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現役大学生デザイナーに聞く「ルック制作とショーコンセプト」 Part3

Keio Fashion Creatorは昨年12月、ファッションショー「羽化」を開催した。デザイナー部員のうち17人がショーのルック制作を振り返る。全3回。

今井耶衣/文化学園大学 2年生
西島和来/津田塾大学 2年生
宗像日和/法政大学 3年生
城澤旦/慶應義塾大学 2年生
鈴木湖永/獨協大学 2年生
朝比奈唯/成城大学 3年生
⻑瀬唯/慶應義塾大学 3年生 (前代表)        
(ショー当時)

ー「羽化」というショーテーマを最初に聞いたとき、デザイナーという立場として、率直にどう感じましたか。

今井:
シンプルでいいなと思いました。

西島:
意外とやりやすいテーマだと思いました。個性が出しやすそうだなと。

宗像:
2021年度のショーテーマ「MONTAGE」に比べて、表現するのが難しいテーマだと感じましたし、プレッシャーもありました。

城澤:
面倒くさいと思いました。ジェンダー問題の議論の流れを思い出してみたら分かりやすいと思います。LGBTQへの配慮が必要だという議論が出てきた結果、性別を括らないようにしようみたいな流れができた。ここで現状の打破=羽化がなされたと思うんです。
でも、性別を括らないということが当たり前になってきた現在、次の段階として、そもそも性別について話すこと自体がタブーなのではないか、そもそもLGBTQって議論してはいけないものなのではないかという新たな流れが出てきています。
このように、羽化をして繭を破った先にもまた新たな繭があるっていう、終わりが見えない感じとか、永遠に繰り返す流れみたいなものがショーテーマとして扱われていたので、それを表現するのが難しいし解釈が面倒くさいと感じました。

「正当な死」AKIRA JOZAWA
「処女性」AKIRA JOZAWA

鈴木:
今回のショーテーマを聞くまで、自分自身の生活の中に繭の存在が潜んでいることに気づいていませんでしたが、ルック制作のために意識して生活するようになりました。「考えるきっかけになるショーを作りたい」という他の部員の言葉にとても共感しました。

朝比奈:
今回のショーテーマは難しく、理解に時間がかかりました。何個もデザイン案を出しましたが、最初はチーフから訂正が入るところも多かったです。私は当初、羽化が終わった状態を表現したルックを想定していたのですが、今回のショーテーマのポイントは「終わった状態」ではなく、羽化を「しようとしている」段階をルックとして表現しなければならず、難しかったです。
また、「繭」というモチーフが特徴的なので、比喩的な表現として用いたいのに、頭の中ではどうしてもモチーフそのもののイメージが先行してしまって、何度もデザインに影響しそうになりました。

「死」YUI ASAHINA

長瀬:
羽化という言葉自体にも意味があるし、比喩的に用いることもできる言葉なので、ショーテーマとして良いと思いました。
2021年度のショ-では、「MONTAGE」をそのまま表現したルックではなく、「MONTAGE=映画の要素」という解釈のもとでルックを制作したので、今年はショーテーマである「羽化」を、言葉の意味そのままに、直接的に表現したいと思いました。

ー2022年度デザイナーとして活動してみてどう感じましたか。

今井:
基礎的な部分から学んで、1年間で1体のルックを作れるようになるという授業内容が素晴らしいと感じました。みんなで協力して作ることの楽しさも実感しました。

「表現の性LGBTQ」YAE IMAI

西島:
デザイナーは他の役職があってこそ成立する役職だと感じました。2021年度はモデルマネージャーとして活動していましたが、2022年度からはデザイナーに転向しました。自分がショーを構成しているというのを実感できなかったことと、ルックを作らなければいけないという責任感が欲しかったことが理由です。
でも、実際にデザイナーとして活動してみて分かったのは、ただ自分が作品を作ればいいというわけではなく、ショーを演出してくれるディレクターや、モデルを手配してくれるモデルマネージャーなど、他の役職があってこそのデザイナーの活動であるということです。「他の役職の活動によってただの服がルックとして成立するし、ルックが意味を持つようになる。」ということを実感できた年でした。

