終わりなき人材争奪戦。日本的経営はどこにいった!?
米国トヨタで働いていたアメリカ人が「日本の会社は凄いよ。上司が何から何まで教えてくれる。研修も充実している。何でそんなに教えてくれるのか。」と聞いてきました。
アメリカではビジネススクールで学び、企業はその学びを活用し成果を出すところとして、ある程度インプットとアウトプットの分離が行われています。さて、その質問に端を発し、私と彼とでペアを組み「日本的経営」についてまとめ、クラスでプレゼンをしました。日本の高度成長期を支えた組織モデルについて、クラスメートたちが興味津々だった様子を鮮明に覚えています。
日本は年功序列、終身雇用、企業別組合という三種の神器の元、共同体組織を創り上げてきました。三種の神器を成り立たせるためには、企業内教育および内部人材の登用が必須であり、会社が求める人材像に向け、社内でステップアップしていく仕組みが担保されていることが重要になります。しかし、昨今そのような「サラリーマンすごろく」は崩れはじめてきているようです。
紙面を賑わす「AI人材争奪戦」という言葉。それ以前ですと、データサイエンティストであり、プログラマーであり、SEであり、それまでになかったような職種がどんどん出てきては、そのたびに争奪戦が繰り広げられます。
事業の連続性が前提とならない以上、求める人材も非連続になるのは必然だと思います。日本的経営の代名詞であるトヨタがAI人材の大量獲得のために六本木を攻め、パナソニックがAIのスタートアップをアクハイヤーするのですから、多くの日本企業が外部人材獲得に躍起になるのも無理はありません。
とはいえ、新しいニーズや技術革新が起こるたびに慌てて人材獲得に走るということでは、あらゆる新興分野において国際競争で負けてしまいます。既にプログラマーもデータサイエンティストもAI人材もアメリカや中国に遅れを取っています。本来、「長期的な視野に立った人間本位の経営手法」は日本的経営の根幹になるものです。少ないパイの中で人材獲得競争をするのではなく、産学が連携し、長期視野に立った人材育成に今こそ立ち返る必要があるのではないでしょうか。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27695290V00C18A3000000/