偏りを生じさせるものⅡ
「バイアス」とは「印加電圧」のことです。・・という回答は私の専門範囲から導かれる答えなのですが、ここ数年は別の「バイアス」の本ばかり読んでいたため、その回答がスッと出てこなくなっているようで。さて、本日はこちらの話題です。
1980年代から米国で盛んに研究されるようになった「無意識のバイアス」ですが、社会に注目されるようになったのは2010年代。Googleや facebookなどのIT企業が、従業員の人種や性別などの構成比を明らかにし、彼らの組織が「多様性の高い組織という理想には程遠い状態だ!」と危機感を表し、その背景に「無意識のバイアス」の問題があることを示唆したのがきっかけだそうです。
「バイアス」とは端的に言えば、人が経験則によって持つものの見方・考え方の"偏り"のこと。バイアスに基づくスピーディな意思決定はたいてい間違っていないし、日常生活を円滑に進めるうえでは欠かせないもの。しかし、時に過去の経験に基づく推論が正しい意思決定を邪魔することがある。そして、それらの多くは本人が認識しないまま、つまり"無意識"の状態で発動する。バイアスというものの問題は"ここ"にある訳です。
なお「無意識のバイアス(アンコンシャス・バイアス)」とは"無意識の偏ったものの見方"のこと。英語のUnconscious(無意識の)とBias(バイアス・偏見・先入観)という言葉を組み合わせてできた造語。自分でも気づかないうちに持っていた無意識の思い込みや偏見のことを指し、英語ではimplicit bias(暗黙のバイアス)とも言います。
・・しかし、ここで厄介なのが、アンコンシャス・バイアスの定義に"先入観"や"思い込み"という言葉が含まれてしまっていること。本来の「バイアス」は"偏り"であり、こうした意味は含まれない。認知心理学の専門家の書籍には「メンタルモデル」と「認知バイアス」は分けて記載されているのに対し「アンコンシャス・バイアス」を扱う専門家の書籍には、前の2つは出てこない。まあ、そもそも認知心理学の専門家は「アンコンシャス・バイアス」という言葉を用いていないんですが、巷のウェブサイトで見かける記事では「認知バイアス」と「アンコンシャス・バイアス」を混同したり、両者の関係を勝手に定義するものが多い。このことに、強い違和感を感じるのは私だけでしょうか?
[2022.12.17投稿]いいね:19
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