シンガポール①最も日本を感じる国
(1)世界で最も日本を感じる国
「今まで行った108か国の中で最も日本を感じた国」私にとってはそれはシンガポールだ。
多くの人にとっては不思議かもしれない。きっと多くは距離的に近い韓国や中国、台湾を上げる人が多いだろうからだ。もちろんそれらの国にも日本を感じるのだけど、私にとってはダントツで”シンガポール”なのだ。
日本に帰って来て半年以上がたった今、テレビで見かけたシンガポールは「あ、やっぱり案外外国なんだな」と思いもしたが、ドバイに長年住んでいた私にとってはシンガポール線=日本への帰国、のような感覚も持っていたのだから不思議なものだ。
なぜそこまで日本を感じるのか。それは街並みの綺麗さ、せかせかと忙しく狭い国土を動き回る人々、それに日本食の普及具合は目を見張るレベルだということがあげられるだろうか。
日本ほど何でもきっちりと仕上がっている国というのはなかなかないが、それはシンガポールも一緒だ。街中ゴミが落ちていることはない。メトロもバスもほぼ時刻通りにやってくるし、人々はちゃんと並んでいるし、どこからどこへどの路線があるのか値段とともにはっきりと示されている。日本の駐在員が多いことから街中お馴染みの日本のチェーン店が並び、スーパーは値段こそ高いものの、日本と代り映えしないほどの食材が並ぶ。シンガポールのメトロはラッシュ時には人でいっぱいで、さながら東京のメトロのようだ。
(2)”日本シック”を癒してくれたシンガポール
ドバイ在住の私にとって天国だった。入社当時あまり日本に帰るフライトがもらえなかったときは、シンガポール線で日本の食材を手に入れ、現地でたくさん和食を食べて、”日本シック”になりかけていた心を十分に癒すことが出来た。海外でホームシックにならないための秘訣は”日本の食べ物を食べること”が大きな割合を占めていると本気で考えている。
(3)怖いシンガポール人はシンガポール航空のせい?
ただ、きっちりとしていることだけが良いわけではない。シンガポール線に必ず乗ってくる(何かと細かくて文句をつけたがる)シンガポール人乗客、そして日系航空会社も顔負けの”シンガポール人クルー”の存在だった。特に上司がシンガポール人だった場合は少なからずの緊張感があった。
よく話題になるのが、日系の航空会社の厳しい上下関係・CAは女の世界という話。だが、男性クルーも多く、アジアの文化はほとんどないエミレーツではあまり関係のない話なのだ。パイロットもパーサーも仲良くなって友達になることも十分あった。もちろん上司と部下の関係はあるが、そんなゆるゆるの外資に慣れていると突然現れる”シンガポール人クルー”の存在。彼らはシンガポール線になると”ここは私の出番!”と言わんばかりに本領を出してくるのだ。
シンガポールは華僑の国で、ほかの国にもれず超学歴社会のせっかち。頭の回転が速い人が多いなぁという印象。サービスは早ければ早いほど良いと信じているし、細かい部分まで指摘してくるので”気が抜けない”という印象だ。”世界で一番顧客満足度の高いシンガポール航空”の存在が彼らの負けん気を刺激して、張り切りが群を抜いているのかもしれない。
私は香港で育っているし、似たような台湾の会社で働いていたし、中国語ができると大抵かわいがられるし、彼らの存在は結構好きだ。が、ゆるゆる~のぽわぽわ~な頭で乗務している外国人クルーは”ガツン!”とシンガポール人にやられ、雰囲気が悪くなっていることも結構あった。
(4)島流しフライト
そもそも、ドバイからシンガポールへのフライトは長旅になることも関係していたのかもしれない。最近までドバイ→シンガポールのフライトは、その後オーストラリアへのフライトがくっついてくるフライトばかりだった。シンガポールがビジネスの中心で需要が多く、またドバイとオーストラリアのほぼ中間地点に位置するという地理的な特長をいかしたフライトスケジュールが立てられていたのだ。そうなるとフライトはドバイを出発してシンガポールで1泊、オーストラリアへ向かって1泊、その後またシンガポールに帰って来てさらに1泊して、その後ドバイへ帰るという1週間という長丁場フライトになる。誰が呼び始めたか知らないが、これを”島流しフライト”なんて呼んでいた。
”島流しフライト”は他のクルーと一緒にいる時間が必然的に長くなる。普段は往復2フライトだけやっておしまい、なのが、4フライトも一緒なのだ。私は大体の場合においてクルーに恵まれて、いつも以上に仲良くなったり、他の人働き方が分かりやすくなったりと、楽しいフライトの思い出しかない。でも逆に小さな鬱憤が溜まりに溜まり、1週間毎日飛び続けて体が疲れてくると喧嘩に発展してしまうことも多い爆弾フライトにもなり得るのだ。
大好きな就航地だったシンガポール。でもフライト自身は気が抜けない。シンガポールという国の様子だけでなく、フライト中もあまり気が抜けない働き方をしなければならないーこれが私がシンガポールに”日本”を感じる理由なのだ。
②に続く
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