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#21 宮田線~最後の夏・訪問記

 中学生の時、はじめてのマイカメラ・キヤノンEOS650を持って撮影に行った時に書いた記録が出てきたので、載せてみようと思います。中学生の時の文章なので稚拙ですが、敢えて、ほぼそのまま載せます。


 筑豊地方の鉄道が次々と消えていく中でついに宮田線も今年の末に廃止されることになった。廃止直前の宮田線とその沿線をたずねてみた。

 8月13日午前5時、タクシーで原田駅に着く。外はまだ薄暗い。早朝のため駅員はまだいなかったが、最近設置された自動券売機で筑前宮田までの800円区間の切符を買う。5時15分、基山方からDD51に牽かれた4両編成の列車が入ってきた。最後部の客車に乗り込む。2、3人の乗客を乗せた後、列車はゆっくりと動き始めた。次第に空が明るくなり5時57分飯塚着。一旦ホームを離れた後、3両の客車を増結するため、バックして1番ホームに入る。6時16分飯塚発。直方平野をしばらく走って6時36分、勝野に着く。

 勝野に着くと向かいの3番ホームに筑前宮田行きの143Dが待機していた。さっそく乗り込むが、日曜日のせいか、間もなく出発というのにだれも乗って来ない。結局、ぼくを含めて2人だけの乗客を乗せたまま、6時40分勝野発。4分後、磯光着。ここで乗客が降り、車内は僕一人になる。磯光を出て間もなく筑前宮田着。8分走っただけでもう終点だ。

 宮田駅到着後、駅周辺をカメラに収める。早朝のためか、駅前の店は、どこも閉まっていた。宮田線を走る列車を写そうと、線路沿いに歩く。場所を見つけて列車を待つ。なにしろ本数が少ないので、失敗は許されない。ところが、1本目2本目は良かったが、3本目を写そうとしたところでシャッターが降りない。30分待ち続けた列車が無残にも通過していく。どうしたことかと思ったら、フォーカスロックしていたつもりが、はずれてしまってAFフレームが空を向いてしまったらしい。結局また30分待たなければならなくなってしまった。4本目はなんとか無事撮影して、駅に帰ってくる。とにかく足ががくがくになってしまったため、石炭記念館方面へのバスの時間を見て、ジュースを飲みながら駅の待合室でしばらく休む。木造の趣のある待合室で気持ちが休まる。休憩後、写真を写そうと思い、駅員さん(かどうかはしらないが)に声をかけるが、その人の愛想が悪い。一応許可はしてくれたが、突然「そんなとこ写してどうすんの?そんなとこ写す人いないよ!」と言われてしまった。職員の愛想が悪いというのは国鉄時代の話かと思っていたら。

 駅を出て商店街を歩く。予想していたよりも活気のある街で、いろいろな店がならんで生活にはけっこう便利なようだ。そのうちの一軒のカメラ屋さんでフィルムを買う。駅前に戻り、チェーンの寿司店で300円のセットを買う。飲み物がなかったため、隣の雑貨屋に入ると、小さな子供が店の番をしていた。バス停のベンチで昼食を食べ始める。ところがこの寿司、わさびが大変に効いていて、ぱくりと口に入れると涙が飛び出してきそうだった。


◎筑前宮田

 筑前宮田駅は細い一本のレールに短いホームがひっついただけの小さな駅だ。宮田線のレールは往時を思わせる広大な草むらの中に消える。事務室には駅員らしい人がいるが、切符は扱っていない。駅前には小さな広場があり、そこから町役場まで商店街が伸びている。いろいろな店があるのだが近くに大きな百貨店があり、町の中心からもはずれているため、心配だ。

◎沿線を訪ねて

 駅前バス停のベンチで寿司を食べ終わると間もなくバスがやってきた。乗り込むとバスは駅横の踏切を渡って急な坂を登っていく。宮田の町並みが一望にできる。左手に大きな湖のような露天掘跡を眺めながらしばらく走って石炭記念館前下車。丘の上の団地の中に石炭記念館がある。廃鉱の人口減で整理統合された旧大之浦小学校舎にできたものだが、残念ながら盆休みだった。しかたなくバス停に戻ると大変な雨だ。11時半までバスは無い。簡単な雨よけしかないベンチでびしょ濡れになる。こやみになった間に近くのスーパーに逃げ込んで時間をつぶした。バス停に戻ると5分ほど遅れてバスが来る。

 バスは来たときの道を下って、宮田駅前を通り終点宮田町役場前に着く。降りようと思ったのだがあいにく小銭がなくもたもたしていると、運転手から「こら、何ばしとっとか、ほかんもんは行ってしもうたぞ。はよおりらんか!」と言われてしまった。

 町の中をかんに任せて歩くとJRバス停がある。案内図を見てみると福丸行きはここでよさそうである。本数も多い。ところがいくら待ってもバスは来ない。遅れているのだろうかと思って待っていたが次のバスの時間になっても来ない。どうしたことかと思っていたらJRバスらしきものがこちらに向かってきたのでほっとしたが、とんでもない。通過予定表にも書いていない全く行き先の違うバスなのである。これは困ったと思いあたりを見回してみると、少し離れた道をJRバスが走っているのが見えた。もしやと思い、その道を歩いてみるとバス停のポールのようなものが見えてくる。しかし今度はさびついているうえに通過予定表もない。少々不安だったがしばらく待っているとバスは来た。福丸行きだ。やっとバスに乗れた。

 福丸に着くとこんどは竹原古墳に向かって歩き出す。だいたいの方向はわかっていたのでてきとうに歩いて新幹線のガードをくぐると古墳らしい小高い丘があった。どうやらこれが竹原古墳らしいがどこから入っってよいのかわからないので近くの民家に聞いてみると親切に教えてくれた。

 新幹線の見える小高い丘の上に竹原古墳はあった。ところがなんとここも盆休みなのである。ここまで歩いて休みとはさんざんだ。しかたなく新幹線を撮影して、近くにあったバス停でバスを待つ。空はかんかんでりでさきほどの大雨がうそのようだ。バスで福丸へもどる。アイスクリームを食べてからきっぷを買う。磯光まで行きたかったがこの時間にはバスはないと言われたので宮田まで切符を買う。すぐバスがあったので乗り込む。

 宮田に着いたが、どうすればいいかわからないのでうろうろしているとなんと向かいに磯光方面へのバスが止まっているのである。とっさに乗り込む。間もなくバスは走り始めた。

 磯光でバスを降りるが、駅がどこにあるのかわからない。近くの商店に駅への道順を聞く。その方向に歩きだすと、なにか鉄砲のような音が聞こえてくる。なにごとだろうか。


◎磯光

 磯光駅は本当に小さな駅だったが、往時は相当な駅だったらしく、空き地が広がっている。ホームの反対側から下りの列車を撮る。駅舎に戻ると2~3人が待っていた。さっき撮影した列車が上り列車となって入ってくる。乗り込むが乗客は少ない。間もなく勝野に着く。宮田線の旅は終わった。


平成元年8月13日の記録より






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