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87cmの世界線

オーバーハング

2022年1月、分かってはいた事だがついに防衛ラインを突破されていたことが健康診断によって裏打ちされた。
上着を引っ張り上げ、お腹まわりを測った数字は85cmを2cmオーバーしたのだ。
自分はウエスト79cmと82cm の2サイズの作業着を仕事で着用している。2021年夏まではちょっとキツイなくらいの感じで79cmでも着用できていたのだが、気温が下がり重ね着枚数が増えたとこで、フロントホックがパンパンで引きちぎれそうな勢いに確変していた。いや、夏服は薄いアンダーシャツ1枚だけをズボンインしていただけだし、そのアンダーシャツですら、お腹周りの締め付けによる摩擦で破れていた上に、締め付けによってお腹周りはオーバーハングを形成していたのだから、当然の結果なのだ。

2021年のライフログ

2021年、突然前触れもなく職場の移動命令が言い渡され、2月より自転車(たまに徒歩)通勤から車通勤に変わった。
因みに自分は自家用車を所有していなかったため、会社から仕事用の軽トラと自宅近くの駐車場をあてがわれた。燃料を含めて経費は全て会社持ちだ。いいじゃないのと思われる人もいるかもしれないが、正直に申し上げて迷惑でしかない。
そもそも車の運転をするのはあまり好きではない。なので車を所有する文化とおさらばして、徒歩通勤エリアで生活サイクルを回していたところに、通勤に少なくとも約30分は車を運転しなければならなくなったのだ。
前の職場は徒歩で約30分、自転車を使えば15分以内で職場に通える距離だ。
要するに運転席に30分間座りっぱなしか、15〜30分運動するかの差が通勤回数分生まれたわけだ。

さてここでiphoneアプリのヘルスケアより、2019〜2021を比べてみたい

ウォーキング+ランニングの距離1日平均
2019年 7.2km
2020年 5.6km
2021年 4.4km
歩数1日平均
2019年 9992歩
2020年 7805歩
2021年 6429歩

2020年4月から自転車を所有したので、その時期から歩数は少なくなっていて、2021年はさらに少なくなっている。明らかに車通勤による減少がみられるのは言うまでもないであろう。
さらにここで、ランニングアプリの年間データも比べてみよう。

2019年
距離 257.8km
タイム 27時間11分
ランニング 34回
2020年
距離 439.2km
タイム 44時間26分
ランニング 56回
2021年
距離 222.8km
タイム 23時間21分
ランニング27回

2019年4月からランニングを始めたので、2019年度が少ないのは分かるのだが、2021年度はその2019年度より少ない上に、2020年度と比べると約半分の運動量というのはどうしたものだろうか。
なぜ、走らなくなったのだろうか。

不快という刺激

ここで車と自転車(徒歩も含む)の肉体への影響の違いを明確にしてみる。
車は軽トラという狭い空間なのでエアコンによる室温管理により、一年通して快適な空間を維持できる。対して自転車や徒歩は常に常温での体感となることは言うまでもない事だろう。
しかし、自分はこの違いは重要ではないかと感じているのだ。それは、短時間であれ毎日熱い寒いといった不快な刺激を体に与えることは、自分にとっては重要なことだったのではないかと思えるからだ。
これは不快であろうが、刺激を与えることが切り替えスイッチとなり、体が活性化されるようなイメージと言ってもいいかもしれない。この毎日の刺激によって、肉体から精神にスイッチを入れていたのが2020年までのような気がするのだ。
対して車移動は体感として刺激が少なく変化が少ないと言い換える事が出来る。ということはメリハリや切り替えといったスイッチが入りづらくなり、生活のリズムがフラットになっているのだ。

休日もその延長戦で何もしたくなくなり、YoutubeやNetflixなどのコンテンツ摂取中心の、座っているか横になっているかの生活の上に、朝から素面の時が少なくなっていた。
2020年までは早朝からランニングモードに切り替わり、気持ちいい時間を楽しんでいた。
それ以前でもシーズン中は川を釣り歩いていたし、釣りをやめてからもファッションを楽しむようになり、休日になればセレクトショップをハシゴしていた。
そう考えるといずれも肉体的な刺激である季節を全身で感じて楽しんでいたことになる。
シーズンや禁漁のある釣りは言うまでもないであろうが、ファッションも季節を先取りする美学がある。8月になればもう夏物を着たくない衝動に駆られ、1月になれば冬物を着ていることが犯罪のような気分になったりしていたのだ。おまけにファッションは太ってしまうと服が着れなくなってしまうため肉体の変化に過敏になり、常に同じ体型の維持や痩せたい刺激を季節感と共にまとっているのだ。
そう考えるとどうも肉体的な刺激の欠乏がこのような状態を招いているようなのである。
恐らくこのようなことから今の精神状態が醸成され、それが2021年の年間データに現れ、なおかつ87cmの世界に突入していくことになった要因の一つであることは間違いないだろう。

87cmを巡って

さて2021年のライフログからも明らかに運動が不足していることは、誰が見ても明らかだ。そこで休日に釣りでも再開してみようと考えた。とはいえ以前みたいにドップリとは浸かりたくないので、手軽にライトな感じでできるものがいい。以前所有していた道具は残念なことにほぼ全てネットで売り捌いてしまっているので、簡単に買い揃えれて、大掛かりな着替えをしなくていい感じの釣りがベストだ。
そんな釣りといえばバス釣りだ。そういえば実家に数々の大物しとめた銘竿を兄が帰省した際に使えるようにと保管していたのを思い出した。早速ものを改めたが埃を被っているだけで全然問題ない。自宅に持ち帰り、吹き上げなければとメンテ用品がどこかにあったはずだと探すと、使いかけのクリーニング剤を発見。早速吹き上げる。この一連の動作に無駄がない。体が自然と動く。
さて取り急ぎあとはリールが必要だなと釣りメーカーのホームページに侵入してみると、なんと今年某メーカーの最高機種がリニューアルされている。それもかなり革新的なアップデートがされている。
大変な事態が起きてしまった。手軽にライトな感じのコンセプトを一瞬で破壊されてしまうほどの猛烈なカウンターパンチを食らってしまった。これはもうそんな軟弱なコンセプトを掲げている場合ではない。自分は今すぐこのかなり高額なリールを手に入れなければならないという衝動に駆られてしまったのだ。
そうだ、車もあるから今すぐ釣具屋さんに予約しに行くこともできるし、経費は全て会社持ちだからガソリン代も気にせず釣りに行けるじゃないか。
さあ、もう87cmのことは忘れよう。どうせなら87cmの大魚に出会う旅に出ようではないか。

そんな妄想にふけりつつ、おつまみをボリボリ食い、お腹をボリボリ掻き、ウィスキーをジャブジャブ飲みながらYoutubeの釣り動画を見ている。

2022年もまだ87cmの世界線真っ只中だ。

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