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「京北の盆踊りを語り合う」~宇津の里音頭

インタビュー実施日:2020年11月14日
インタビュー会場:宇津ふれあい会館
参加者:常盤成紀、黒川修子、安井二三男、岡本満、岡本祥二、川村妙子、川村タツヤ、佐藤恵理、岡本玲女、岡本弥生(順不同、敬称略)

―自己紹介

【常盤】 地域おこし協力隊の常盤です。この企画は、京北の各地区に受け継がれてきた様々な音頭について、これまで音頭に関わってきた方々に、どのような想いを持って活動してきたのかとか、音頭ごとの特徴とか、次の世代の人たちにどんなメッセージがあるのかとかなどを地区ごとに座談会形式でお伺いしていくものです。ではまず安井元会長から、順番に自己紹介をお願いします。

【安井二三男】 平成24年の4月から平成28年の3月まで宇津地区の自治会長をしておりました安井です。当時役員だった岡本満さんから「宇津の音頭を作ったらどうやろ」という話が出て、岡本満さんの知り合いであった歌手の川村ご夫妻とのご縁で宇津の里音頭ができたという経緯になります。今日はよろしくお願いします。

【岡本満】 安井さんが会長のときに地域振興部長として彼の使い走りをやっていた岡本満です。安井さんの話を少し補足しますと、私は材木屋のオヤジをしており最初は北山杉を盛り上げるような歌があればということで、川村さんご夫婦と出会いました。当時夏まつりの活気がなくなってきていると感じていて「なにか画期的なことを」と思っていたところ、川村さんから宇津の音頭を作りたいお声がけいただいたことがきっかけでした。

【岡本祥二】 2020年の4月から、宇津の自治会長をしている岡本です。音頭が出来たときも私は自治会にいちメンバーとして関わっておりました。よろしくお願いします。

【川村妙子】 川村妙子です。岡本満社長から説明があったように、北山杉の伝統と歴史の応援歌を書いたのがきっかけでこの宇津地区と出会いました。その年から毎年夏祭りに温かくお招きいただいたため、「なんか恩返しできひんかなあ」と思っていたときに、主人が「音頭でも書いたら?」と言ったことが始まりでした。

【川村タツヤ】 川村タツヤといいます。妙子とふたりで、こちらのほうに初めて来たのが平成21年。地元の人間ではないですけれども、ここに来るといつも田舎に帰ってきた思いがします。ですので、毎年8月の夏祭りをいつも楽しみにしています。

【佐藤恵理】 当時、自治会で事務局を担当していた佐藤です。音頭を作りたいという話をいただいたときは本当に嬉しかったです。

【岡本玲女】 岡本玲女です。今日はよろしくお願いします。川村さんご夫妻がすごいいい音頭を作ってくださったことで、唄ったり踊りを覚えたりするのがとても楽しくて、今では宇津で率先して踊っています。

【岡本弥生】 岡本弥生です。ここに生まれ育ってもう長くなりますが、この宇津の里音頭は、宇津の集落それぞれの特徴を唄った歌詞で、これができて本当に良かったなと思っています。


―宇津の里音頭の誕生のきっかけ

【常盤】 音頭がつくられた当時のことを改めて聞かせてください。

【岡本満】 川村さんから「宇津の住民の皆さんにお世話になっているから音頭を作って恩返ししたい」という申し出をいただいて、まずは川村さんと半日かけて宇津中をまわったんです。私としては、「なんにもないやろ?」という感じだったのですが、川村さんが「宇津、いっぱいありますやん!」って言ってくれて。そしてあっという間に出来上がったのがこの歌詞です。

宇津の里音頭の歌詞

【常盤】 タツヤさんは当時のことをどんなふうに覚えておられますか。

【川村タツヤ】 僕が住んでいる大阪と比べて宇津は、車の音もないし、人もあんまりたくさんいない、密集してない。その「何にもない」ところが、むしろ僕らにはすごくいいなと思ったんです。あと、この自然の豊かさが本当に魅力的でした。

【岡本満】 僕らが気にもかけないお地蔵さんや川にかかっている普通の橋が、こんな素晴らしい歌詞に生まれ変わって。それこそ毎日通っていて気がつかないことが、これだけの歌詞になるというのがすごかったし、改めて宇津を見直すきっかけになりました。

【岡本弥生】 私も日々暮らす中でなんとなく当たり前だと思っていたことが、当たり前ではないっていうことに気づかされました。「見えていても見ていない宇津の魅力」に気がつかせてもらえる音頭かなって思います。


宇津の風景

―宇津の里音頭誕生時の地元の人の反応

【常盤】 完成した歌詞を見たり曲を聴いたりした時、地元の皆さんはどんな反応をされましたか。

【岡本玲女】 「めっちゃわかりやすい!」と思ったのと、皆さんがおっしゃった通り、宇津を題材にして、よくこんなに書くことがあったなと驚きました。

【岡本祥二】 宇津には8つの集落があるのですが、そのすべてを歌詞にいれていただいたのが、まずええなと思いました。あと、1番の歌詞に「今は懐かし縁日に」ってあるのですが、あそこで縁日をやっていたことなんて、住んでいる私らでも見たことがない。それをまあよう知ってはるというか、びっくりしました。

【川村妙子】 初めて宇津を案内してもらったときに岡本満さんが、「昔ここでは縁日やっててんやんかあ」って言っていたのが印象に残っていたんです。そういう地域の記憶って、すごくいいなと思いました。

