見出し画像

チーム全員で繋ぐ「雷鳴のバトン」。轟け、TEAM雷電。

Mリーグ2024-25シーズンも、残り試合数があっという間に3分の1以下となり、「他チームとのポイント差はそんなに気にしていない」とはお決まりで皆口にはするものの、今シーズン、今の状況で嘘偽り無くその台詞を堂々と言えるのは現状トップの赤坂ドリブンズくらいであろう。

この記事を書いている2/5現在、2位のU-NEXTパイレーツから8位KADOKAWAサクラナイツまでの順位ポイント差が725.6である。
シーズン6位以上でセミファイナルシリーズ進出となるが、もし7位以下になると、「2年連続同一チームメンバーでセミファイナル進出できなかった場合は最低1名以上のメンバー入替を行わなければならない」というレギュレーションに抵触、該当チームは誰か一人以上の現行メンバーのクビを切らねばならない。

「シーズン優勝」の価値と、重いボーダーライン

個人的にではあるが、Mリーグでは「シーズン優勝の価値」が他のゲーム・スポーツに比べ著しく低いものになっていると感じる。
優勝することが「1シーズンを通して他チームとしのぎを削り、1位の座を守り抜いた栄誉」ではなく、単なる「次のステージへの通行許可証」になってしまってはいないだろうか。
シーズン優勝のチームには全く賞金等は付与されず、保有ポイントはステージが進むごとに半減し、あくまでその先の「セミファイナル、ファイナル」を勝ち抜いたチームにのみ、全ての栄誉が与えられる。

対して、ボーダーラインである”6位前後”に位置するチームにかかる重圧は極めて大きく、重い。
2年連続でボーダーを下回れば否応なくレギュレーションに抵触するし、初めてボーダーを下回ったとしても、翌シーズンには「今年敗退したら」の十字架を背負った状態で1シーズンを戦わざるを得なくなる。

今シーズン、各選手の不調や逆連対が続き、現状上位陣から大きく差を開けられての9位に位置しているのが、昨シーズンより新規参入したBEST X(ビースト テン)である。

シーズン開幕よりそのポイントは伸びず、どんどんと他チームに差を離されてしまい、現在-984.8ポイントの最下位に位置している。
ここ最近こそ、鈴木大介選手の大三元和了をきっかけに個人としては復調の気配を感じさせてはいるものの、やはり他のチームメイトのリズムが噛み合わず、トップを獲った次の試合で大きなラスとなるなど、エンジンがやっとかかるかと思いきやまたショートし、昨シーズンは7位でレギュラーシーズン敗退を喫していることから今期レギュレーションにも抵触しており、苦戦を強いられている。

今期、ここまで非常に苦しいシーズンとなっているビーストであるが、ファンからは「今シーズンのビーストよりも大きなマイナスを記録したTEAM雷電」について、よく話題に上ることがある。

そう、TEAM雷電が未だどのチームにも破られていないマイナスを記録した、あのシーズンである。

刻まれた、悪夢のシーズン

2022-23シーズンのTEAM雷電は、所属4選手がもれなく全員3桁のマイナスポイントを記録、チームのトータルポイントとしては-1256.1ポイント。
Mリーグが発足してから、今期を含めて7度のシーズンを数える中で、未だにそれを超えたチームのいない「記録」である。

いかにプレイヤーの実力が100%ではない、ある一定以上の「運」の要素がある麻雀というゲームだからといって、チームとして上記ポイントを記録したことは極めて「振り切れすぎた」結果であるといえよう。

筆者個人の考えではあるが、「プロ」と「アマ」の一番の違いは、「嫌でもそれをしなければならないか否か」だと思う。
麻雀をゲームとして楽しみ、自分の趣味としてプレーするのであれば、常に楽しい状態で臨むことができるだろう。
翻って「プロ」であるならば、どんなにコンディションが悪かろうが、「運が無い」と感じていようが、対局相手に嫌な人間がいようが、絶望的な状況であろうが、卓に向かわなければいけない。
それこそが、「素人でもプロ相手に勝てることもある」とされる麻雀の、プロとアマを分ける大きな境界線のひとつだと定義して良いだろう。

Mリーグの試合中継を配信しているABEMAでは、月額有料サービスの「ABEMAプレミアム」に加入することで、試合後インタビューに呼ばれなかった選手の裏話や、各チームの裏側を1シーズンの間密着したドキュメンタリーなどを観られるのだが、上記シーズン中の雷電に関しては、長い長いトンネルを果てしなく彷徨っているような、辛く、重く、苦しい雰囲気が漂っていた。