宗像:
私は2021年度はディレクターとして活動し、2022年度はデザイナーに転向しました。ディレクターとデザイナーでは、ショーに対する向き合い方が違いますが、目指す方向性は一緒だと感じました。2021年度はディレクターでインビテーションの制作を担当していました。「制作」という点では、ディレクターのインビテーション制作も、デザイナーのルック制作も同じです。ディレクターの先輩の姿を間近で見て、ショーテーマを昇華する方法や表現のアプローチ方法を学んだ経験を活かし、デザイナーでのルック制作でもそうした学びを取り入れました。

「情報の奴隷」HIYORI MUNAKATA

鈴木:
楽しかったです。簡単なリメイクはしたことがあっても、一から服作りをしたことはなく、ずっと服を作ってみたいという思いがあったので、服作りの機会をいただけることはとてもありがたかったです。Keio Fashion Creatorには、自分が考えたことがないようなことを考える部員がたくさんいて、彼らから多くの刺激を受けた1年間でした。

朝比奈:
とにかく大変でした。服を作るのは初めてで、何も知らない状態からのスタートだったので、勢いで進めていったところもありました。

ー2022年度代表として活動してみてどう感じましたか。

長瀬:
2021年度はデザイナーチーフを務めていました。幹部の1人として代表を近くで見ていた経験があったので、代表が負う苦労などは理解しているつもりでした。しかし、実際に代表に就任すると、当時は見えなかった多くの雑務や、誰よりも先のことを考えたりする必要がありました。一部分を見るのではなく、常に全体を見なくてはならないのだということを痛感しました。

ー昨年度の「羽化」でのルック作りを踏まえて、今年度はデザイナーとしてどのように活動していきたいですか。

今井:
デザイナーチーフとしては、みんなが作りたいものを作れるようにサポートしていけたらいいなと思っています。デザイナー個人としては、さらにステップアップできるように基礎から見直していきたいです。

西島:
他役職の部員とテーマについて対話し、考えを共有しながらルック制作をしたいです。自分が作りたいものをただ作るのではなく、団体の一員としてみんなの思いを組み込めるように、他役職の部員とも積極的に対話していきたいです。

「女武者」WAKO NISHIJIMA

宗像:
「やりきる。こだわりを捨てない。妥協しない。」が今年のモットーです。去年は技術が足りなくて妥協したところもありましたが、今年は絶対に妥協したくないので、理想と技術力とのギャップを埋めていけるように頑張りたいです。

鈴木:
1番の目標は、今年よりもかっこいいルックを作ることです。ルックがどう見えるか不安になりながら制作していましたが、フィッティングでモデルさんに着てもらったときに、ルックの動きが見え方に与える変化など、多くの発見がありました。また、ショー当日、ディレクションされた空間の中で、モデルさんが自分のルックを着て歩いている姿を見て、私でも服が作れたという実感が湧き、自信になりました。今年は実際にモデルが着たときのシルエットや、歩いたときのルックの動きなどを想像しながら制作していきたいです。
ショーを見に来てくれた友人が「一目見ただけでことちゃんのルックがどれかすぐ分かったよ。」と言ってくれてとても嬉しかったです。今年も自分らしさを大切にしたルック制作ができたらいいなと思います。

「学校教育」KOTO SUZUKI

ー当団体での活動を通して、今後の活動に影響を与える発見などはありましたか?

朝比奈:
振り返ってみればコロナ禍で思うように動けなかった時期を言い訳のように使っていましたが、積極的に動けば、学生でもできることはたくさんあるのだと気づけました。

長瀬:
Keio Fashion Creatorで3年間デザイナーとして活動し、さらには代表になって全役職を経験したことで、自分に合っている仕事や物事に気づくことができました。1年目の時は純粋に服を作るのが好きだったのですが、3年間の活動を通して、自分が服を作るというよりも、他人が作った服の良さを違う人にアピールしたり、服をどう見せるかを考えたりすることの方が楽しいと気づき、今後はそうした活動をしていきたいと思うようになりました。自分の「好き」に気づけたという点で、私にとって価値のある3年間でした。

「殉死」YUI NAGASE

2023.6.24
KYOKA HASHIMOTO(INTERVIEWER)


【Keio Fashion Creator 関連リンク】

 ● IG : @keio_fashioncreator

 ● Twitter : @keio _fc

 ● HP : keiofashioncreator.com


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