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【序章公開中】モンスター組織:リブの組織崩壊からの変革ストーリー

昨年の夏に出版した「モンスター組織」が約1年の時を経て、序章を公開することになりました。

モンスター組織は、8社のリアル組織変革ケースをまとめているものなのですが、序章はモンスター組織を執筆するきっかけとなったリブ・コンサルティング自体の組織崩壊からの変革ストーリーの一端に触れています。

最近、おかげさまでリブの組織づくりについて色々なところで聞かれることが増えてきました。

openworkの総合ランキングで3位だったり、LMI社のベストモチベーションカンパニーアワードであったり、GPTW社の「働きがいのある会社ランキング」で、リブの人事組織づくりの噂は少しずつ広がっているようです。(社内はわりとそういうのには無自覚なのですが...)

私は人事担当役員として採用にかかわっていますが、明らかに新卒採用においてもキャリア採用においても、その応募者数が大きく増えています。

キャリア採用の応募者数は、60人/月から300人/月と5倍になりました。新卒採用は3月から22年卒のインターン応募がはじまっているのですが、既に4,000人を超えるエントリーをいただいております。

しかし、この序章で書かれているように、3年前は離職率28%で翌期のマネージャー候補者が0人という最悪の状況でした。

そこからリブ・コンサルティングはどのように考えて、いかにして復活していったのか、、、その一端にぜひ触れていただければと思います。(興味があれば書籍の方もぜひご購入の上、感想をお聞かせください(^^)/)

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組織崩壊前夜

2019年3月5日、リンクアンドモチベーション社が主催する「ベストモチベーションカンパニーアワード(組織改善ツール「モチベーションクラウド」による組織スコア上位企業の表彰)」の表彰式において、弊社代表の関が登壇している頃、私たちはほっと胸を撫で下ろしていた。

今年のGPTW社「働きがいのある会社ランキング」でもベストカンパニーに選出さ れ、openworkのスコアでも業界トップ水準を維持している。

年初の全社会議では、デ ィレクターとマネージャー合わせた昇格者が、「9人」という今までの水準では考えられない ほどの人数が発表され、大いに盛り上がった。

新卒採用は今まで5名前後にとどまっていたが、20年卒の新卒採用は例年水準の3倍となる15人の入社が予定されている。まだ道半ばとはいえ、この2年間の組織変革の道のりにたしかな手ごたえを感じていた。

今からちょうど2年前、リブ・コンサルティングは組織崩壊前夜にあった。当時の人事部長の口から退職の一言が出てきたとき、代表の関と私は天を仰いだ。

まさか半年で辞めるとは……」その人事部長は、様々な企業で人事部長を歴任してきた人事のスペシャリストで、半年前に三顧の礼で迎え入れた矢先のことだった。

創業から5年、中堅・中小・ベンチャー企業向けのコンサルティングが時代のニーズとマッチし、会社は急成長の一途を辿り、社員数は一気に100名まで膨れ上がった。

このころから少しずつ変調を感じながらも、普段からクライアントに話している「100名の壁」という現実を受け入れることはできなかった。

創業当時から、組織成長への備えは行っていたはずだった。創業時から明確なミッションやビジョンを掲げ、1期目から新卒採用を行い、2期目からはミッション・ビジョン・バリューのプロジェクトを推進していた。

100名の壁はたしかにそこにあったのだが、社員が辞めても、「彼は元々うちの会社とはフィットしていなかったから」と認めることをせず、採用に苦戦しても「コンサル業界はどこも人手不足だから」と、どこか上の空だった。

しかし、嫌でも自覚をせざるを得なくなる出来事が次々と舞い込んでくる。幹部の離職、新卒社員の伸び悩み、OJT教育の形骸化。ベンチャー企業の中では圧倒的に組織領域に力を入れてきた会社と自負していたにもかかわらず、離職率は28パーセントと異常値をたたき出した。

