【Keio Fashion Creator×瀧定名古屋】繊維商社の実態をインタビュー Part2
今回は、昨年度に続き今年度も生地を提供していただいている瀧定名古屋様の3名にインタビューを行い、繊維商社の仕事を紐解いていく。
ー仕事で楽しいと感じる瞬間は?
泉:
これは僕すぐ言えます。電車とかで「僕が作ったレディースのジャケット着てるわ!」みたいな。おしゃれして着てくれてるとか。 お客さんが「この服めっちゃ売れたよ。」「泉君、発注するよ。」って言ってくれて、追加発注が来たりとか。そういう時が1番楽しいです。
吉森:
私も似たような感じで、自分が企画した商品が売れたり、店頭に並んでいたりすると嬉しいです。今までは店頭で見たり買ったりしていた商品の裏側を実際デザイナーさんにも提案できて、それって夢があるというか。そのデザイナーさんに自分が「良い!」と思った商品がピックされたりするのがすごい嬉しくて楽しいです。
川本:
自分の企画した生地が製品になった時ですかね。1年目の時に研修で作った生地が半年前に製品になって、それを展示会で見た時も嬉しかったです。そのアイテムは買いましたよね~。飾ろうと思ってます。
ーどういったアイテムなんですか?
川本:
自分でもおしゃれだなと思うんですけど、ゴッホの「星月夜」を糸で生地に落とし込んだものです。感覚的なところにはなるんですが、油絵なのでバサッとしてるかと思いきやぐちょっとしているところをモールの糸とリニュールを使って表現しました。それを力説して推したら使ってもらえたアイテムです。
泉:
みんなそうやってこだわりを持ってやってるよね。
文系で物作りに携われるのは、多分繊維とかうちの会社ぐらいじゃないかと思うんですよ。何に使われているかわからないものを売るというよりは、生地から企画して、製品を形にする。それを喜べるっていうのはうちの仕事ならではだと思います。
ー会社で一番好きな場所は?
泉:
この質問が一番困ったよね。
これみんなが何答えるかが、すごい気になる。
吉森:
私考えたんですけど、「え、そこ?」ってなるところが浮かびました。
泉:
じゃあ年上の僕から答えます。
B3フロアってのがあって、 地下3階、うちの会社で1番下なんですけど、そこにサンプルがストックしてあるんですね。ラックに数多くのサンプルが掛かっていて、そこに自分の手掛けた 『泉ラック』ってのがあって、そこを眺めて「ふふっ」てするのが1番好きな場所です。かっこつけますけど、自分の思い出があるというか、いろんなブランドさんの商品サンプルとかが並んでるんですけど、そこを見る時間が好きです。
―サンプルはずっと保管されているんですか?
泉:
社内販売で社員の人に還元する販売会みたいのがあるんで、そこに出したりはするんですけど、あのお客さんとの思い出だから取っておきたいとか、別の企画で使えそうだからとかっていうのは残しておいてます。
B3フロアで過ごす時間が好きっていうのが建前で、実は課員の人とお昼に行くコンビニとかコーヒー飲んだりするのが1番好き。 これが本音です。
吉森:
私はサンプル室かも。自分たちのデスクとは別で課ごとに、生地をカットしたり
スワッチを作ったり、作業する空間があるんですけど、そこで仕事をするときが1番捗るなと思ってます。
他の課員もそこで作業するので、何が売れたとか、こういう色味だしてきたから次に良さそうとか、そういうコミュニケーションから意外にヒントが出てきたりする。仕事がはかどったり、課員のコミュニケーションも含めてサンプル室かなと思います。
川本:
僕はもう完全に実家ですね。絶対実家。
最近はちょっと帰れてないんですけど、基本的に長期休暇の時は帰ってて。僕、実家に猫がいっぱいいるんですけど、もう猫がね可愛くて。
仕事っぽい場所だと、「意外と好きやな」と思うのが大阪の連絡所です。
泉:
無骨だよね。昔ながらの事務所みたいな感じ。
川本:
普段会社だったら、課で分かれていますが、連絡所ではみんな一緒のところにいるから気軽に喋れますし、営業先のお客さんのエリアが結構固まってるんで、そこを拠点に自転車乗って行ったりするんですよ。
蕎麦屋みたいにキャリーケース乗せて自転車で移動してたら、お客さんとすれ違ったりとか全然あるんで。仕事だけど素でいられるというか、気張らなくていいのが僕は好きですね。
ー今までで一番大きな失敗は?
泉:
一番は納期遅れです。皆さん当たり前に服を買うと思うんですけど、1つ服を納品するまでにトラブルがなかったことなんて一回もないくらい多くて、生地の段階でも色が見本と全然違うとか、縫製で破れてしまうとか。
僕だと『泉現象』と言われることがあって、なぜか台風で僕の品番だけ止まっちゃうことが3回続いたんですよ。
最初は、「もう泉くん勘弁してよ」で済むんですけど2、3回目は「もう部長呼んできて」くらいの勢いになっちゃう。他ブランドに先駆けて9月に店頭に出したかったウールコートが結局同じ時期に出すことになってしまって。そこで迷惑をかけてしまったことが最大の失敗ですね。
吉森:
私は、お客さんから生地の発注をもらった時に在庫がなかったので、2か月後に出荷指示をいただいたのにも関わらず、生地の追加生産の指示ができてなくて、また在庫が全くない状態だった時が最大の失敗でした。生地がないと製品も作れないじゃないですか。なので仕入れ先にお願いして、だいぶ早めてもらって何とか収めてもらいました。
川本:
僕は、納品時には問題にならなかったものの、生地トラブルでかなり高額なクレームが一回ありました。
元々抗菌防臭をうたっている生地があって。コロナもあり流行りで、一度物性データを取ったら良い結果がでたんだよね。けど量産時にデータを取ったら、機能を満たしていないという結果が出てしまって。結局後加工で急いで対応してなんとか納品できたんですけど、そこの加工代がかなりかかってものすごく怒られましたね。
泉:
生地の段階、製品の段階って本当にトラブルが多いので、そういう裏側は会社に入ってみないと、わからない世界ですね。
ー今まで携わった中で1番の規模感の仕事は?
