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ニック・ケイブのトゥペロ:雷に打たれたような衝撃

音楽人生が100倍豊かになる80年代の100曲 <その5>

Nick Cave and the Bad Seeds  "Tupelo"(1985) 

音楽の世界で神と呼べる存在がいるとしたら私にとってニック・ケイブ(Nick Cave)は間違いなくそのひとり。

バースディ・パーティ(The Birthday Party)というとっても攻撃的な音のバンドがいまして、パンクがカミソリで切りつける音だとするとバースディ・パーティはハンマーで殴りかかるみたいな感じの音で、まあそういう音が好きな人にはけっこう有名なバンドだったんですけど、そのヴォーカルがニック・ケイブ。

で、バースディ・パーティが分裂してできたグループの一つがニックが率いるニック・ケイヴ・アンド・ザ・バッド・シーズ(Nick Cave and the Bad Seeds)なんです。

一部では「暗黒大魔王」なんて呼ばれているように、曲はまったく軽くはないのですが、ブルースが根底にある揺るぎない音で、まぁ、とにかくかっこいいのです。

バラードなんか、しびれるほど美しいです。

個人的にはニックのアルバムで外れはナシ(ウォーレン・エリス(Warren Ellis)とやってるサントラは追いかけてませんけど)。どれも、おすすめ。

バッド・シーズにはノイバウンテン(Einstürzende Neubauten)のブリクサ(Blixa Bargeld)がギターだったのですが、その頃は破壊的な情熱とやさしい包容力が同居していて、無敵のグループでした。

ブリクサが抜けてからは、わりとおとなしめの曲が多くて、バラード系も好きなんですが、激し目もやってくれえると、より嬉しいんですけどね(サイドプロジェクトで激し目の音を出してたグラインダーマン(Grinderman)復活してくれないかな…)。

ロンドンはカムデンのエレクトリック・ボールルームで全盛期のギグを見たんですが、衝撃的。かっこよすぎて、シビれました。

そのとき轟音で鳴り響いたのがこの「トュピロ(Tupelo)」。この曲を聴くと、雷の音と共に、あのときの衝撃が蘇ります。

当時まだCDが世の中になくて、オックスフォード・ストリートのHMVで「トュピロ」の入ってるアルバム「ファーストボーン・イズ・デット(The Firstborn Is Dead)」をカセットで買った記憶が…。

またライブであの音を浴びたいんですが、フジロックの楽屋破壊事件というのがあって、それ以来日本に来てくれません。

いっそのことヨーロッパのツアーでも見に行こうかな…。

はじめてニックを聴く方は、カイリー・ミノーグ(Kylie Minogue)とのデュエットの「ホエア・ザ・ワイルド・ローゼズ・グロウ(Where the Wild Roses Grow)」とかハリーポターの挿入歌の「オー・チルドレン(O Children)」とか「イントゥ・マイ・アームズ(Into My Arms)」あたりが耳障りがいいのでおすすめです。

慣れてきたらぜひ「ティピロ」の雷に打たれてください。


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