なぜあなたの企画は進捗しないのか。「ネット不動産」の取り組みを例に考える(#1)
喧嘩腰なタイトルですみません。
こうしておけば多くの人の目に止まると聞いてます。
でも、半分以上は本気です。
「企画は得意でアイデアはあるが、企画を提案しても社内でなかなか通らない」
「企画書は評価を得ているが、いざやろうとすると進まない」
「実行してはいるが、進捗スピードが遅い」
なんてことはよくあることだと思います。以前の自分も思うように進まず地団駄していた時がありました。
企画自体をすることは好きな人が多いと思います。
しかし実行できなければ、それは企画止まりで単なる空想に終わってしまいます。
先日プレスリリースを出した「ネット不動産」における取り組みは、具体的な構想は2年以上前からしていたもので、本来数年かけてやろうとしていたことでした。
企画をしだした当初は緩やかな進捗スピードに焦りを覚えていましたが、ある日を境に好転し始め気づいたら数年かけようとしていたところが半年に工期を短縮して進捗でき、世に出すことができていました。
ネット不動産の取り組みは、企画開発の進行、オペレーションの変更、PRとの連携、法務的な調整と、やることは多岐に渡り、考えることもたくさんあり、何から手をつけたら・・・という状態になりがちな案件です。
企画開発の環境は会社によっても異なると思いますし、期間を短縮して実行できたことには内外の事情などさまざまな要因があったと思います。
ケースバイケースで片付けることもできますが、よかった点は再現できるよう、極力抽象化して本質を捉えられるように自分のためにも5つのポイントに整理してみました。
企画実行力を高めるための5つのポイント
ポイント① 企画のコアを捉え、ぶらさない:企画の成功確率を高める
抽象と具体を行ったり来たりして、企画のコアを定める。
そうしないと、現実を見過ぎて本来目指したい結果が伴わない企画、逆に夢を見過ぎて現実に即さない企画になってしまう。
ポイント② 企画書はラブレターと認識する:企画に対するGOを早くもらう
企画書には、熱量よりもロジカルなやるべき理由が求められている。
自分が伝えたいことよりも、読み手の知りたいことのみを書くべき。
※ちなみに「企画書はラブレター」という言葉は、元テレビ東京プロデューサーの佐久間宣行さんの言葉から拝借しました。佐久間さん自身がパーソナリティを努めるオールナイトニッポンのコーナータイトルにもなっているので知ってる人も多いはず。
ポイント③ 外的要因を利用する:性急さを付加する
自分がやりたいという想い+αの理由がつくと大きな推進力が伴う。
外的要因はその企画をすべき紋所になっていく。
ポイント④ 同じメッセージを繰り返す:企画進行を既成事実化する
人は他人のことなんて気にしていないし、ましてや関係のない企画のことなんて1ミリも気にしちゃいない。
ことあるごとに同じメッセージで発信していくことで、実行することが既成事実化され話が早くなっていく。
ポイント⑤ ボールを持たない:進捗してることの確認に徹する
PdMの自分が作業系のボールを持っているということは自分が進めないと進捗できない状態になる。
適切なメンバーにボールを渡し、メンバーがボールを動かすことに集中できるようにすることに力を注ぐ。(障害物の除外、速やかな意思決定などに走り回る)
noteでは、今回のネット不動産の取り組みを例に1つずつ、自分がPdMとして経験して分かったポイントを再現できることを心がけて整理していきたいと思います。
※事例を交えながら書き出してみたら、1つずつがまあまあなボリュームになりそうでしたので、何回かに分けて公開していこうと思います。
今回の記事は、ポイント①であげた「企画のコアを捉え、ぶらさない:企画の成功確率を高める」について、書いていきます。
ポイント① 「ネット不動産」における企画のコアを考える
企画のコアとは、要はその企画において譲れないポイントのことになります。
例えば、ネット不動産の場合、私は「ユーザーが能動的にオンライン上で不動産を買える」ことを企画のコアと捉えていました。
だから、ただ既存のプロセスをそのままオンラインに載せるのではなく、能動的にユーザーが進行できるかどうかを機能やUIUXの採用基準にし、それを可能にするオペレーションの実現にこだわってきました。
企画のコアが有耶無耶な状態で進行した企画は、開発のしやすさや現場からの要望、上位の役職者からの意見などによってブレまくり、最終的に当初の計画とは違う仕上がりになり、目的が何だったのかすらも分からなくなってしまう、なんてことにもなりかねません。
企画のコアと機能をどのように定めるかのステップは次のようなイメージです。
ユーザーにとっての理想を考える
そのために必要な機能を考える
2.が実現した時の具体的な体験をイメージする
そのイメージに不都合があればそれを踏まえて1や2に戻る
特に不都合なければ、1が企画のコア、2が必要な機能となる
1つずつ、実際に実行したことと照らしながら、順を追ってみていきます。
1. 「ユーザーにとっての理想」を考える
ここで重要なのは、今ある現実的な課題から入らないということだと思っています。
なぜなら、現実にある課題を見つけて、その次に打ち手を考える、そして実行検証する、というPDCAサイクルはグロースさせる上では基本中の基本で必要ですが、企画という仕事でそこから入ってしまうと今の姿をベースにした思考から離れられなくなってしまうからです。
そして、往々にして会社視点の歩留まり改善に終始してしまうことになりがちです。
その結果、もっと便利なサービスが市場に登場した時には、簡単にリプレイスされてしまうリスクが発生し続けることになります。
有名なイノベーションのジレンマ的な話で、ユーザーに選ばれ続けるためには、企画者としては「そもそも今のサービスの姿はユーザーにとって求められている理想になっているんだっけ?」というところから考えておきたいところです。
