歴代『ファンの皆様へ』を振り返る
株式会社千葉ロッテマリーンズの社長に山室晋也氏が就任した2014年以降,シーズン終了後に『ファンの皆様へ』と題するファンに向けてのメッセージが球団公式サイト上に公開されるようになった。
メッセージの公開も今年で5年目を迎えたので,この機会にこれまでの『ファンの皆様へ」を振り返ってみたい。
例年同様,2019年版も公表されたので,追記した。
2014年版
①公開日:10月2日
②公式戦終了日:10月1日
③最終順位:4位
④段落数・文字数:4段落・480文字
⑤特徴
山室社長就任後最初の『ファンの皆様へ』であり,2014年のスローガンであった「翔破 ~頂点へ、今年こそ。~」を引用している点に特徴がある。
応援への感謝,成績に関する謝罪,ファンサービスへの思い,翌年への意気込みという『ファンの皆様へ』の4要素はこの年ですでに完成している。
2015年版
①公開日:10月7日
②公式戦終了日:10月6日(10月16日CS終了)
③最終順位:3位(CSファイナルステージ敗退)
④段落数・文字数:4段落・636文字
⑤特徴
CS進出を果たしたこの年は,シーズン終了後CS開催前に『ファンの皆様へ』を公表している。この時期に公表されたのは,現時点ではこの年のみである。そのため,他の年度とは異なり,CSへの意気込みが盛り込まれているという特徴がある。
また,前年同様スローガンに言及している(なお,この年のスローガンは「翔破 ~熱く!勇ましく!!泥臭く!!!~」である。)。また,この年に復活したビッグフラッグのメッセージ「ONE HEART MARINES」を引用している。
前年は抽象的にファンサービスについて言及していたが,この年は新たに実施されたファンサービス企画である「マリンフェスタ」,「おもてなしプロジェクト」の名称をあげ,ファンサービスの具体的な内容に言及している。
そして,この年以降定番になるファン,選手,球団の一体感について初めて言及している。
2016年版
①公開日:10月10日
②公式戦終了日:10月5日(10月9日CS終了)
③最終順位:3位(CSファーストステージ敗退)
④段落数・文字数:5段落・1038文字
⑤特徴
前年と異なり,この年はCS敗退後に公開された。現時点では,CS敗退後に更新された唯一の『ファンの皆様へ』である。
この年から,スローガンへの言及はなくなった。
具体的な来場者数に言及があるのがこの年の特徴である。
前年同様,具体的なファンサービスの内容,一体感(この年は「ファン,チーム,球団が一緒に,一体となって」という表現が用いられている。)に言及している。
2017年版
①公開日:10月12日
②公式戦終了日:10月10日
③最終順位:6位
④段落数・文字数:5段落・1020文字
⑤特徴
この年の『ファンの皆様へ』は,井口監督の就任が発表されたのと同日に公開された。これまでは,公式戦終了(またはCS終了)の翌日に公表されていたが,この年から終了の翌々日に公開されるようになった。
増加の一途をたどってきた文字数が初めて前年を下回った。
前年に引き続き,スローガンへの言及はない。また,ファンサービスには触れているが,「マリンフェスタ」等の具体的な内容への言及はなくなった。
前年同様一体感(この年以降,「ファン,チーム,球団が一体となって」という表現が定着する。)に言及している。
ビジターファンも念頭に置いた記述(「日本各地の球場に沢山の方々にお越しいただき」),この年の具体的なチーム状況(「シーズン序盤から敗戦が続き、球団史上ワーストを更新する最多の負け数で2011年以来の最下位」)への言及,新監督の引退試合での発言の引用(「我が千葉ロッテマリーンズはこんな順位にいるチームではありません。」)など,これまでのものに比べてよりその年の状況をより盛り込んだ内容になっている印象である。
2018年版
①公開日:10月15日
②公式戦終了日:10月13日
③最終順位:5位
④段落数・文字数:6段落・1308文字
⑤特徴
この年の『ファンの皆様へ』は前年同様シーズン終了の翌々日に公開された。観客動員数が過去最多であった影響もあるのか,段落数・文字数ともに過去最多である。
前年同様スローガンへの言及はなく,一体感に関する記述及びファンサービスに関する記述はほぼ前年のものを踏襲している。ファンサービス関連ではシーズンオフに実施される球場の改修に言及しているのが特徴的である。
この年の特に特徴的な点は,これまでにはなかった個人名への言及である。前年は新監督の言葉を引用しつつも,監督名は表記されていなかった。しかし,この年は,監督名を明記しているだけではなく,具体的な選手名を出しつつ選手の成績等に言及している。
また,これまでの『ファンの皆様へ』で使用されることがなかった,編成,補強,投資というフレーズが登場している。球団初の黒字化が見えてきたためか,これまでにないかなり強気な姿勢が垣間見える。親会社も含めてついに本気を出してきたのではないかと来季への期待感が高まる『ファンの皆様へ』である。過去5年間で最高の『ファンの皆様へ』として高く評価したい。
2019年版
①公開日:9月26日
②公式戦終了日:9月24日
③最終順位:4位
④段落数・文字数:4段落・1202文字
⑤特徴
この年の『ファンの皆様へ』は3年連続でシーズン終了の翌々日に公開された。2018年の観客動員数を上回り,2年連続で球団最多観客動員数を更新したが,段落数・文字数は前年を下回った。しかし,この年の『ファンの皆様へ』は,本拠地最終戦での敵チームの胴上げという屈辱的な出来事にも言及しており,歴代最高にパッションを感じる。
この年はスローガン(「マウエ↑」)に言及しており,これは2015年以来である。一体感に関する記述(ついに「毎年の繰り返しになりますが」との記載が登場。)及びファンサービスに関する記述はほぼ前年のものを踏襲している。前年とは違いシーズンオフに実施予定である球場の改修(ボックス席が増設されてる予定。)には言及していないが,これは改修の規模が小さいからだと思われる。
今季の総括部分では前年とは違い選手名には言及していないが,本塁打数の増加や5点差を逆転してのサヨナラ勝ちに言及するなどかなり具体的な記載がされている。さらに,前年夏場の大失速の反省を活かしたチーム作りを行った旨の記載もあり,かなり踏み込んだ内容となっている。
また,前年の『ファンの皆様へ』で初めて使用された「編成」,「補強」というフレーズが2年連続で登場している。前年に球団初の黒字化が達成されたためか,前年同様かなり強気な姿勢が垣間見える。
そして,この年の『ファンの皆様へ』の最大の特徴は,例年は使用されていてもせいぜい1回である「優勝」という単語が4回も登場することである。この年は,明確に翌年の優勝を誓っており,これは2014年以来である。球団の来季にかける強い思いが感じられる『ファンの皆様へ』である。来季はきっと優勝してくれるはずだ。