大学生がLOOKBOOKを1から制作! 撮影のこだわりをリーダーにインタビュー Part1
Keio Fashion Creatorにより「朝」「昼」「夜」の3つのテーマに沿って制作された今回のLOOKBOOK。各班のリーダーに制作のストーリーをインタビュー。全2回。
ーLOOKBOOKの見どころはなんですか。
林:
今回はチームの中で何人もデザイナーがいて、1つのテーマに沿ってデザイナー1人が1ルック制作しました。だから自分の解釈だけじゃなくて、チームとしての解釈にそって作っていく必要があったので、いつもと違ったクリエーションになったと思います。
そして実際に取り組んでみた結果、チームごとに色が出ていて、1冊の本にした時に面白いと満足できるものになったと思います。
袴:
3つのグループがそれぞれ1からディレクションを組んで、それをデザイナーが解釈をして作っているので、同じ冊子ではあるけれど、それぞれのストーリー性があって、グループごとに違った見方や個性が出ていて良かったのではないかなと思います。
ー撮影地の決め手はなんですか。
林:
うちのチームは昼というテーマだったので、少し開放的なところがいいなという案がありました。最初は室内か外で迷い、結局外の開放的なところでやろうという話になり、海と空と岩と草という自然の要素がうまく組み合わさっているところを探そうということになりました。
そこで見つけたのが、神奈川県の最南端の城ヶ島というところです。足場は悪かったのですが、色々な表情があってすごく面白いロケーションだったので、結果的によかったなと思っています。
袴:
僕たちの班はテーマが夜ということで、夜のどのようなものを表現するかということになったときに、 夜の寂しさ、退廃感といった廃れた感じと、 人の感情が揺れ動く中でも、そこにある孤独に支配される時間は誰しもが持つものであるということを考えました。そして、人工物でありながら、その時間が過ぎていく中で廃れていったというような場所にしようとなりました。
最初、奥多摩にある工場をロケ地にしようと思っていました。そこは今も工場として動いてるのですが、山の中に工場がぽつんとあって、それが人工物でありながらも、風化の中で事前に侵食されている感じがよく出ていたからです。
しかし色々あって、2回目の撮影をすることになりました。その時はまた違った角度から見ようということで、都内の新宿某所にある、もう人が住んでいない、木々に覆われた廃屋を撮影場所として決めました。
林:
一回決めた場所と違うところを同じテーマから想起して、場所をまた新しく決めるというのは大変なことだよね。
袴:
そう、ちゃんとディレクションとしてうまく噛み砕けたのでそれに沿う場所を探すだけで済んだ。
ー他部署と合同で作業を行う中で、自分の役職だからこそ役に立てたことはありますか。
林:
デザイナーというクリエイションを考える身として、そのテーマからの発展の仕方みたいなものの指針は示せたかなと思いました。
また、他のデザイナー2人とのコミュニケーションを取るようにしました。そして服を作るのはメインであるデザイナーで、自分たちの作った服を発表するということなので、自分たちの服をどういう風に見せていくか、他の部署との掛け合いは重要だと思いました。デザイナーの作った服は影響力があるので、それを元にディレクションを考えてもらいました。
袴:
僕は去年、主にディレクターとして活動をしていました。ルックブックを作る上では、自分のチームであれば夜に対する解釈やディレクションの方向性は決めなきゃいけないと思っていたので、そういうところでは去年のディレクターの仕事はとても役に立ちましたし、その方針をしっかりチームで共有しないとバラバラな方向に向かってしまうので、それぞれの役職にもちゃんとディレクションが伝わりやすくすることを心がけました。
その中で、ディレクションや服のデザインにあったモデルを探してもらえたことがよかったのではないかと思いました。
林:
チームの中で同じ方向を向くということが、すごく難しいことだなと思いました。
袴:
やはり、それぞれ違った捉え方があるわけなので、そこをどう統一するかというのはちょっと難しかったです。今回のルックブックが小規模人数だったので、まとめやすさはショーと違って、統率は取りやすかったかなと思いました。
ー予算内に収める工夫はなんですか。
林:
屋内で撮影をしようとすると、誰も通らない独立した場所となると大体、レンタルスタジオになってしまい、3時間ぐらい借りるとそれで予算いっぱいになってしまいます。場所代にお金を払う余裕はないと思って外を選んだのが、1つの要素です。
あとは、できるだけ身内を使うようにしました。メイクしかり、カメラマンしかり、モデルしかり。僕たちのチームは、外部から使ったのはモデル1人だけで、 メイクも部内から出して、カメラマンは部内の知り合いに頼んで、できるだけ人にお金をかけないというのも1つの工夫としてありました。
あとは、外で撮るには、人がいないところに行かなければいけなくて、そうすると郊外になってしまう。大人数で郊外に移動しようとすると、やっぱり車が必要で、機材も積まなきゃいけなかったりして。
そうやって考えると、車代はある程度かかってしまうのはもうしょうがないから、それ以外でどこか削れるところがないかなど、色々予算内で収めるようにしました。
袴:
お互い郊外だから、交通費の分はしょうがなかったと思います。限られた予算があるので他のどこで削るかが大変でした。
林:
そうだね。夜は撮影を2回したから、結構カツカツだったよね。
袴:
2回目は都内でやったから大丈夫。
林:
都内でも人の流れはどうだった?
