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肥満論:社会的価値観の反映としての体型

女性の体型にはバリエーションがあるのは言うまでもないが、「理念型」として、概ね次の3つに分類できるのではないだろうか。

(1)プランパー体型
(2)グラマー体型
(3)スレンダー (スリム) 体型

概して、好まれる体型は、各々の時代や社会の価値観を反映している。このことを僕は「モードとしての体型」と呼ぶ。

この「モードとしての体型」を「理念型」として時系列的に概観するならば、(1)風土的に常に飢餓状態の不安に苛まれていた‘未開’あるいは‘発展途上’の社会においては、女性の理想像は大地の豊穰を象徴するように、豊満であることが健康であり美しいと考えられていた。

因みに、「」という漢字は「肥えた羊」を意味する合意文字であり、古代中国人の価値観を反映している。

この時代・社会において、いわゆる‘原始神母’のイメージの元になっているのは妊婦であったであろう。従って乳房お尻だけでなくお腹も大きかった多産型の体型が理想とされた。(→プランパー体型)(タイトル画像・注)

それに対して、(2)‘大きいことは良(善)いことだ’という高エネルギー消費の高度経済成長の価値観に基づく‘豊かな社会’ (ガルブレイス) においては、邪魔になる程の大きな乳房やお尻を有しながら、ウエストは締まった体型が好まれた。(→グラマー体型

この嗜好・志向は、流線型のポルシェの車体にも反映している。

流線型のポルシェの車体

ただし、‘大きいことは良(善)いことだ’という経済成長社会の価値観を反映して、巨乳や巨尻が好まれたというのは理解できるが、なぜウェストが締まっていなければならないのかということに関しては、別稿で私見を述べるつもりだ。⇒社会的価値観の反映としてのウエスト

さらに、(3)大量生産・大量消費の負の結果として、資源枯渇問題や環境汚染問題を引き起こしてしまった、いわゆる‘ポスト工業社会’(ダニエル・ベル)においては、‘省エネ’や‘エコロジー’の‘スモール・イズ・ビューティフル’(シューマッハー)の発想から、運動もせず飽食をして不節制の結果、肥満してしまった人間は不健康であり自己コントロールのできない劣等な者として嫌われ、それに対して、痩身者は日常的に節制している成功者として評価され、特に女性の体型もその考えを反映して、痩せていればいる程、節制して美しいという価値観が支配的になった。(→スレンダー体型)⇒肥満論:モードとしての体型〜グラマーからウルトラスリムへ

ジェーン・フォンダのワークアウト・ビデオ

車のデザインも流線型からより直線型に向かう傾向がある。

流線型から直線型へ

(注)wiki: ヴィレンドルフのヴィーナス
『ヴィレンドルフのヴィーナス (英語:Venus of Willendorf, ドイツ語:Venus von Willendorf (ヴェーヌス・フォン・ヴィレンドルフ) ) は、先史時代の小像。「ヴィレンドルフの女」としても知られる。女性の姿をかたどった高さ 11.1cm(4-3/8インチ) の脂臀型小像で、ウィーン自然史博物館の蒐集品の一部である。』『1908年に、オーストリアのヴィレンドルフ近くの旧石器時代の遺跡で、同国出身の考古学者ヨーゼフ・ソンバティが発見した。』

『この小像は、写実的な肖像というより、むしろ理想化された女性の姿を表している。像の女陰、乳房、膨張した腹部は非常に顕著であり、多産・豊穣との密接な関係を示唆している。』

『ヴィーナスという綽名あだなは、肥満体ともいえるこの小立像を古典的な「ヴィーナス女神」のイメージと比較させずにおかないが、現代の分析では異論が生まれている。「こういう小立像を皮肉にも《ヴィーナス》と名づけるのは、未開社会についての、女性についての、あるいは美意識についての、現代におけるある種の仮定にぴったりと合うのだ」とクリストファー・ウィットコムは指摘している。同時にまた、この像を旧石器時代の古ヨーロッパ文化の地母神 (Earth Mother goddess) に同定することに対する、専門的見地からの異論もある。』

肥満論:序文

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