創業当初から大切にしてきた新卒採用の是非が真剣に議論されるようになり、創業から新卒採用の責任者を担ってきた中核メンバーからも退職の相談をされる。

2016年10月の役員会で、翌年のマネージャー候補を当時の役員陣でホワイトボードに書き出そうとしたが、一人、二人と書いたところでペンが止まり、沈黙が流れた。

何とかしないと会社がまわらない……」徐々に募る焦燥感に出した答えが、「人事のプロフェッショナル」に入社してもらおうということだった。

控え目に言っても「個性的」である自社の人事組織を、外部の力を借りながら一気に変えようとしたのだが、半年で暗礁に乗り上げることになる。

「自分たちの力で何とかするしかない……」担当役員としてバトンを引き受けたのは私だった。火中の栗を拾う形ではあったが、逆にこれ以上悪くなることはないだろうと高をくくっていた。そして、「絶対にいい組織にする」という覚悟を決めた。

会社は非連続成長の最中にあり、事業戦略と組織戦略がハレーションを起こしていた。ひずみが随所に見られ、一つを動かすと、一つが崩れるという、バランスゲームの「ジェンガ」のような状態だった。

本書のタイトル「モンスター組織」は、得体の知れない大きな存在の前に立ち尽くしていた、当時の私の心境を一言で表したものである。

人事部は刷新され、組織に対する危機意識の高いメンバーたちが配属された。新たな事業戦略に合わせて、それまでの人事組織戦略を全て見直していった。

「待っていても組織が崩れるのなら、むしろ意志を持って変化をさせよう」ということで、一気に組織変革に舵を切ることとなる。

組織に甘えや馴れ合いが生まれ、言い訳や愚痴が増えていた組織風土の中で、「勝つためのプロフェッショナル集団」という組織コンセプトを掲げ、挑戦心や主体者意識を促すような仕組みを構築していった。

採用制度、評価制度、教育制度といった目に見える改革を一気に推進していき、新しい組織の骨格ができあがっていった。

ここまで読まれて、本書はリブ・コンサルティングのサクセスストーリーがつらつらと書かれたものと思われたかもしれないが、自慢話がしたいわけでも自社PRをしたいわけでもまったくない。

自社の組織変革の過程で気づいた3つのことが本書執筆の理由である。

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犯人捜しは不毛である

一つ目は、「犯人捜しは不毛である」ということ。組織が悪くなってくると、その要因を様々なところに向けたがる。その矢印は往々にして、特定の「人」や「グループ」に対するものである。

例えば、部下たちはマネージャーたちの指導力のなさや人望のなさを嘆き、マネージャーたちは部下たちの意識や能力の低さを問題視する。開発部門は営業部門の「御用聞き営業」に苛立ちを覚え、営業部門は開発部門の「融通のなさ」に呆れ返る。

うまくいかない理由を誰かに押し付けて、まるで鬼の首を取ったようにその対象を批判する。これが助長されていくと、組織はどんどん悪くなる。

私も当初、社内の批評家たちから様々な人間模様を聞かせてもらった。そのドラマは実に精巧で心を動かすものだった。が、それでも私の出した結論は「誰も悪くない」である。組織変革の大前提は、「誰も悪くない」であり、組織課題に戦犯はいないのである。

組織課題の原因は「人」や「集団」ではなく、その組織メカニズムによる認知のひずみである。見方を変えると、被害者だと思っていた人が実は加害者だったり、加害者だと思っていた人が実は被害者だったりする。

実際は社内に敵はいないのだが、意識の中で「組織」という名のモンスターは勝手に自己増殖されていく。モンスター化した組織を正常化する唯一の方法は、組織のメカニズムを正していくことである。

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制度(ハード)で会社は変わらない

二つ目は、「制度(ハード)で会社は変わらない」ということ。組織のメカニズムは、組織制度だけでなく組織心理(ソフト)に根差したものであるということ。

制度やツールは具体的で分かりやすい一方、組織心理は組織における安全性や信頼性といった目に見えづらいものである。従って組織変革はとかくハード面が強調されてしまうが、実際はその表面的な制度の下に根を張っている社員の心理状況の方が重要である。

例えば評価制度をよくしようと変えたとしても、組織の信頼関係ができていなければ「これは賃下げではないか」「ローパフォーマーを排除しようとしているのではないか」とむしろ悪循環になる。

自社のストーリーに戻るが、この2年間で人事諸制度を変えていったが、今振り返ってみても制度によって本質的に変わった部分はそれほど多くない。変わっていったのは組織心理(ソフト)である。

はじめに、組織変革を経営の重点方針に掲げ、リソースを割くことをコミットし、表明した。組織が変わっていくことの期待は、徐々に変わっている実感に変わり、やがて自ら変えていく喜びへとつながっていった。