袴:
都心だったけど、その中でも少し下町のような場所だったから、 人が通ることなく撮影を終えることはできた。
林:
それはよかった。都内でも、探せばそういう穴場みたいなところはないわけではないと。あと、時間帯もあるね。
袴:
そう。夜ちょっと遅めに撮ったりとか。
林:
その辺の工夫は必要かもしれない。
袴:
同じ冊子にまとめるにあたって、どこのグループも外だったので、その点でも屋内っていう選択肢は消えました。
別々のグループで取り組んだとはいえ、1冊にする上でのクオリティは担保しなければいけないので、そういった面で外だけど色々なロケ地でそれぞれの班ができたのはよかったのではないかなと思います。
林:
特にチーム同士で何度もコミュニケーションをとって示し合わせたわけではないけど、察し合って1つの雰囲気に寄っていった感じはありました。
そこも見どころかもしれないです。
袴:
工夫に関してはどこの班も同じようなことをして。結果的に、限られた予算内で取り組むというのはどこの班も同じような工夫をしました。
ー撮影地でのトラブルはありましたか。
林:
日照の条件がぎちぎちで、ちゃんと晴れてくれないと明かりが取れない。曇りか雨だったら撮影は延期することにして候補日を作って、どこか1日は晴れるだろうと。
幸い1日目に十分晴れてくれたので撮影を決行したわけですが、途中から分厚めの雲が来てしまって。現地に着いた時はちゃんと晴れてくれていたのですが、 メイクと着替えをしてる間に少し雲が厚くなってきて。そこで明かりが十分に取れなかったので、冊子に使う写真が限られてしまったり、惜しいなというところはありました。
ただ、その他には場所に対する想定外なことはあまりありませんでした。ロケハンの時にちゃんと全てを見て回っていたので、大体のことは予想できたからです。
袴:
僕たちの班は梅雨のど真ん中で撮ったので、雨が降る予想はしていたけれど、ちゃんとディレクションの方向的にも、雨が降ったらそれはそれでいいよねという形にはなってたのですが、撮影を予定していた日に台風が来てしまって。
ロケハンでカメラの調整などをしていたけれど、台風のせいで工場の活動が停止していた関係で、元々あったはずの照明が全部ついてなくて。
林:
それは、想定していないよね。
袴:
うん。暗ければ撮影ができないので、持っていった機材だけでは足りず。
林:
相当強いストロボ炊かないと足りないでしょ。
袴:
でもストロボ炊いちゃうと、後ろが見えなくなったりとか色々あって。元々工場にある照明を使う前提で撮影を考えていたので、持ち込んだ照明だけでは足りませんでした。その結果として都心で再撮影をすることになり、そのときも雨が降ったけど 、都心であれば何かしらの理由がないと街の電気は消えないであろうと考えました。撮影地を変えて2か所の撮影になったことが、1番のトラブルでした。
林:
いろんな想定をすべき。極論、1番最悪な状況を想定して、色々な対策を練らないと。その場所で、どうにか対策できるものではないかもしれないので。
袴:
モデルさんとか、カメラマンさんにもやっていただいてるから。
林:
そう、失敗はできないから、2手先、3手先を読むように作っていかないと、足をすくわれてしまう。
袴:
でも、トラブルがあったなりには対処できたかなって思います。
林:
ちゃんと2回目もすぐモデルの手配もできて。
ー2回目は別のモデルだったんですか?
袴:
いや、同じモデルで撮影しました。データ化した時に思ったより暗かったので、 使える写真は決めつつ、足りないところはもう1回写真のディレクション案から組み直して。
林:
そこ、クイックだったよね。
袴:
早かったね。チームの中で空いてる人に手伝ってもらいながら、すぐにモデルさんにも連絡して、スピーディにできたのはよかったと思います。
2023.9.20
KEN IMAMURA / RYUSEI TSUBO(INTERVIEWER)
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