妄想:モスクワ勢力もNATO勢力も

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緩衝地帯を欲している。だから、NATOは直接的な関与を避けている。「協力はする」という体である。ロシアはどうか。こちらもモスクワ勢力を温存できる緩衝地帯が必要で、隣国とその先の国々の傀儡づくりに汗を流す。

悲劇であるのは緩衝地帯とされた国々だ。自主独立はロシア・NATO双方から認めてもらえない。「『どちらかの親政権』に政治が移り変わっても、『我々に直接的な影響のある国』になってはならない」ということだ。緩衝地帯はその時々の安全保障状態によって政権が変わり支援する側もロシアであったNATO諸国であったりする。

その都度、ロシア国境が少しづつ伸びてくる。ある程度緩衝地帯1国分の領土まで広がったら、その国はロシアの自治領として取り込まれるだろう。その自治領も民衆の動きによって独立国家となったりもする。その際はNATO影響下に置かれるが、NATOの直接関与はない。

こうして、アメーバーのようにロシア領土は動く。NATO影響領域も動く。その都度、多くの死傷が出る。「なんのために?」と言いたくなるが、軍事大国に挟まれた国々の宿命とあきらめざるを得ない。

緩衝地帯は軍事大国が生きるために作られる。そこに人権は存在しない。

米国が米国である理由は太平洋・大西洋とカナダ・中南米が緩衝地帯の役割を果たしているからだ。近代の直接的な攻撃は2001年の同時多発テロ以外に見当たらない。それほどまでに堅牢であるということだ。キューバ危機も過ぎ去った。

軍事大国同士が陸続きであればどうあっても緩衝地帯が必要となる。それが、現在の東ヨーロッパの現状であろう。

さて、日本はどうか。中国とロシアと米国の狭間に合って、自主独立を果たしていると確信しているが、「米国の核の傘」が閉じればどうなるか。台湾が緩衝地帯として中国傘下に入れば、土砂降りの中で日本はどのような行動を示せばいいか。

自主独立を維持するために何をすればいいのか。ウクライナから学ぶことは多々ある。また、東ヨーロッパの時々の立ち位置を研究することは、これからの日本を堅牢なものにすることに寄与する。

緩衝地帯とは何か。今一度、真摯に学ぶべきである。

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#日経COMEMO #NIKKEI

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