泉:
ちょうど今7年目で、若手とはもう言えない中堅に差しかかってきていて、課の中でも1番のお客様様と数字を任されるようになりました。
業界最大手のリテーラーのレディースのスーツとかをやらせていただいてるんですけど、今までは1つの品番が100枚、300枚だったりっていう1品番が、単純に数量が1万着とか3万着とかに桁が増えたので、「エンターボタン押して送信」っていうこの1つの仕事で3万着の生地が動く。扱う額も大きくなったので、そこがやっぱり最大の仕事なのかなとは思いますし、その分やっぱりプレッシャーも大きいです。
川本:
大体同じ感じですけど、あえて違うことを言うなら、スワッチ作りかなと。スワッチって大体お金かけて作っているんですけど、初回でいっぱい作ったら意外と、不特定多数に流れていくんですよ。
だから例えば表裏が違うだけでも、違うものが広がっていってしまう。お客さんの大小関わらず、揉めちゃうと大きな損害になるんで、ただの1枚のスワッチに見えるんですけど、実はこれが大事で。個人で作る時に、縦横とか表裏とかは絶対間違えられないんで。そこはめちゃくちゃ意識してやっていますね。
ー海外市場での戦略やエピソードについて
吉森:
生地課では、それこそ海外に合う商品があって。
風合いとか見え方とか、日本でしか作れないような生地がやっぱり好まれます。国際部がめちゃめちゃ売ってくれる商品の特徴を捉えることとか、サステナブル系は海外の方が進んでいるので、いかにスピード感を持って展示会などで発表できるかが大事だなって思います。
泉:
少し趣旨とずれちゃうかもしれないですけど、生地の特徴云々っていうより製品部としては海外ブランドに向けて海外の発注を取るとか、 逆に生地部とくっついて海外に向けて製品部隊も動いて生地の提案に行ったり。生地と製品で一緒になって動いています。
ー意外なヒットをした商品はありますか?
泉:
製品やっていると、 この商品がこんなに跳ねるんだとかは意外にあったりします。
生地は在庫とかも関係してくるので、ヤマを張る商品と張らない商品って結構あるんですよ。この商品絶対動くから、この色と生地は吉森さんに押さえといてもらおうとか。そうやって絶対追加来るだろうっていう商品に限って動かず、違う色の生地が売れるとか結構あるあるですね。
逆に言うと、形はトレンド通りに動いてる気がします。やっぱり市場のリサーチしてるところは外れないんです。
吉森:
2年前ぐらいに立ち上げた商品が、ほぼ売れてなかったんです。
エナメル調の合皮なんですけど、これで万人受けするアイテムを作ろうと思うと結構ハードル高いじゃないですか。
だけど1度白の台紙で、大きめの生地を貼って生地サンプルを作ったことがあって。そしたらものすごくピックされる件数が増えたんです。デザイナーさんの間でトレンドになってきて、ようやく生地が動き出した感じでした。
ーデザイナーさんの気分も影響が大きいんですね
泉:
影響力強いですね。最近シアーとか流行っているんですけど、3年前だったら、絶対透けちゃダメだからねって言われていて。当時透けない商品を提供していた人に、「泉君、今は透けがいいんだよ」と言われるので、模索しながら提案してますね。
ーコロナの影響やエピソードは
泉:
製品部隊が特に影響を受けまして。
その時メンズのコートの課だったんですけど、皆さん外に出歩かなくなったんでコートを着る機会がないんですね。
だから何か別のものをやって売り上げを補填していかないといけないんですが、そこで打開策として会社としてブランド営業しよう、ということで僕は自社ブランドの部隊に配置されました。
その頃は店舗に行かないEC系の商売を結構いろんなお客さんがやられていて、それを僕もやっていました。
吉森:
私たちはコロナが二年目の時に入社したので。
泉:
会社には来れていた?
吉森:
それは全然いけていました。
泉:
僕は入社2年目でコロナ1発目って感じだったんで。
やっぱり大変でしたよ。僕らは東京に行かないといけない商売なんですけど、行けなかった時にzoomでやったり、生地送ったりとか。
製品は説明が大切なので。皆さんもお店行かれて販売員さんが説明してくれると服がさらに輝くじゃないけど、服の形なんかも特に触って、着て、やっぱり人が説明して初めて商売になると思っているので製品課は特に大変でした。
ー東京で働く頻度は?
泉:
課によって違いますけど、僕の課は大体、木金か水木金とか
日帰りの日だったり1泊2日、2泊だったりと バラバラです。その場その場でアポイントが取れ次第で予定が決まってくって感じ。
ただ、週1回は絶対東京に出ています。
吉森:
私も同じです。
名古屋と岐阜にもお客さんいるので、火曜日に名古屋と岐阜のお客さん回って、水木金か木金で毎週東京って感じです。
川本:
僕も同じ感じなんですけど、大阪があるので大阪行って東京行ってが多いですかね。
2024.11.7
KEN IMAMURA(INTERVIEWER)
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