現実の課題はユーザー体験の理想を考える際のヒントや根拠にする程度で、この段階では極力ゼロベースで発想していきます。
「ネット不動産」という試みでいくと、2022年5月までに電子契約・電子交付を可能にするデジタル改革関連法案の施行があったから企画したものと思われる方も多いかもしれません。
しかし実際には、その法案の話やコロナ禍になる前から企画自体は構想を練っていました。ユーザー体験の理想を考えた結果、その構想に至っていたからです。
不動産を購入するための必要なプロセスがいつでもオンラインで確認でき、かつ画面にしたがっていけばユーザー自身で取引を進捗させていくことができる。
様々な書類への記名・押印は不要で1クリックで契約締結ができ、初めてでもアマゾンやメルカリでの購入体験のように迷わずカンタンに不動産取引を実行できる、そんな世界を理想と考えました。
2. 「そのために必要な機能」を考える
1.で描いた理想の世界を実現するためには、どんな機能が必要なのかを洗い出してみます。
ここでは、純粋に必要な機能としてリストアップしていくイメージです。
理想の顧客体験がそうであるならば、システムとしてはこういうようにしようか、と考えていきます。
ネット不動産でいくと、以下のような機能をまずはあげてみました。
会員登録・会員ページ
相談予約やその履歴の連携
提案資料・物件情報の連携
物件申込機能
契約スケジュールの連携
提出書類やタスクの確認
書類アップロード
全書類に1クリックで締結できる電子契約
融資に関する手続きの進行
などなど・・・
3. その機能があった場合の具体をイメージする
一通り機能を洗い出してみたら、ここからようやく現実に目を向けていきます。
実際に、1.や2.をユーザーや社員が体験・操作していることを想像していきます。
また実際にその実務を担っている社員やそのことに関する知見のある人物などと、会話をしてみて自分の考えや必要な機能の想定などが妥当かを図っていきます。
この時の相談相手は、実際に企画を進行しようとした際にキーマンとなりそうな人に相談しておけるのがベストです。
会話をするときに気をつけておきたいことは、得意げに企画自慢のようにならないようにすることと、相手の現状を否定しないことです。
相手の仕事や過去の体験については敬意を払い、自分では知見が不足しているので、経験豊富な〇〇さんにどうしても相談させてくださいというように、勉強させてくださいという姿勢で話を伺うことです。
新しいアイデアや変化に対して、一般的に多くの人は無意識にネガティブな反応をしてしまうらしいです。
こちらがどういう姿勢で何を求めているか分かれば相手も適切なアドバイスをしやすくなり、今後推進する際には協力者となってくれる可能性が高まります。
また、最初の相談相手を起点に、「他にも話を聞いておくといい人はいますか?」と数珠繋ぎ的に聞いていくと、大体この件に関する主要人物やその繋がりもリストアップされ、事前に話を入れておくこともでき一石三鳥くらいになります。
ネット不動産の取り組みでは、セールス、契約チーム、ファイナンス、法務、開発者と、主に5部門のキーマンに話を聞いていきました。
そして、1.で考えていた理想のユーザー体験についての解像度がみるみる上がっていきました。
4. もう一度1.や2.を考えてみる
3.で様々なアドバイスを受けて企画の解像度を上げることができた上で、再度1.や2.に戻ります。
自分の考えでは及んでいなかった点や不足している機能、物理的に不可能なことや代替案などをさらに検討し反映していきます。
ネット不動産の取り組みでは、以下のような考慮を入れ直しました。
契約日当日に必要なものや、銀行ごとに必要な提出書類がユーザーによって違うためその制御を行えるようにすること
書類提出のステータス管理を行えるようにすること
バックオフィスがタスク管理に使用する管理画面を作成すること
現在手動で行っている顧客への案内連絡を代替する機能を取り入れること
アカウントの身元・本人確認、契約当日の当人認証を取り入れること
セキュリティ視点で認証レベルの取り決めを行うこと
などなど...
3.や4.を通して、企画自体の方向性に誤りがなさそうなことがわかり、かつ一気に具体的になり、かなり企画の解像度が高まってきます。
5. ネット不動産の企画のコア
ネット不動産の取り組みにおける企画のコアは、「ユーザーが能動的にオンライン上で不動産を買える」ようにすることで問題なさそうでした。
ネット不動産という考え自体が、それほど奇抜なものではなく、誰もがそうなったらいいよねと思えるようなものということもあったと思います。
一方でそのために必要なことについては、だいぶ追加しなければならない機能や考慮のポイントがあり、その点を明確にしていくことができました。
これらの内容を企画書に落とし込んでいき、社内で実施に向けた決裁をもらいにいきます。
そもそも企画自体の成功確率をあげておく
企画実行力を上げるための5つのポイントのうち、「ポイント① 企画のコアを捉え、ぶらさない:企画の成功確率を高める」をネット不動産の取り組みを例に思い出しながら執筆してみました。
企画実行力を上げるためには、そもそも企画自体の成功確率をあげておくのが一番です。そのためには初めに企画のコアとする部分を、抽象と具体を行き来しながら明確に定めておくことが重要です。
このポイントがキーとなり、企画を進捗させていく際にはスピーディーに判断を下せる軸になっていきます。
今後も「ネット不動産」の取り組みに携わったPdMとして、 #ネット不動産の取り組みを例に考える シリーズで自戒も込めてあれこれnoteに書いていこうと思います。
最後に・・・
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