現役大学生デザイナーに聞く、ルック制作秘話やデザインへのこだわり Part1
Keio Fashion Creatorは昨年12月、ファッションショー「明晰夢」を開催した。デザイナー部員のうち8人がショーのルック制作を振り返る。全4回。
今井耶衣/文化学園大学3年生 (前デザイナーチーフ)
ーショーテーマ“明晰夢”をどう自分なりに解釈し、ルックに落とし込みましたか。
今井:
女性ルックの方は、 明晰夢は夢と現実が分からなくなるニュアンスだったので、“なりたい理想の自分”と“今の自分”のようなものを表現しようと思い、上は少し2次元のような アニメに出てくるような服、下は自分がいつもロングスカートを履いているのでいつもの自分のような感じでロングスカートを制作しようと思い、自分ベースで服を作りました。
男性ルックはモデルさんを決めてから制作をしたので、モデルのタクマさんに合わせて、上は少し体のラインが出たり、少しエロティックな女性らしい感じで作りたくて。下はズボンにするとメンズチックになってしまうと思ったので女性ルックと同じスカートを作り、 タクマさんの男女隔てない魅力的な性格をイメージしたような、男性が着ているけど女性的なルックを製作しました。
ー制作中、他部員との関わりを通し、インスピレーションを受けた機会はありましたか。
今井:
デザイナー同士でお互いのデザイン画などについて話し合うことで、デザインが被らないように工夫していました。
ー1年間デザイナー部員として活動する中で、精神面・技術面で成長を感じたことはありましたか。
今井:
デザイナーチーフとして活動をしたので、 メンタルとしてはとても強くなったと思います。自分のルックを作りながら、部員のルックの管理も行い、団体の幹部としての仕事もしなければいけなかったので、とてもたくさんの仕事がありましたが、なんとかファッションショーを作り上げることができたので、達成感で心がいっぱいです。
ー“自由系”と“理想乖離”。それぞれのルックのテーマに至った経緯は?
今井:
最初、テーマが明晰夢だと聞いた時に自分なりに考えて、夢の内容にしようと思ったのですが、 夢で何を見たのか、内容を全然覚えていなかったので“現実と非現実の狭間”という点に視点を置いて考えた時に、“理想と理想じゃないこと”、“理想のようになりたいけどなれないこと”が狭間である、という考え方をルック制作の念頭に置き、女性ルックは自分視点で考え、男性ルックはジェンダーレスを中心に置いて作りました。
ー2ルックともボリュームのある大きなスカートが目立ちますが、デザインのこだわりや意図は?
今井:
現実的なことを言うと、“ショー映えするか、しないか”です。ショー映えすることを考えると、1つのルックの中で 大小がある方がバランスがよく見えるので。 小さいものと小さいものを合わせて作ってしまうと、大きいショーの会場の中だと、存在感がなくなってしまうんですよね。 上がかなり胸回りコンパクトの服を作ったので、下は少し大きめにして「バランスを取ろう」という考えでスカートにボリュームを持たせました。
西島和来/津田塾大学3年生
ーショーテーマ“明晰夢”をどう自分なりに解釈し、ルックに落とし込みましたか。
西島:
今までのショーでは自分の中でテーマをきっちりと詰めてから形にしていたのですが、今回は「こんな世界があったら楽しそうじゃない?」といった自分の理想の世界をもっと軽く提案するような形を意識しました。ほかの部員も自分のやりたいことと現実のギャップをテーマにしている人もいました。
ー今回のショーではルックを通してどんな理想の世界を提案していたのですか。
西島:
「最近の服もいいけど、伝統的な服も着てみたら面白いんじゃない?」といったテーマでルックを作りました。私は日本の伝統的な服が好きなのですが、そのままの姿では現代では適応しない部分もあるので、私の理想である“現代の服と伝統的な服が融合した服”をルックで表現しました。
ー西島さんにとって伝統的な服とはどのような意味を持っているのですか。
西島:
自分が生まれ育った国の伝統について、せっかくならもっと知りたいという思いが元々ありました。服を作っていく中で「現代にもすんなり受け入れられる伝統的な服ってなんだろう」と知らない間に追求していました。今年も“今昔の融合”というテーマを自分なりにこの点を追求して制作しました。
