【コラム】台湾から見る日本
世界でも「親日」として有名な国、台湾。
昔から日本の音楽や映画、アニメに触れることが出来た背景から、「ディープな日本」に馴染みが深く、訪日旅行でも、いわゆる「ゴールデンルート」と称される東京と関西を結ぶエリア以外の地方にも足を運ぶことでも有名です。
訪日台湾人旅行客のリピート率は驚異的で、2019年値では全台湾人旅行客の85%以上が「リピーター」とされています。
本当にありがたい「ご贔屓様」なのです。
先日、久しぶりに行った映画館で観た「青春18×2 君へと続く道」
台湾人俳優の許光漢(シュー・グァンハン)さんと、日本人俳優の清原果耶さんのお二人が、国境と時間を超えたラブストーリーを演じ、日本だけではなく、現在アジア全域で大ヒットしています。
「18年前」は台湾(台南)、「現在」は日本(長野・新潟・福島)を舞台に、両国の「ローカル」な雰囲気を楽しむことが出来ます。
そして、劇中のシュー・グァンハンさん演じるジミーは、18年前に大学受験を終えた年代の設定。
ほとんど私と同年代の設定ということもあり、「それわかる〜!」と共感の連続でした。
ジミーの愛読書は「スラムダンク」。
日本でも大ヒットした岩井俊二監督の映画、「ラブレター」が実名で扱われ、二人の思い出となるサウンドを「ミスチル」が奏でる。
アラフォー以上の世代には、ブッ刺さり要素が満載なのです。
そして、何よりも特徴的なことは、「台湾から見た日本」が上手に描かれている点です。
つまり、外国人が魅力に思う「日本」を、映画を通して私たちも感じることができ、それは今まさに我々が抑えるべき「インバウンド対応」へのヒントとも言えます。
インバウンドに向けた「観光の4大要素」をご存知でしょうか。
それは、
⑴天候(季節)
⑵自然
⑶文化
⑷食事 です。
簡単にそれぞれを解説したいと思います。
⑴天候(季節)
過ごしやすい気候であることは、観光地を決める点でも非常に重要なポイントになります。
例えば、私たち日本人も、酷暑が続く真夏に「涼」を求めて避暑地の代表、軽井沢や北海道に出かけることが、まさにそれを裏付けます。
また、複数の気候(季節)があることも魅力となります。
⑵自然
国固有の自然環境や動植物はもちろんのこと、「人工的」な自然も魅力になります。
「人工的」という言葉を使うと、「自然」と対極に感じるかもしれませんが、例えば庭園や棚田、稲作アートや温泉地などもその例に含まれ、「人の手を加えて整えられた自然」と捉えると良いでしょう。
⑶文化
「過去の文化=歴史」はもちろんですが、「現代の文化」の両方共がその魅力になります。
例えば、日本には歴史的建造物や城跡などが全国各地にあるだけではなく、アニメやファッションなど、現代の「ポップカルチャー」が外国人からも高い評価を得ています。
また、日本人特有の「礼儀」や「おもてなし」も、日本特有の文化だとされています。
⑷食事
「国名+料理」の形で認知されている食事は、観光面での大きな魅力となります。
言わずもがなではありますが、「日本料理」はユネスコの世界無形文化遺産に登録されており、「日本食を食べる」という目的が、インバウンド旅行者にとっても大きな滞在目的になるのです。
このように見ると、日本はそのすべてが網羅されることが分かります。
これは本当に稀有なことで、世界中を見ても、そのすべてが揃っている国は、日本・フランス・スペインの3国のみと言われているのです。
しかし、要素をすべて兼ね備えている日本にも、大きな課題があります。
それは、これに対するプロモーションや地方での対応です。
実は、この「観光の4大要素」はその順番(優先順位)も重要とされていて、今提示した⑴〜⑷の順番でそのプロモーションや対策をすると良いと言われています。
なぜなら、外国人が海外旅行先、つまり「どこの国に行くか」を決める段階で重視することは、⑴天候と⑵自然が大きく影響するからです。
我々の感覚からすると、少しインパクトが弱いようにも感じるかもしれませんが、例えば一年中暑い国に住む人々は、「冬を体験してみたい」や「オーロラが見たい」というきっかけから、それが叶う「国」を選定していくと考えると、その内容にも納得できると思います。
そして、「行く国」が決まった後に、⑶文化や⑷食事に触れたいと、「その国にいく目的」を明確にしていくのです。
しかし、今の日本は、どうしても⑶文化や⑷食事にフォーカスを当てたプロモーションに偏っている現状です。
日本特有の「四季」の魅力や、地方特有の「自然」を、もっと上手にプロモーションしてくことで、外国人が「日本に行こう」と決める為の重要なポイントへ繋がるでしょう。
この内容を裏付けるかの如く、「青春18×2」の劇中ではそれが明確に描かれていて、まさに「台湾から見た日本の魅力」をそこで認識しました。
ローカル線「飯山線」に乗り、劇中でも出てきた映画「ラブレター」の世界観を感じる雪景色に感動の表情を浮かべ、「只見線」で向かった福島県只見町の自然豊かでローカルな景色。
現在、その映画のロケ地が「聖地巡礼」として、外国人観光客にも大人気なのですが、単なる「ロケ地巡り」を超えた日本のローカルな深い魅力にハマる外国人が続出しています。
我々にとっては当たり前すぎて気付けていない魅力を、外国人観光客は大きな価値を持って評価してくれているのです。
都会的で、最新技術がふんだんに使われた観光地の魅力と共に、日本固有の季節と自然を武器にしたローカルな地の魅力。
その両方が揃ってこそ外国人を魅了する「日本」なのだと、再度私たちが自信を持つべきだと、この映画を通して感じました。
今年は岩手・山口に続き、長野・新潟・福島がインバウンドで賑わいそうです!