【岡本玲女】 私は、歌詞の中でそれぞれの集落について言及した後、最後に「8月15日、宇津中みんなが集まるよ~!」っていうのが、すごい好きです。

【川村妙子】 8月15日っていう日付を絶対入れたくって。曜日が変わっても絶対15日にお祭りなんですよね。それがなんか、私にとっては新鮮だったんですよ。

【岡本祥二】 よそでは日曜日の方が人が集まりやすいということで、以前は必ず15日に開いていた夏祭りを日曜日に変えたという地区はありますが、宇津はずっと15日です。

【川村妙子】 年に1回来るこの日がすごく素敵な一日なので、どうにか8月15日を入れたいと思っていました。

―宇津の里音頭の継承:若者世代の参加

【安井二三男】 地域の小学生に音頭を覚えてもらおうということで、玲女さんの指導で小学生を対象とした練習会を実施しました。

【岡本祥二】 夏祭りが8月15日なもんで、その2週間前に丹波音頭と宇津の里音頭の踊りの練習会をしとるんですけれども、まあたくさんの子どもたちが来てくれるんです。小学校の低学年から高学年まで、宇津の里音頭は全部覚えていますね。

【岡本玲女】 京北地域の秋の恒例イベントである「京北ふるさと祭り」では、宇津の里音頭は子どもたちが音頭をとったりなんかもします。

【常盤】 そうなんですね。ところで、後ろの作品がずっと気になっていたんですが、これはなんでしょうか。


座談会の様子/奥の絵画は京都精華大学の学生が作成したもの

【佐藤恵理】 これは京都精華大学の学生さんが子どものために作成したものです。

【岡本満】 宇津自治会と京都精華大学は長年交流があります。これは、京都精華大学の学生さんが宇津の子どもたちを集めて、一緒に遊んで、いろいろと教えてくれる中で出来た作品です。

【安井二三男】 それも自治会が全面的に関わって、宝さがしや鮎つかみといった子ども向けのイベントを実施しました。またこれが喜んで来るんですよ、子どもたちが。

【佐藤恵理】 その学生さんたちは、宇津宝さがし会っていうサークルなんですけれど、彼らも一緒に宇津の音頭を踊ってくれはりますね。

【岡本祥二】 地域の子どもと京都精華大学の学生さんが集まって練習してくれています。

【常盤】 どの地区でもこうやってお話を聴かせていただくと、「今度はどうやって新しい人たちに踊ってもらうか」みたいな話をよく聞きます。地域の子どもたちと京都精華大の学生さんが一緒に踊っている、という話は素敵だなと感じました。

【岡本満】 学生はね、4年間手伝ってくれたあとは地元に帰る人も多いのですが、ここが第2のふるさとみたいな感じで、宇津のことをずっと覚えてくれているのはありがたいですよね。

【常盤】 今度はその学生さんが音頭を教える側にまわってもらえることがあれば、また新しいですよね。

【佐藤恵理】 少し話が変わるのですが、かつて敬老会で小学生が宇津の里音頭を唄ってくれたことがありました。そのときは学校の授業で練習したと聞いています。そういうふうに学校の取り組みとしても続いていけば嬉しいなと思いますね。

【岡本祥二】 やっぱり若い子は、なかなか盆踊りに接する機会がない。だから授業の一環で練習させてもらえたら一番嬉しいなという気はしますね。丹波音頭にはそういう機会がまだあるのですが、できれば宇津の里音頭もやってほしいな。

宇津の里音頭を踊る様子

―宇津の里音頭の継承:動画制作の構想

【岡本満】 そう言えば去年の春ぐらいから、「ちょっと頑張って動画作ろう思てんねん」って川村さんが言ってくれていましたね。

【川村妙子】 まだ構想しているところです。動画って難しいんですよね。

【常盤】 どんな動画になるイメージですか。

【川村妙子】 宇津の里音頭については、踊りの様子だけを映した動画1本だけがある状態です。それも素敵なのですが、私がつくりたい動画は、まずはじめに歌詞に合わせて明石川(あけしがわ)や弓槻小橋(ゆづきこばし)などの風景が出てきて、最後に8月15日の夏祭りの際に地域の方々かどんなに楽しげな笑顔で踊っているのかがわかるようなものです。

【常盤】 とてもいいですね。唄われている風景や踊りの様子が分かってすごく楽しい動画になりそうです。

☆補足☆
こちらで話題となっている動画は2025年1月26日に完成しました。
下記URLよりぜひご覧下さい!


―今回の座談会に対する参加者の感想

【常盤】 最後に一言ずつ、ご感想とか、何かしらメッセージなどをいただければと思います。

【安井二三男】 本日は大変みなさんお忙しい中ありがとうございました。宇津の音頭を盛り上げてもらうように今後もひとつよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

【川村妙子】 今日はお声かけありがとうございました。今日は皆さんの元気なお顔が見られてよかったです。ありがとうございました。

【川村タツヤ】 久しぶりに皆さんとお会いできて嬉しかったです。引き続き、宇津の里音頭が皆さんに愛されていければいいなと思っています。ありがとうございました。

【佐藤恵理】 今日は懐かしい皆さんにお目にかかれて大変嬉しく、そして改めてほんとにいい音頭だなということを感じました。この音頭が引き継がれていったらいいなというふうに強く思います。ありがとうございました。

【岡本玲女】 今回の開催にあたり、みなさま本当に協力的で、宇津のよさをまた改めて感じましたし、この音頭を後世につなげていきたいという気持ちを改めて強く持ちました。私たちは実際には唄ったり踊ったりしているだけですけれど、それが次の世代に引き継いでいく仕事やなっていうふうに思います。

【岡本弥生】 今日はありがとうございました。宇津で育ち当たり前みたいに思っていることにも感謝しないとなと思いました。これからも、次につなげるように努力していきたいと思います。

(了)

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