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住宅業界における不都合な真実

2017年の新設住宅着工戸数が発表されました。昨年対比0.3%減の96万4641戸ということで3年ぶりの減少となりました。国土交通省の発表では、「低金利の環境が長く続いており、住宅購入を急がない人が増えている」とのことです。本当に住宅ローン金利の影響なのでしょうか。過去15年間の住宅着工数と住宅ローン金利の推移を調べてみました。

© リブ・コンサルティング

相関係数は0.46ですので、住宅ローン金利が多少なりとも新設住宅着工数に影響を与えているのは事実だと思います。

銀行マネーが流れて不動産が過熱し、低金利によって買い手の住宅購入を下支えするという、ある意味では銀行の一人芝居のようなトレンドはたしかに存在しています。一方でそれはあくまでもカンフル剤のようなもので短期トレンドには影響ありますが、中長期のトレンドとは分けて考えなければいけません。実際のグラフでも、リーマンショック以降は金利が一気にダウントレンドに向かったもののリーマンショック以前の着工数には回復せず、業界関係者の中でも「100万戸時代の再来はない」というのが一般的な見方です。

住宅業界の着工数の中長期トレンドは、よく知られているように、世帯数推移と持ち家比率が一般的な変数です。分母としての世帯数の伸びと、転換率としての持ち家比率という考え方になり、掛け合わせると分子の持ち家数(増分数)が見えてきます。

すでに日本の人口は減少がはじまっているものの、世帯数についてはオリンピックの開催される2020年を境にピークアウトを迎えると言われています。持ち家比率については、全国平均でみると過去50年間ずっと60%前後を推移し、そのギャップは3ポイント以内に抑えられており、今後も大きな変化は期待できません。中長期における新設住宅着工数のダウントレンドは自明の理であり、野村総合研究所の予測では、「2030年度は55万戸になる」と予測されています。

一方、足元では新築主体のビジネスモデルは変えられず、カンフル剤も手伝って、地方を中心に空き家が増えていくというのが実情です。全国に820万戸強の空き家がありながら、現在もまだ空き家の数は順調に増え続けています。

国としては、「中古住宅市場」「リフォーム市場」を2025年までに倍増する方策を掲げています。2018年も4月からのインスペクション説明義務化にはじまり、幾つかの具体的な政策の実行がされるものの、いざ実現となると課題は山積みです。

それらの課題がもし解決されたとしても、現在のような不動産融資需要が続く限り、当面は大きな変化が期待できないと思います。さはさりながら、まずは今年4月1日施行のインスペクション説明義務化の動向に注目しましょう。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO26373160R30C18A1EE8000/

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO26373160R30C18A1EE8000/

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