スロッビング・グリッスルのホット・オン・ザ・ヒールズ・オブ・ラブ:鞭がキモチイイ
音楽人生が100倍豊かになる80年代の100曲 <その6>
Throbbing Gristle "Hot On the Heels of Love"(1979)
その昔、インダストリアル・ミュージックというジャンルが流行りまして、直訳すると工業用音楽。電子的な音響で工業化社会を批判的に表現したノイズ・ミュージックみたいな感じです。
その巨人というか始祖といわれているのが、こちらスロッビング・グリッスル(Throbbing Gristle)です。
ノイズ系なので、ふつうの人は手を出さない方がいいのですが、ノイズなのにキャッチーというか、聴いて楽しめる曲がたまに出るんです。
大量の三つ葉の中に、たまたま見つかる四つ葉みたいな存在なんですけど、これに出会うとめちゃくちゃうれしいんです。
「ホット・オン・ザ・ヒールズ・オブ・ラブ(Hot On the Heels of Love)」はまさにその四つ葉のクローバー出会えたみたいな高揚感が得られる至高の名曲。
延々と続くリズム。クールなメロディライン。そして合間に入る鞭の音。
いやぁ、かっこいい。ずっと聴いていられる。
ちなみにスロッビング・グリッスルというグループ名は「脈打つ軟骨」という意味で男性器の隠語です。
そしてこの曲が入っているアルバム「トゥエンティ・ジャズ・ファンク・グレイツ(20 Jazz Funk Greats)」のジャケット写真はイギリスの自殺の名所でのメンバーの記念撮影。
もちろんは音はジャズでもファンクでもありません。
はい、ご想像の通り悪意のカタマリみたいな人たちです。なので、悪意のカタマリみたいな音であふれてます。
そんな悪意の音に紛れて、ちょっとしたポップセンスが滲み出ている「ホット・オン・ザ・ヒールズ・オブ・ラブ」は貴重なんですよね。
スロッビング・グリッスルは解散して、サイキックTV(Psychic TV)とコイル(Coil)とクリス&コージー(Chris & Cosey)に分裂しました。ヴォーカルのジェネシス・P・オリッジ(Genesis P-Orridge)率いるサイキックTVが本筋みたいな感じですが、ピーター・クリストファーソン(Peter Christopherson)のコイルの音の方が好きでしたけど。
そいえば再結成した際にグリスリズム(GRISTLEISM)という謎の再生装置(四角い箱形のスピーカーで、曲を延々とループ再生する)なんてものを出してましたね。「なんじゃ、こりゃ?」と思いながらも購入してしまいましたけど。