びっくりのインド ● 16 ● 驚愕のクリーニング屋
前回の記事 びっくりのインド ● 15 ● 極楽の気候と洗濯 では、毎日足で洗濯をする話しをした。
今回は初めてインドのクリーニング屋さんに ちょっと大切にしたいビジネスシャツ を持っていったときのことだ。
海外出張や大切な会議の時に着る 気合の入るシャツ をクリーニングに出した。
2 〜 3 日で仕上がると聞いていたのに出来ていなかったのは、想像できる範囲のこと。
それまでに何度かインドの会社とやりとりをすることがあって、彼らが自信を持って 「納期までに仕上げる」 と断言して、日本のスタッフが要求した通りのものが納期に仕上がったことは、あまりない。
だから、クリーニング屋のお兄さんが 2 〜 3 日と言うなら 1 週間はかかると思っていた。
ただ、待っているだけではいつまでも仕上がらない感じもあった。
そのお兄さんは英語がいまひとつ上手に話せないのでインド人の同僚についてきてもらい 「早く仕上げろ」 とヒンディーで言ってもらった。
その1週間後、ビジネスシャツを受け取って家に持って帰って広げた時、「え? こんなシャツだったっけ?」 と思うほど違うものに見えた。
え!!
クリーニングに出したときよりも…
汚れて… る?
明らかに 黄ばんでいた。
それだけではない!
汚れの首輪 ができている?
良質の生地で肌ざわりもよい私のシャツは、明らかに、着たおされている。
あまりにも突拍子もないことで、怒りを超え、笑いも超え、まるで朝靄に包まれた湖のように心がしーんとした。
クリーニング代のことも、自分のシャツを誰か (あるいは複数の人) が着たことも、「仕上がりました」 と何事もなかったようにシャツを私に手渡した店のお兄さんの顔も、まるで他の誰かが経験したことを再現ビデオで見ているかのように感じた。
きれいになることを期待して
クリーニングに出したシャツが
いま劣化した状態にある
という事実が目の前にある。
私はそれを無感情に眺めている。
このときの心持ちをずっと維持できたら、いまごろは徳の高いお坊さんになれていたかもしれない。
時として海外では、良いことも悪いことも想像を超えて、日本では経験できないことが起こる。
それが命に係わることでないなら、経験として蓄積されるから善しとしよう。
だが、このクリーニング屋の一件は、さすが びっくりのインド、ここまでとは! である。
そのシャツは、翌日の朝に他の洗濯物と一緒に足で踏んで洗った。
汚れの首輪は特に念入りに石鹸を擦り込んで歯ブラシでこすった。
ちょっと大切にしたかったビジネスシャツもTシャツも、足で踏んでしまえば、どちらも同じ。
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