2022/8/31 ねこむらからサエさんへ 心中・恋の大和路(配信感想)
涼しくなり、日が落ちるのも早くなり、夏の終わりを実感するこの頃。日曜日に心中・恋の大和路のディレイ配信を拝見しました。
既にもう撮ってあって放映されるだけ…という安心感。あと、そら君はディレイ配信経験者ということで、本来のライブ配信が中止になってしまったときには、ディレイ配信があるはず…と願ったのが叶えられて本当に良かったです。
奇跡的に青年館ホールで観させてもらったときの感動と同じくらいに感動しましたし、本当に良いものを観たという満足感でいっぱいです。
そしてすごく面白い作品でした。今年観た中で3本の指に入りそう!!!
サエさんがおっしゃった「ストーリーに隙がないし、場面としてもダレるところが一切ない。」
って本当にそうだと思いました!
見る前は、あの有名な最後のシーンだけは見たことがあったので、和物だし心中というオチか~というように、表面的に捉えていたのもあります。
結局、最後がわからないからこそのヒヤヒヤ感もあるけれど、最後がどうなるか分かっているがゆえのやり切れなさをずっと感じながら観るのもまた心にきますね。
そら君忠兵衛と、夢白さん梅川、もうどうしようも無かったんだな…という説得力と、八右衛門の友情と、孫右衛門の愛情と、亀屋の従業員の優しさ。まあ結局、飛脚組合の宿衆さんたちが一番の被害者だから後から同情してしまいますが。ここに夢介さんがいれば、と何回思ったことでしょう。
さらに、かもん太夫と与平との対比でより忠兵衛と梅川の悲劇が浮かび上がるし、よく出来た作品だなあと昨日から反芻しています。
忠兵衛はダメ男だし…と思っていたけれど、ある意味全然ダメ男に見えなくて、あの熱い想いはそら君だから納得できることかもしれません。
許されるダメ男を演じるって難しいですよね。
あと、亀屋の皆様がみんな忠兵衛を心配して助けるのも、優しすぎる。度が過ぎている優しさ。(だからこそ最後もまた辛い)
亀屋の大奥様のカレンさんのあのリアルすぎる佇まい(あの頭と背中の角度、まじで老人)とそのコミカルな場面も、物語に引き込むのに十分なお力でした。
印象的なシーンですが、やはり一番盛り上がったのが、1幕終わりにある封切り!
封を切ったらダメというのが物語の中で散々言われていたので、
「やるなよ、やるなよ、やっぱりやっちゃったー!」という流れが盛り上がって、あああーと客席側も思っているうちに幕がおり、休憩35分。その後、2幕で槌屋の皆様全員を騙せてるのがまた怖いんですけれどね。
ロック調の曲なのが面白いし盛り上がるしで、あそこの八右衛門さんが本当に気の毒で。八右衛門さんのせいじゃないけれど、色々と悪手を打ってしまっているし。
長くなりそうですが、その他は思いついた順に記載します。
まずは印象的なお役から。この作品って、ちょっとしたお役でもとても印象に残してくれるのが良い脚本だなと思います。
亀屋の下っ端ちゃん3人。おまん&庄介&三太:
全員上手で可愛い!下手するとそこだけ浮いて軽くなりがちなところを、絶妙なバランスを保って物語の緩急をつけてくれるところが好きでした。
まあ結局、おまんと三太がくっつく少女漫画設定だろう?と思いながら、庄介さんのアイドルっぽさも分かるし、楽しい3人です。
亀屋の今後は気になるところですけれどね。みんな幸せになってね。
蜆売り:
夕餉の時間なので、もうずいぶんと暗くなり始める時刻でしょうか。番頭さんと与平さんの会話の裏で、蜆売りが蜆を売るために低いトーンで声を出している場面。
番頭さんたちの会話にあの蜆売りの声がBGMとなって、静かな舞台に広がる不安感がたまらなかったです。
あのワンシーンで強烈な印象を残してくれたのが、蜆売り役の希翠那音くんですね。
(しじみといえば夢さんですけれどね)
梅川の同僚(?というのか)千代歳:
千代歳役の愛陽みちちゃんです。夢介から注目を続けている愛陽みちちゃん、かもん太夫が最後にひと舞を踊るときの長いソロ歌唱が素敵でした。
きれいな声だしやはり上手~。2回めに聞くときはすごく短く感じたぐらいです。
っていうか今回は禿ちゃんたちもそうだけれど、はおりんのソロも、少女役の華純さんのソロも素敵で、雪娘こんなに歌うま集まっとったんかい(はおりんは知ってたけれど)…と、ある意味見直してしまう出来事でした。
飴屋(嶋屋):
我らが一禾あおくん!逃亡途中になんで突然飴売りの陽気な歌…?