だが怪我の功名ともいうべきか、結果としてあのシーズンがあったからこそ、今のTEAM雷電があるのだと思う。

あのシーズン以降、雷電の選手たちの「麻雀」に対してのスタンスが、確固たるものに変わったと考えるのは筆者だけだろうか。

低く、強く、前を見据える

理不尽で、思い通りにいかず、良い手が入っても他家に上がられ、守ろうとすれば突破され、攻めようとすると崩される。
そんな、どうしようもない麻雀というゲームのいち側面に対して、彼らは驚くほど冷静に、低く、大きく、どっしりと構えた状態で臨んでいるのだ。

「プロが暗い顔で打っていたって、観ている人には何も感じてもらえない。我々は誰より楽しく麻雀を打つべきだ」とは、かつてKADOKAWAサクラナイツに所属したレジェンド、沢崎誠氏の弁であるが、今のTEAM雷電がどのチームよりも際立っているものとして、「麻雀に対する構え方」が一番強いことだと感じる。

順位だけで見ると気の抜けない所に位置しているし、今のポジションから少しでも崩れだすとボーダー争いの渦中に飲み込まれてしまう、その状況は確かにそうなのだが、それでも、こんな書き方をすると語弊があるかもしれないが、やはりTEAM雷電の麻雀は「楽しい」のだ。

勿論、ポイントの大小ではなく、あのシーズンを経験したからこその安定感と、無謀と無難の間、自信と謙虚の間、波乱と安定の間で絶妙なバランスを保てているように見受けられる。

ワクワクする”雷電らしさ”

例えば昨シーズンのU-NEXTパイレーツや、セミファイナル進出後のEX風林火山、そして今シーズンの赤坂ドリブンズのように、公式実況の日吉辰哉氏がよく口にする「風が吹いている」状態のチーム、選手を目にすることは珍しくない。
立直をかければ引きたい牌をツモり、2軒、3軒と立直があり引き合いになっても決して他家の当たり牌は掴まず、オーラスの僅かな点数勝負となっても躱してトップで終局する。

無論、雷電にだってそういう試合が無いとはいわないが、ペンチャン・カンチャンでの立直や、山に残り1・2枚の待ちなど、観ているこちらをハラハラさせてくれるような麻雀が、やはり雷電らしいと思う。

現に、直近の試合では「鳴かない」でお馴染み、圧倒的面前派の黒沢咲選手の効果的な副露を駆使した2/3(月)のトップ、そして、1/31(金)の本田朋広選手の西地獄単騎待ちのツモ切り立直、一発ツモでの8,100オールなど、観ていて思わず鳥肌がゾゾゾッと立ってしまうような、なんともドラマチックな麻雀を絶えず魅せてくれている。

「安定している」とは冗談でもいえないが、伸るか反るか、一か八か、そういう「出たとこ勝負」なところは、本来麻雀の楽しさそのものではないか。


1/31第2試合、見事な本田の8100オール

「変わる強さ」と「変わらない強さ」

Mリーグ発足以来、レギュレーション抵触による選手の入れ替えなどによりチームの選手が変わることは幾度もあり、途中チームメンバーが最大4人へと増枠したことに伴う選手の加入等を考慮しても、チーム発足時からメンバーの「入替」をすることなく現在まできているチームはTEAM雷電と、渋谷ABEMASの2チームのみである。

この2チームにはそれぞれ別々の強みがあるし、チームの選手やタイプ、キャラクターなどを見てもそれぞれが全く違う特徴をもつが、今シーズンよりセガサミーフェニックスに新加入となった竹内元太選手に代表されるような、ある種「変わる強さ」のようなものがあるならば、それとは対極の「変わらない強さ」があってもいいと思う。

面前高打点を基本としながらも、稀の副露で周囲の時間を止める黒沢咲。
積極的に局に参加し、ポイントゲッターを担う本田朋広。
今シーズンは粘り強く辛抱し、連対を続ける萩原聖人。
Mリーグ最年長選手となってなお、眼光衰えぬ卓上の暴君・瀬戸熊直樹。

当たり前のことかもしれないが、未来永劫この4人で、というのは無理である。
それでも、現行の4選手が各々の色を存分に出して戦い続けることで、後に続く者が出てきたとしても、そのどこかに「TEAM雷電らしさ」が残っていけばいいと感じる。

試合後、トップを獲った選手を楽屋で出迎えるチームメイトと、時にジャンプしながらのハイタッチ、時に大喜びで選手を抱きしめる高柳寛哉監督を見ていると、本心から「雷電の麻雀は、本当に面白い」と感じるし、あの「RMO」の中には、色々な人にとっての
色々な意味があるのだと感じられる。

ポイントの上下動が激しい印象のある来電だが、今シーズン、ここまではプラスマイナスどちらも100の中を行き来しており、本来のチームカラーと少し違った動きのようにも見受けられるが、それもひとつの「嵐の前の静けさ」なのではないだろうか。

今の雷電なら、この4人なら。
まだまだこれからも、更に面白い麻雀で我々ファンを魅了してくれるに違いないだろう。

雷雲は、すぐそこまで迫っている。



いいなと思ったら応援しよう!