事実、人事部が組織変革チームとして走ったのははじめの半年間だけで、そこからはどんどん組織変革の主体者が増えていった。

人事部に閉ざされていた人事組織戦略がオープンにされることで、不満を飲み込んでいた新卒社員が、日和見主義だったベテランが、チーム最適に走っていたマネージャーが、組織発展に向けた当事者になっていった。

元々、人事部の採用責任者と人事スタッフの2名だけで回していた新卒採用活動は、今や内定者を含め30人くらいが関わる一大イベントになっている。組織は自浄作用を取り戻し、組織のメカニズムは健全に回り出した。

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組織変革に万能薬はない

三つ目は、「組織変革に万能薬はない」ということ。世の中には組織にまつわる様々なハウツーが溢れている。シリコンバレーの先進企業が新制度を導入すれば、すぐに「○○社が活用している人事制度」というようなバズワードが飛び交い、一時的な流行が形成される。

しばらくは盲目的に追従していった結果、3年後にはまるで何事もなかったかのようにまったく異なるトレンドに歩調を合わせるようなことが起きている。

フレームワークや成功事例は、もちろん理解を深め、整理をする上で有効である。が、組織の課題は静的なものでなく、動的なダイナミズムの中で生じている。従って、静的なフレームワークや固有の成功事例をそのままあてはめても組織は変えられない。

万能薬がない以上、千差万別に移り変わるコンテクストの中で最も効果的だと思われる処方箋を投与するしかない。実際リブ・コンサルティングの組織変革において、他社の成功事例やフレームワークをそのまま導入することはなかった。

様々な視点から自社の課題発見~解決をしたいと思ったので、外部のコンサルタントにも積極的に参画してもらったが、自社固有のコンテクストにこだわった。

「自分たちは何者で、どこに向かおうとしているのか」「その目的地のために何を大切にすべきで、何を変えるべきなのか」を徹底的に考えていった。

だからこそ、この2年間の組織変革にはオリジナリティがあり、多くの社員にとって自分事化しやすいストーリーになり得たのだと振り返る。

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組織変革の成功率は症例数に比例する

これら三点を踏まえた際に、私たちはいかにしてクライアントや社会にこの学びを還元すべきなのかを考えた。

すなわち、「犯人捜しをせずに」「制度による解決偏重にならずに」「組織変革の万能薬に頼らない」やり方で、組織を良くする方法を広く知らしめる方法論はないだろうかというのが、本書執筆の出発点だった。

これは実に難しい問いであり、書店やAmazonに溢れる組織のハウツー本と逆行するものであった。

私たちは、極めてオーソドックスな結論を出した。すなわち組織変革の成功率は、「症例数に比例する」である。

万能な処方箋があるのなら症例数が少なくとも名医になれるのかもしれない。が、万能薬がないという前提に立つのなら、病状の特定こそが重要である。

組織メカニズムが組織心理に根差し、組織の環境変化や対立構造も巻き込んだ高度なコンテクスト把握が必要なのであれば、なおさら症例数が名医になる上での条件になると考えた。

症例数を増やすためには、実際に組織に関する体験を積むことが一番である。そうはいっても、日本企業の組織変革に直面する機会は職業人生においてもなかなか起きることではない。

本書執筆の帰結点は、「組織変革の疑似体験を増やす」ということである。

本書では、モンスター組織化してしまった8社のリアルケースを通じて、日本企業が陥りがちな組織課題について疑似体験をできるようにまとめている。

前半の4ケースは成長企業後半4ケースは成熟企業が経験する組織変革の落とし穴について、具体的に紹介している。

よりリアリティを感じてもらえるように、『モンスター組織 停滞・混沌・沈殿…8つの復活ストーリー』と題し、それぞれの企業を支援したコンサルタントたちが、様々な対立構造や組織に次々と降りかかってくる事象をそのまま残し、変革前の組織状況と対策アクション後の組織状況を鮮明に描いた

実体験さながらにコンテクストを捉えた上で病状を特定し、処方箋を考え、変革のストーリーを追体験してもらうことが、次の組織変革の名医たちを増やすことだと信じ、本書を上梓することにした。

それでは早速、読者の皆様を「モンスター組織」にご案内することにしよう。

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