え、一禾くん…だよね?と最初は戸惑ったのですが、あとで原作で宿衆のうち一人が飴屋の姿になって追いかけたってあって、それは重要ですやん、ってことで配信のときは楽しめました。
あそこは一種のショーですし、一禾くんの良さが存分に生きた場面だと思いました。
新口村のおかね:
かわいいお役が多い、琴羽りりちゃん。古道具売り?の専科の悠真倫さん相手の演技も堂々としたもので、忠兵衛に対して疑問に思わない新妻な奥さん役が本当に合ってました。
重要な場面での早口のセリフを間違えることなく、観客の視線を引き込むのは大変だろうなーと思いながら、後半でほっこりできるシーンは少なめなので、配信で観るのに楽しみにしていたシーンのひとつでした。
続いて、印象的なシーンは、
①与平が鬢水入れで髪を整えるシーン
これだけでも与平が叶わぬ恋に身を焦がしているというのがわかるし、主人の物を勝手に使うというのも妙に色っぽくて背徳的です。
その印象的なシーンの鬢水入れがその後の小判の包に似せてごまかすのにつながるわけで、脚本というか原作?上手ーーー!って思います。
②逃避行のときの籠持ちのダンスから、籠の御簾を上げると二人が婚姻の衣装(だよね?)で寄り添ってるシーン
あの二人の色気がすごくて素敵だし、一瞬でも二人が寄り添える時間が持ててよかったね、って泣いてしまいますね。
あと、二人の着物の柄が梅と川なのは配信で気づきました。
③かもん太夫が身請けされて門外に出たあと、旦那さんのところに向かう姿
門の内側では花魁歩きなのに、門を出てからは小走りになることで市井の女になったことがすぐに分かるし、すごく幸せそうに見えるし、それをそっと影から見ている梅川たちの対比も涙を誘います。
百に一つもない、ということなので、身請けされて外にでるのなんて奇跡のようなもんなんですね…。泣ける。
④新口村での孫右衛門との偶然の出会い
あのシーン、孫右衛門は全然知らない親切なお人として梅川との会話をしながら、梅川と気付き、自分の本心を聞かせるというセリフの組み立てに唸る。忠兵衛も孫右衛門と会おうとしないし、孫右衛門もそう。似たもの親子であることも実感します。
しかし、孫右衛門さん、忠兵衛から事前にお金が要入りだと相談されたとしても、たぶんお金出したりしないだろうよ…とは思った。
④最後の、雪路
八右衛門のソロー!!
ソロだから目立つようにうまく歌おうとするのではなく、気持ちを抑えながら情感を込めて歌われるカチャさんの八右衛門に拍手を。
しかし一つ疑問があって、あの雪のシーンは奈良のどの辺なんだろうか…
奈良って盆地でもあるので、寒いけれど本当に雪が積もらない土地なんですよね。
忠兵衛の実家の新口村(現在の橿原市新口町)あたりなんかも、盆地の真ん中あたりだし、最後はもしかして吉野の方まで逃れることができたなのかな?と思っておきます。
Google Mapをみながら。
また、奇跡的に1回だけ観られた花組の感想も書いておきたかったのですが、千穐楽の幕が上がるようにお祈りしつつ、次回に。
花組さんも色々と辛い出来事が長かったですが、千穐楽は開催できそうなのが救いです。
あと、複数日に渡ってこれを書いている間に、夢白さんの次期トップ娘役の発表があり、確実にキャリアを積んで待望の娘役トップになられること、とても嬉しいです!おめでとうございます。
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