「ウォルマートvsアマゾン」の筋書きをもっと楽しむ方法
アマゾンとウォルマートの闘いというのは、まさに小売りの新旧王者対決という点で、ビジネスドラマなら最高に盛り上がるシナリオだと思います。ネットと店舗の融合が避けられない中、アマゾンはホールフーズ・マーケットを買収し、無人コンビニをはじめる一方、ウォルマート傘下の西友は楽天と提携し、ネットスーパーをはじめるという展開になっています。
一見すると、Eコマース業者は店舗との融合を、店舗型小売業者はネットとの融合を図りながら、その業界地図を塗り替えていこうという構図に見えます。
しかし、実際には「フロービジネス」vs「ストックビジネス」という視点の方が今後のドラマを読み解く上で分かりやすいように思います。
米国の市場調査会社CIRP(コンシューマー・インテリジェンス・リサーチ・パートナーズ)の調査によると、アマゾンのPrime会員は既に米国で8500万人に到達しており、既に顧客の3分の2が有料会員になっているようです。このビジネスモデルにより、顧客の囲い込みだけでなく、年間の購入金額(LTV)を引き上げ、かつサブスクリプションモデルによる安定収益にもつながっています。
一方、ウォルマートにおけるeコマースのコンセプトはEDLP(エブリデイ・ロー・プライス)という店舗における成功パターンのネット版です。一時期はアマゾンの手法に対抗して、「シッピングパス」という年会費49ドルのウォルマート版アマゾン・プライムを展開したものの、廃止しました。一つひとつの商品コストについて、配送コストも含め極限まで切り詰め、透明化する方向性に舵を切っています。
配送料無料にはじまり、動画配信、音楽、ラジオとその提供サービスを拡充しながら、サブスクリプションモデルによる顧客囲い込みを盤石なものにしていくアマゾンに対し、店舗での勝ちパターンをEコマース化するウォルマートというコントラストがドラマの筋書きになるのではないでしょうか。
「Eコマースの覇者」vs「店舗リテールの王者」の小売業における覇権争いという見方ではなく、「ストックビジネス」vs「フロービジネス」という根本的なビジネスモデルの違いで捉えると、このビジネスドラマも一層楽しめるのではないでしょうか。