その最大の理由が、私たちとジョブズとの「圧倒的な準備量の差」です。本書によれば、ジョブズはプレゼンの準備に際し、数百時間を費やしたと書かれています。スライドの1枚1枚、言葉選び、間の取り方、小道具の使い方、服装、演出など、妥協を許さず、細部まで徹底的にこだわったそうです。
正直なところ、一般企業にお勤めのサラリーマンであれば、他の仕事もあるでしょうから、同時進行でプレゼンの準備に膨大な時間を費やすのは現実的ではないかと思います。ですから、私が提案するのは完全にジョブズの真似をするのではなく、限られた時間で、プレゼン準備の「どこにこだわるか」を精査した上、そこに徹底的に注力するというものです。
まず手をつけるべきは、「何をどう伝えるか」を決めることです。皆さんが自社のプロダクトを完全に理解しているという前提で、そのプロダクトの特徴やストロングポイントを白紙の紙に書き出してみます。書き出したら、ヘッドラインを決め、どのような方法で伝えるかを決めます。極論ですが、この段階で「パワポは不要」ってこともあり得ます。聴衆が一緒に体験が出来るようなプロダクトであれば、ストロングポイントを伝えるためには、実際に使用してもらうことが最高の方法だからです。例えば、香水をPRしたいなら文章や絵を使用するよりも、サンプルを配った方が手っ取り早いってことは、何となくご理解いただけるかと思います。
次に上記の方法で「伝え方」が決まったら、アウトラインを描きます。要するに、どういう話の流れ(順序)で伝えるかを考えます。ここで、初めてパワポを作ります。作ると言っても、最初に決めた「伝え方」の方針に基づいて、自分の言葉だけで伝えるよりも効果的な場合にのみ、その部分をパワポで作成していくという作業になります。
そして、ひたすら練習をします。ここに最も時間を割いてください。練習量は、プレゼン全体の結果を左右するほど重要な要素です。プロダクトに対する知識と情熱があり、アウトラインがしっかりとインプットされていれば、臨機応変な対応ができます。練習では、出来たら誰か(部下ではなく、上司か同僚が好ましい)に聞いてもらい、フィードバックを得て、それを再度プレゼンに反映させていくのが理想的です。繰り返しになりますが、プレゼン成功の有無はここに懸かっています。練習こそが全てです。
最後に、会場の確認をしてください。私個人の話で恐縮ですが、以前keynoteでスライドを準備していて、会場で使用できないアクシデントに見舞われたことがあります。この時は、上記のようにプレゼン準備の「練習」に時間を割いていたため、その場で臨機応変な対応ができました。しかし事前に電話一本入れれば済む話です。私と同じ轍を踏まないためにも事前の確認はマストです。
「3」という数字にこだわれ
私は本書を読んでから、とにかく「3」という数字にこだわるようになりました。プレゼンのロードマップはもちろん、会議のアジェンダは必ず3つ。noteの記事も3つのパラグラフを意識しています。
本書では「3」という数字について、「人間の頭で楽に思い出せるのは3項目程度」という研究成果について触れられています。研究成果に基づき、軍隊でもオペレーション内容やチーム編成に至るまで「3」という数字が浸透しているそうです。ジョブズもこの例に漏れず、「3」を意識してプレゼンをしています。前出のiPhoneのプレゼンでもそうですが、スタンフォード大学卒業式の「伝説のスピーチ」の際も、感動的な3つの話をしていました。
皆さんがプレゼンする際も、まずは「どんな話をするのか」という3つのロードマップを示し、伝えたいヘッドラインを明確にして繰り返すことで、聴衆の内容理解が進みます。
くどいですが、私がこの記事で皆さんにお伝えしたいことは3つで、①プレゼンはシンプルにやることがベストって話、②準備のうち「練習」に時間をかけましょうって話、③「3」という数字にこだわりましょうって話です。そして記事の題名にもあるように、この3点を心掛けていたら私のプレゼンのレベルが底上げされたので、是非みなさんも実践してみてくださいという話でした。
興味がある方は是非、本もお読みいただけますと、より理解が深まるかと思います。最後までご覧いただきましてありがとうござました。
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