ー2ルックともレディースでテーマも同じですが、それぞれはどのような視点から“今昔”を “融合”しているのですか。
西島:
「Look22」のルックは昔から結婚式で着られてきた打掛という裾に綿が入っている衣装を参考にしました。裾にボリュームがある服は今はなかなか見られないですが、もこもこしている服は現代でも可愛い服として受け入れられているので、スカートの裾部分に綿を入れたら今と昔が融合できると思い取り入れました。
「Look23」のルックでは見た目的な今昔の融合を意識しました。見た目はワンピースのようなのですが、よく見るとスカートが袴っぽくなっていたり、ウエストも袴をモチーフにして紐になっています。「Look22」のルックよりはイメージ的な部分で“今昔の融合”を意識して制作しました。
ー制作の過程で大変だったことはなんですか。
西島:
デザインを決めるのが一番大変でした。和服という自分の作りたい服をどのように“明晰夢”というテーマに沿わせるかという点で沢山悩みました。団体の作品として出すためショーで見た時に映えるようになど、意識しなければならない点が多く、楽しくも苦労して試行錯誤した思い出があります。
ー制作中、他部員との関わりを通し、インスピレーションを受けた機会はありましたか。
西島:
毎回の全体会議で行っていたデザイナーの制作テーマ発表の機会でよくインスピレーションを受けていました。制作の時は個人で黙々と進めることが多いので、発表の時に他の人の考えやテーマを知り、こういう考えもあるんだ、と刺激を受けていました。
ー団体で活動するKeio Fashion Creatorだからこその経験ですね。
西島さんにとって、Keio Fashion Creatorらしさや、団体の良さはなんですか。
西島:
全員が好きな物があって、それぞれが自分に自信を持っているところです。だからこそ自分と違う好みを持っている人も尊重してくれるし、お互いがお互いを尊敬し合えるところがこの団体の良さだと思います。
この団体で、特にルックを制作する中で色々な考えや好みを持っている部員とコミュニケーションを取ることが出来たことは自分にとっても大切な経験になりました。他の人と違うからこそ自分はなにが好きなんだろう、と改めて自分と向き合うこともできたと思います。
この団体に所属していて、一般的な大学と服飾学校の両方で学べたことが一番良かったと思っています。学生生活の中で学業にも服飾にも触れることでしか出てこないアイデアが沢山生まれました。ショーテーマから話し合い、そのテーマをルックに落とし込んで制作する経験はここでしかできないことだと思います。
ー1年間デザイナー部員として活動する中で、精神面・技術面で成長を感じたことはありましたか。
西島:
1年目の時は原型パターンのアレンジで精一杯でしたが、今年は作る前から自分でイメージ出来るようになってきて、発想の幅が広がったような気がしました。色々なものを作ったり見てきた経験を今年のルック制作に生かすことができました。また例年に比べ、「明晰夢」というテーマには柔軟性があるように感じられたため、例年よりも自分の作りたいものを形にできたように思います。
精神面では団体という全体の中での自分について考えることが増えたように思います。自分は特にチーフをしていたわけでも、専門学校に通っているわけでもなかったので、「自分ができること」をよく考えていました。後輩部員とのコミュニケーションを通し、チーフと下級生の仲介役になることを意識していきました。この団体に入るまで、部活やサークルに入ったことがなかったので、団体の中の自分を意識する機会は自分にとってとても貴重な経験になりました。
2024.02.25
DESIGNER: YAE IMAI/WAKO NISHIJIMA
TEXT: KEN IMAMURA/MIYU NAGAI
PHOTO: HIDEYUKI SAKUMA(still)/HOPE(header photo)
【Keio Fashion Creator 関連リンク】
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HP : https://keiofashioncreator.com