何も起こらなかった未来
いつも通り、数字に関することは詳しい方にお任せし、今日は「未然防止」についてコメントします。
1.(2020年8月のコメントを再掲)
問題が起きたとき、ズバッと解決した火消しに注目が集まりますが、本当に行うべきなのは未然防止、問題を起こさないことです。
しかし、未然防止がうまく行った場合、想定した最悪のケースは回避され、何も起こらない。何か起こった未来に遭遇した後、過去にタイムスリップして何も起こらない未来に変えるドラマは多くありますが、現実には時間は巻き戻りません。
未然防止の専門家の取り組みがうまくいけばいくほど、結果で評価する人から見れば、むしろ「何も起こらなかったではないか」と批判を受けることになってしまいます。評価されにくい、損な役回りだなと感じます。
今の波が落ち着いたとして、また次の波の備えは必要になります。そのとき、感染症拡大を未然防止する専門家(感染症の専門家、火消しとは異なります)の声に耳を傾ける必要はあると思っています。
2.
「テセウスの船」というドラマがありました。親父が毒殺事件の犯人として逮捕され、家族がめちゃくちゃになった現在を変えるために、何度も過去に戻って未来を変える。過去に戻った主人公は死んでしまうが、最後には「何も起こらなかった未来」が訪れ、家族団欒のシーンで終わる。
つまり、結局は何も起こらなかったドラマなんですよね。毎週繰り広げられた予想外の展開は起こらず、未来を変えた主人公も、誰からも感謝されない。平凡な家族団欒の物語。予想外だったのは、大人になったお兄さんの配役くらいでしょうか。
未然防止の専門家がもたらしたいのは「何も起こらなかった未来」です。日本では何も起こらなかったSARSの解決に、国際機関の立場で尽力された専門家も、当時日本では「何も起こらなかった」ので評価されていない。まあ、今回は起きてしまいましたが。
さて、新型コロナ対策の専門家は誰なのでしょうか。
ニュースに一喜一憂している私達でも、不満の声を漏らす街の人でも、野次を飛ばす野党でも、一般論をコメントするテレビの解説者でもないですよね。今一度、考えて欲しいです。
そして、ニュースが伝えるメディアの解釈ではなく、今一度、専門家が発する一次情報を見て欲しいです。
[2021.04.24投稿]いいね:27